第5-13話 第一段階終了
「本当にそれでよかったのか。もっといいのもあっただろうに」
「これがいいんですよ。それじゃ次に行きましょう」
「なら俺の番か。いろいろ考えたんだが」
「違いますよ。まだ私のターンです」
なら次ってなんだ。
「辰巳さんの服も選びに行くんですよ」
「それはいいって。わざわざ選んでもらわなくても」
「それじゃ私ばっかりになっちゃうじゃないですか。だから交代なんです」
櫻尾に手を引かれてやってきたのは上の階にあるメンズショップ。一応来たことはある。本当に一応。
「ここならそんなにお値段しませんから気軽に買えますよ」
ここには一万円以下のものばかり。というかシャツに関して言えば三千円ほどで買える。なるほど、ここなら気兼ねしないでいい。
「けどどうしても1シーズンモノになっちゃうんですよね」
「わんしーずん?」
「来年は着れないってことです。布が薄かったり、縫合が甘かったりで数回着ただけで敗れちゃったり襟元が伸びちゃうんですよね。部屋着とかならいいんですけど、外に来ていくのは躊躇っちゃいますね」
ボロボロになりやすいのは勿論、流行り廃りがあるのはあるのは知っている。けどこういうのはすぐに着なくなるもんなんだ。普通に来ていた。だって気にしないし。
「お値段抑えるとどうしてもこういう服になるんですよね。どうします? 別のお店にしましょうか」
男だけならまだしも彼女と一緒にいるという体裁を保たなければいけない。多少背伸びしても大丈夫なように財布にお金は入れてきてある。
「別の店にしよう。数回だけなんてもったいないぜ」
「そうです? ならこっちはどうです」
来たのは隣の店。
店内に入って服を物色っしていく。
「こっちのほうがいいな。ここで選ぶか」
「ここまで来てなんですけど、辰巳さんは好きなブランドとかないんですか」
「ないなぁ。極論、布着ていればいいと思っている」
「それはひどすぎませんか」
「だから極論だって。まぁ興味がないのは事実だな」
「それなら私の試着とか退屈じゃなかったですか」
「そんなことはないぞ。自分の知らないことがいっぱいあって驚いたし、それに何より見てて面白かった」
楽しそうにしている櫻尾を見ているだけで、とは言えない。
いろいろ回っているとある商品が目に付いた。
「これとかどうです」
見つけたのはネックレス。今まで興味はあったんだがなかなか付ける機会と買う機会がなかった。だから身につけてこなかったんだがこれはいいな。
ガラスケースの中に何種類も並べられている。ギラギラに光っているものや、カップルのプレゼント用のハート型をしたもの。なんならそのハートは二つで1つの形になる。その中でも俺は1つに目を奪われた。
「これにします?」
櫻尾も俺が見ているのもに目線を向けた。落ち着いたカラーリングで装飾も凝っていないシンプルなリングネックレス。
「これにする。これ買いたい」
思ったよりも良い買い物ができた。これを気に服装に気をつけていこうかな。
「これで私のデートプラン1つ目が終わりました。次は辰巳さんの版ですよ」
「いいだろう。だがその前に飯にしよう。腹減った」
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