第3-9話 重要参考人K

「そういうもんかねぇ」

「いつかはしたいと思う日がくるかもしれません。けど、今じゃないんです。今じゃ」

 あまりに興味がなさすぎる。俺だって少しは惚れた腫れたというものをしてみたいと思う。ケイがいるからか、テレビをでやっているような綺麗事ばかりじゃない、等身大の面倒くささや、厄介事があるには知っている。けど、彼女のノロケ話をしている奴は面白そうに話すのだ。そりゃやってみたくもある。けど、話を聞いていてやはり敬遠する部分もある。単純に自分の時間を割くのは嫌だ。それが櫻尾もそうなのだろう。

「未経験二人がプラン建てしたところで本物らしい話がかけるのか?」

「それは確かにそうなんです。前にも似たようなところで止まっちゃってて」

「なら、なにか参考になるものを探そう。例えば雑誌とか」

 クラスの女子がよくファッション雑誌を読みあっていたはずだ。ああいうモノにはデートのイロハが載っているんじゃないか。その辺りなら簡単に手に入れられるし、なにより、読者層が俺たちに近いんだ。学生にもってこいなプランが乗っているかも。

「あー、ええっとですね。それはあんまり必要じゃないかも」

「どうして? 少なくとも何も無いよりマシだろうに」

「それならネットで探したほうが楽なんですよ」

 今のネット社会は便利すぎるのでは?その一員である俺も出版業界の未来に一抹の不安を感じる。

「それよりもっと生の声を聞いたほうがいいんじゃないですか。友達とかに詳しいのがいるんじゃないです?」

「適任はあいつだな。明日にでも聞いてみるか」

「私にはまだこの学校でそこまでの付き合いがある人はいないのでお任せします」

「任せとけ、て言いたいが俺もケイぐらいしか知らない」

 手抜きな学校生活を送っていたことがここに来てアダとなるとは。もっと重要というか、人生における選択で後悔するものだとばかり。

「まずはケイに話を聞いてから自分たちなりどうすればいいか落とし込んでいこう」

「どうしてなんです。言われたことをそのまま実践したほうがいいじゃないですか。なんせ経験豊富なんでしょう?」

「だからだよ。俺があいつみたいに上手く物事をこなせるとは思えん」

「卑屈に考えすぎですよ。もっと楽に考えましょう。この同好会も趣味みたいなものなんです。失敗してもいいじゃないですか」

「とは言ってもなぁ」

「楽にしてください。失敗しても、それもネタにしますから」

 それはそれで嫌だ。

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