第4-1話 マスターKの話
「それで、俺に用って」
「俺たちに力を貸して欲しいんだ」
パンケーキを代償にして恋愛マスターであらせられるケイの召喚に成功した俺たち。最初は部活があると渋っていたが、櫻尾が同席すると分かるやいなや、良い返事をくれた。改めてコイツがモテるなんて思いたくない。もっとスマートに生きているやつがモテる奴だろうに。
「そんなことは分ってるんだよ。もっと具体的に教えてもらいたい」
「辰巳さんから聞きました。田原さんてモテるんだそうですね。そのことについて聞きたいんです」
「そりゃ、人並みには恋愛の惚れた腫れたはしてきたよ。けど他人が改めて聞いて何かなるようなことは特にないよ。ちなみに今は彼女いません」
そんなことは知ってる。こいつの周りにいると彼女がいるのかいないのかぐらいなら、なんとなく分かる。コイツが独り身のときは女子たちが俺にケイの暇そうな時間を聞いてくるのだ。お互いに情報共有すればいいのにしたがらない。告白やデートのチャンスを独り占めでもしたいのだろう。恋愛戦争とはかくも水面下で動かなければならないのか。
「お前を狙っている子は何人かいるだろう。その子達の誰かと付き合う気ないのか」
「ん~今はいいかな。お腹がいっぱいでさ」
恋愛とは満腹になるのか。勉強になる……わけない。この場にいる三人で俺だけ作らないではなく出来ないなのがちょっと悲しい。
「また誰かと付き合って見たくなったらその時さ」
「好きじゃない子と付き合いたいのか?」
その言葉にケイが驚いた顔をした。おかしなことをいったか?
「ロマンチックな考え方だね。まさかソータからそんなセリフを聞くだなんて。いや、ソータはそうだと本気で思ってるんだろうな。だからポロっと出たのか」
「だからなんだよ」
「好きだから付き合い始めたんじゃないよ。告白時点で両思いだなんて現実じゃ思ったほどなんじゃないかな。けど、付き合ってみて一緒の時間が増えていく。すると、どんどんその人のことを考えていく時間が増えていく。知らなかったことが知っていることに変わっていく。好きになっていきたくて付き合うんだと俺は思うよ」
好きになりたくてなんて考えたことなかった。ケイにはオブラートに包まれて言われたが、結構、心に来た。画面越しにしか恋愛というものを見てこなかったせいだ。
「まぁソータのいうような恋は実際にあるよ。俺の周りにもそういうのはいたしね。実際にそういうことがあるから、憧れるんだよ。なかったら知ることすらできないからね」
「本当に恋愛経験豊富なんですね。その経験を活かして私たちを助けてください。お願いします!!」
「いいよいい! なんでも聞いて」
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