第4-4話 汚い部屋
残された二人で帰路に着く。
「あれ。櫻尾の家こっち?」
「いえ違いますよ」
じゃあ何で付いてくるんだ?
「こっちにはよって行きたい場所があるんです」
時間を見れば7時を超えていた。こんな時間からどこに寄っていくんだろう。少し気になる。
「もしよかったらついて行ってもいいか」
「いいですよ。むしろありがたいです。辰巳さんにも関係があることなんです」
はて、なんだろう。そう思いつくことはないが。
「とりあえず付いてきてくださいね」
着いた場所はマンションだった。おもったよりも俺の家の近くだ。
「ここに用事?」
「はい。ここの一部屋お借りしているんです。といっても契約しているのは親なんですけどね」
「家……じゃないんだよな」
「こことは別の場所ですよ」
もしかしなくても櫻尾は金持ちなのか。ここの一部屋と言っても、マンスリーマンションみたいな最低限度守られた部屋というわけではなさそう。普通に家族で住んでいてもおかしくないぐらいに立派な部屋だ。
「鍵を出したいのでもってもらっていいですか」
櫻尾が持っていたビニール袋を預かる。さっき、コンビニで夕食を買っておいた。もちろん俺の分は自分で持ってる。
ポケットから出した鍵にはお守りがついていた。出会ってそんなに経っていないが、どうも彼女の趣味のように思えなかった。誰か別の人が使っているものを借りたのだろう。
「部屋は4回なのでエレベーターに乗りましょう」
櫻尾について部屋の前に来た。表式はなく、どんな目的で使っているのか分からない。ただ、郵便受けにはたくさんの雑誌が挟まっていて、長いこと使っていなかったことが伺えた。
「どうぞ、狭いですが」
「お邪魔します」
足元には郵便物や勧誘が散らばっていた。これはこの一ヶ月程度のスパンじゃないな。
「あ~やっぱり」
櫻尾は中の状態に検討が付いていたみたいだ。となると、
「もともとこの街に住んでたのか」
「住んでないですよ、ここから電車で三駅くらいの場所に昔は住んでましたけど。その時にここを使っていた人がいたんですよ」
「その人って
「あ~これはまず掃除しないと……」
部屋の中はもっと凄い。いや、この場合凄いは褒め言葉じゃない。もう足の置き場が全くない。本は本棚に入りきらないのか床に直置きになっているし、その隙間を埋めるようにしわくちゃの紙が散らばっている。さらに埃もあってこんな場所では生活できたものじゃない。
「なら手伝うぞ。買った飯を食おうにもどうにもならないから」
「ありがとうございます。それじゃお願いしますね」
にしてもどこから手をつけていいのやら。
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