第4-7話 掃除と漫画はセット

 いつの間にか掃除が終わっていた。掃除機の音が止めば終わった時だとわかるんだが、漫画を読むことに集中してたから、周りの変化に全く気がつかなかった。

 机の上どころか俺の周り以外はこの部屋はもう入った時のような乱雑さは無くなって、生活するに不便はなさそう。机の上も何もないしな。

「レンジも使えますよ。お湯も沸かしてありますから使ってください」

「助かる。掃除するとは思ってなくて弁当にしちゃったからな。櫻尾みたいにカップ麺にするべきだったかも」

「伝えなくてすみません。そうすればご飯も冷めなかったのに」

「いいよいいよ。コンビニ弁当なんだもん。レンチンするのが前提だろ。それに掃除を手伝うって言ったのは俺の方なんだ。気にすることはないさ」

 各々の夕食の準備を進める。さっきから思っていたが、この部屋について櫻尾は暮らしていたかのようにどこに何がるのは把握していた。けれど、俺としては住むにはちょっと遠慮したい惨状だ。この部屋はなんなのだろう。

「なぁ……」

「にしても辰巳さん。全く気にしてなかったですね」

「へっ」

 むしろ気になることばかりだと思うんだが。

「だって掃除機の音なんて全く気にしてなかったじゃないですか。それに声をかけてもすぐに返事しなかったんですよ」

「そんなにだったけ」

「そんなにです。その証拠にほら」

 櫻尾が指さしたのは俺が読んでいた漫画だ。もう5冊分積み上がっていた。

「近くに置いてあったとはいえ、あれだけ読んだんですもん」

 そう、続きが気になると思って早い段階から続刊を探しておいた。手に届く場所に置いておけば、掃除にならないだろうと思って。

「やっぱり、名作と言われるだけあって今でも面白いな」

「不朽の名作て言葉もありますからね。面白いものはいつの時代にも通用していくんでしょう。いろんなものを置き去りにしながら」

「置き去り? 変わった言い方だな」

「そうですかね。でも、事実だと思いますよ。みんなに知られているような作品。それこそ辰巳さんが読んでいた漫画雑誌なんかそうじゃないですか。不人気作を置いてきぼりにしながら常に連載順位上位にいる。下位作品は連載を続けられるかどうかの瀬戸際。それに新連載を狙っている作家にも狙われる」

 それはしょうがないことなんじゃないか。面白い作品を載せ続けるために、競い合わせる。そうして残ったものが読者に届く。最後に読者によって順位付けされる。そうして人気作というものは出来上がるんじゃないか。

「作品にこだわり、自分の健康についても考えなくなる。そうして家族も残される。映画や小説にも言えることです」

 もしかして、

「この部屋って」

「昔は私のお母さんの仕事部屋でした」

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