第4-3話 本人の噂は伝わらないもの
「思ったよりも収穫がありますね。私も目からウロコでした」
「俺は疲れるからもうやだ」
「そう言うなって。お前もケーキ食ってただろ。俺で英気を養えてるもんだ」
「他人の金で食えればいいもんだろうが、その分を出した人からすれば養われたりしない」
「ソータから誘ったんだろう」
そうなんだけど。まさかこんなに出費することになるとは思わなかったんだ。いつも使うときは喋りながら飯を食うぐらいにしか使わないから、スイーツがこうもするとは思はなかった。もっとメニューはしっかり見ることにしよう。
「やっぱり私も出しましょうか。辰巳さんが誘ったとは言えど、私も話を聞いた立場なんですし」
「いいよ。心配しなくて。払えない金額じゃないし」
寄り道の回数を減らせばどうということはない。それより、実は払えないんだなんて言ったらみっともないじゃないか。いくらなんでも恥ずかしい。
「そうそう。こういうのは任せちゃおう」
もっと悪びれてくれないかなこいつは。
「にしても意外だったな。櫻尾さんがこんな話を聞いてくるだなんて。こういうことは聞くまでもないと思っていた」
「高嶺の花だったんだろ」
彼女は違うと言うだろうが、実際のところ、櫻尾に告白しようと思っても実際にはできないだろう。こんな子ならもうすでに彼氏がいると思い込んでしまう。学校にそういう人がいなくても、校外の人と付き合っているかもしれないと言われれば信じてしまう。俺ならそう思うもんだ。実際に話してみると本当に恋愛に大してウェイトを置いてないだけなのは分かるのだが、それは彼女の活動を知っているからだ。
「お前はなんで付き合えたの?」
「はぁ?」
「えっ?」
俺と櫻尾、二人して素っ頓狂な声を上げてしまった。
「俺達付き合ってなんかないぞ?」
「嘘つけぇ。じゃあなんで櫻尾さんとこうも一緒にいるんだ。ただの友達じゃあこうもならんだろう。学校じゃ、もうソータ付き合ったんだって噂だぞ?」
「んな根も葉もない噂に誰が惑わされるんだか」
「あるだろうよ。この状況をみて付き合ってないなんて誰も思わない。俺ももちろん思わない」
「私がお願いしたんです。転校してきてまだ日が浅いから色々教えて欲しいって」
ケイが訝しそうな目で俺を見てくる。事実なんだから頷くしかない。
「だってお前だぞ。面倒事は首を突っ込むことなんてしないし、いつもだるそうにしてるお前が、転校生と一緒にいるんだ。今までのお前なら仲良くなることなんてなかったと思うぞ」
よくこいつは人のこと見ているな。あの日、櫻尾と出会わなかったら、ただのクラスメイトという関係しか築かなかった。まして、学校で話題になるような人だ。避けていてもおかしくない。けど、
「まぁ、なんとなくだよ。なんとなく」
「そうかい。そうしとくよ。それじゃ、俺はこっちだから」
そう言ってケイは帰っていく。
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