第5-14話 ピーク後のはずなのに

 時計は13時前を指している。お腹もそろそろ満たしたい。ということで建物の隣にある店に来た。

「ここは俺も興味あったんだよ」

「そうなんですか? 男性とかはこういったお店は苦手なんだと」

「そんなことないぞ。俺の周りのやつも行ったことあるて聞いていたぐらいだ」

 ここはパンケーキが有名な店。ふんわりとした食感が売りだとのこと。よく情報番組で取り上げられていた。今日のプランディングにあたって、参考にした雑誌やネットにも注目スポットとして取り上げられていた。そうなると、どんなお店か気になるってもんだ。

「にしても時間ずらしたつもりだったんだけど結構並んでるな」

「仕方ないですよ。有名店なんですから」

 休日の昼ともなれば飲食店はまさに書き入れ時だ。事前に並ぶ可能性は考えていたが一番のピーク時はずらしたんだから大丈夫だろうと高を括っていた。まさかまだ並んでいるとは。

「別の店にします?」

「櫻尾の提案は一理あるな。けど、このお店以外に行く気が起きない。完全に口がパンケーキを食べる口になっているからさ」

「わかりますわかります。もう甘いものを食べたくなってるんですよね」

「他のモノはもう受け付けない」

「いくら並ぼうとも」

「待ってやるさ」

 いえーいとハイタッチ。

 周りのカップルがこっちをチラ見してきたが知ったとじゃない。パンケーキの誘惑の前にテンションのおかしくなった俺たちにはリア充のそんな視線など全く気にならない。

「にしても意外だったな。俺はてっきり櫻尾はこういう店に来たことあるもんだと思ってた」

「私だって行ったことないお店ぐらいありますよ。なんというかその、申し訳なくて」

「なんでさ。友達と行ったりすることがか」

「一緒に行くことは特に問題なかったんです。ただ、食べる前に写真いっぱい撮ってSNSにアップするじゃないですか。そういうものに慣れなかったというか、周りが撮っている中で撮らないもの悪いかなって。だからなかなか足が向かなかったんです。だから今日は楽しみにしてたんです。お店に入って味とか雰囲気を実感で来るのが」

「櫻尾は本当に小説のために生活してるんだな」

「そんなつもりはないんですけどね」

「でもそれならネタのためだと思って写真撮るだけとっておけばよかったじゃないか」

「撮った写真はSNSに上げるんですよ。友達にSNSに上がってない写真の話を振られたら嫌じゃないですか」

「そういうもんかね」

 有名なSNSなんてラインぐらいしかやっていないもんだからよくわかんない。ああいう写真をいっぱい上げるモノは気を使うところが多くて大変なんだな。

「なら今日は気にせず写真とっておけばいいさ。櫻尾が小説のためにここまでするんだってことは知ってるんだ。気兼ねなくするといいよ」

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