第5-8話 まずはWindowから
服屋と言ってもbarcoは総合ショッピングモールだ。ファッション系以外にも、お菓子も売っていたり、レストランもテナントとして入っている。けれど、やっぱり圧倒的にファッションブランドが大半を占めている。
地下鉄に乗っている最中、櫻尾に心配をかけてしまった。別に初めて行くというわけではない。ケイをを含めて友達と何度か来たことはある。俺が心配していることとしては、
「服を選ぶセンスがないんだよなぁ」
この服だって前にケイに選んでもらった服だ。デートの時用に一張羅なんて持ってなかったが、無理矢理に買わされたのだ。まさかあの時のことが役に立つとは。もっと漫画が買えたのにと恨んでいた自分に説教せねば。もし、あの時、この服を押し付けられなかったら適当に買ってきた服で出かけていた。服なんて所詮、着られる布なんだ。一着千円で十分だった。
「別に買わなくてもいいですよ。私に付き合ってもらえれば」
「それだけならなんとかなるかなぁ」
「それじゃ行きましょう」
エスカレーターに乗り、目的のフロアまで行く……ことはなかった。
「あれ、この階じゃないだろ。3階じゃないっけ?」
「そうですね。3階です」
そもそも櫻尾はエスカレーターに載っていない。どころか、見向きもしてない。入ってすぐの店に入店していった。
「電車の中で言ってた欲しい服ってここにもあるのか」
「ありませんよ。あの服はブランドオリジナルの服なんですから。ここは系統も全く違う店です」
「だよなぁ」
「折角なんですから見ていきましょうよ。他の店には行ったことありますけど、ここのお店は初めてなんですから」
やっぱ女の子なんだなぁ。小説にしか目がないと思ってた。こういうところにも興味はあったんだ。
「見てくださいよこれ。可愛くないですか」
そうって自分の体に合わせるようにして、商品を合わせて俺に見せてくれる。裾とか袖にフリルが刺繍してあってまさに女の子向けの服だ。
「確かに可愛いな。それ買うのか」
「まさか。見てみただけですよ。そんなに簡単に買ってたらお財布が持ちません」
値札を見てびっくり。0がひとつ多くないか。これだけあればもっと違う服買えるだろうよ。
周りのポップを見てみれば、他の服の値段もこの服と大きく変わらない。というか服ってこんなに高いものなのか。俺が前買わされた服も高いと思っていたが、もしかしてお手頃価格なのか。
「にしても可愛い服多いですね。こういう服もいいなぁ」
「着ればいいじゃんか。試着もできるんだしさ」
「うーん。やめておきます。ここは見て楽しみます」
「いいって。時間なんかまだたくさんあるんだ。ちょっとくらい試着してん文句なんかないさ」
「ありがとうございます。けど、本当にいいんです」
「どうして」
「時間とかよりも、私に似合わないかなぁと」
んなことはない、似合うと思うぜ。と言えたらかっこいいんだろうがさっきのこともあり、恥ずかしくて簡単に褒められない。
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