第4-5話 雑誌、本、新聞、埃
とりあえず散らばっている雑誌を捨てていこう。
「にしても色々あるなぁ」
「雑誌は全部捨てていですよ。紐でまとめるので一箇所にまとめてください」
「はいよ」
無料の配布雑誌から始まって旅行雑誌やファッション雑誌、果ては神社仏閣なんてものもある。それが床一面に広がっている。こんなに方向性が分からないものもそうそうないぞ。
「うわ。すごい古いものもあるな」
見れば今から十年以上前の日付のものもある。こんなに古いと情報として使えないんじゃないか。
「昔に整理したはずなんですけどね。見落としてたか、また掘り返したのか。それもそれも捨てちゃいましょう」
「逆にレアじゃない。残しておこうぜ」
「綺麗に保管してあればそうかもしれませんけど、そんなにボロボロじゃ価値なんかないですよ。そこに置いておいてください」
そういえば鑑定番組でもいい値が付くのは未開封ものばかりだったな。ネットに出回っているのも似たような状態のばかり。つまりこいつは正真正銘ゴミなんだ。
「となるとここにあるもののほとんどは、ゴミになっちゃうのか」
色々目移りしている俺とは対照的にテキパキと雑誌を絡げていく櫻尾。
「ここの部屋の持ち主は綺麗に保とうなんて全く思っていませんでしたしね。本当に情報収集の手段としか思ってなかったですよ」
「この部屋の人と知り合い……だよな。仲いいのか」
先ほどまでの櫻尾の話を聞いているとただの知り合いではないだろう。そんな人には鍵を渡さないだろうし。それに片付けをしている櫻尾の顔を覗き見ると、なんだか懐かしそうにしていた。
「知り合いというか、母親の部屋でしたよ」
まさか身内とは。
「本当に片付けが下手くそで、いっつも私が掃除をしていたんです。だから逆に安心して散らかしっぱなしにしていましたよ。私がするのを知ってたから」
「仲いいんだな」
「尊敬してますからね」
自分の母親へのストレートな気持ちを口にした。良い親子関係だな。
「けど、この量は流石にきついぞ。ひとりでやるつもりだったのか」
「はい。けど、何日かに分けるつもりですよ。だから今日もキリの付くところでやめましょう。頑張っても今日中に終わらないですよ」
「この量をみたら、今日で終わるなんて思えないわい」
結構片付けたはずなのに、まだ床は散らかっている。一応足の置き場は確保出来たし、机の上も掃除はしておいた。
「一旦、掃除機かけましょう。埃が多いところでご飯を食べたくないですし」
「そうだな。掃除機はどこにある」
「いいですよ。私がやりますから。辰巳さんは座っていてください」
と言われても、椅子の上も物が置いてあって座れる状態じゃない。なら、まとめた雑誌の上にでも座ってるか。
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