第3-4話 ふたり、はじめ
放課後となり、ぞろぞろと部活や、帰宅、友達たちと寄り道をいてく生徒が教室から出て行く。用済みとなった教室に今はふたり。俺と、櫻尾。
隣同士の机を向かい合わせにしてミーティングを初めていく。
「まずは辰巳さんのネタ出しですね。とは言っても私はあんまり協力できないかもしれません」
「なんで? 何もかも素人の俺じゃやることわかんないぞ」
「始まってから方向性を話し合ったり、話の善し悪しはアドバイスできますよ。けど初めからどういう話にするかは辰巳さんが決めるべきだと思います。私は趣味で小説を書いていますが、結局のところ、素人みたいなものです。プロの作家さんや編集者さんじゃありませんから」
とは言えど。櫻尾の方が知っていることは多い。先人の知恵を借りようではないか。
「なら櫻尾はどういう時にネタが降ってくるんだ」
「私の場合は……そうですね。なにも考えていないときですかね」
「どういうこと?」
考えてない時に考えているってこと。哲学か何かか?
「えっとですね。説明してもわかってもらえないかもしれないんですが、こう考え事をしている時って、頭の中の歯車ががちっと噛み合っているんですね」
「ふむふむ」
たくさんの歯車で出来た機械仕掛けの……何にしよう。歯車だけあってもよくわかんないし、なんの目的で動いているんだ。そうだ時計にしよう。理由なんかない。この間見た映画が時計塔の中で戦っていたからだ。
「けど、ふっと思い浮かぶときはこの歯車が噛み合っていないんですよ。隙間が空いちゃってて上手く働いていない。その時にずれた隙間からスっと抜けてくるものがあって、それが話のネタというかスタートになることが多いです」
「なるほど。よくわからん」
「ですよね。私の中の勝手なイメージですらか」
いや完全に俺のイメージの仕方が悪かった。歯車に挟まらないように戦ったり、逆に利用したりしている二人の男が完全に頭の中を占拠してしまった。歯車にものを挟んで壊したら時計塔まで壊れてしまった。アイデアは瓦礫の下に埋もれただろう。
「他には実際にあったことから連想ゲームみたいに膨らませていく感じですかね。学校といえば生徒で、生徒といえば勉強、みたいに」
「まだそっちの方がアイデア出せそうだな。とりあえず、そっち方向で考えてみるか」
「まずはとにかく出すことが必要ですよ。今使えなかったとしても後々でもしかしたら使えるかもしれません。ネタは断捨離しないことです」
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