第3-8話 モテる?モテない?

 櫻尾にはなにか考えがあるのだろうか。

「今度遊びに行きましょう」

「はぁ?」

 素っ頓狂な声を上げてしまった。許して欲しい。この場には二人しかいないから誰にも迷惑をかけていない。聞いているのは声を荒げる原因となった彼女しかいない。

 にしてもどうしてこんな提案をしてくるのだろうか。

「私と出会ったときのことを覚えています?」

「あの公園のこと?」

「そうです。ちょうど夕日が差していいシチュエーションになると思ったんです。あの場所を使うんだったらこの町ももっと使って物語の舞台に組み込むんです。そして最後に抜群のロケーションで告白すればきっといい話になるんじゃないかと。そしてあの日出会ったのは辰巳さんです。だから辰巳さんと一緒にこの街を舞台に話を作っていくんです」

「つまり俺と一緒に遊んでネタを集めようと」

「まさしくその通り」

 今のセリフで聞き逃せないワードが出てきてた。まずは確認せねば。

「告白って言ったよな。書く内容は恋愛ものでいい……のか?」

 頷いてくれる。が、まず問題が発生。

「俺、別に恋愛について詳しくないぞ。自分で言ってて悲しいが、お付き合いなんてしたことがない」

「私もですよ」

 モテるだろうに。正直、俺といるのが不釣り合いなぐらいだ。2週間も経てば学校での騒ぎは落ち着くと思っていた。我々、高校生の一日というモノは密度が濃い一日を過ごしているという。さらに様々な出来事が起きる新学期なのだ。非日常は淘汰され、日常に埋もれていく。なにに、沈下する様子を見せない。未だ、クラスに見に来るものは後はいる。さらに、学年を超えて見物人が現れるようになった。うちのクラスの奴らも呆れを越して、何も思わなくなってきた。

「またまた冗談を」

「冗談なんかじゃないいですよ。本当にいないんです。お付き合いなんてなんにもわからないまま今日を迎えました」

ここまで否定しているならそうなんだろう。日本人の美徳にしてもくどい。

「この学校に来て色々ともてはやされてますけで一時だけですよ。すぐに落ち着きます」

一時の期間はもう過ぎているんだがな。

「それに面白半分で見ている人が大半でしょう。告白してきた人もいますけど、なんにも分からない人との付き合いなんて嫌ですしね。ブランドと思われてるだけですよ」

「弄れた考え方してるなぁ。もっと気楽にすればいいんじゃない?」

「それになにより今はこれですから」

ノートを叩く櫻尾。

「こっちと向き合ってたほうが楽しいんです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る