第3-3話 机には教科書とノートと筆記用具と

「たまたまですよ。いい天気だなぁと思ってただけです」

「思うのはいいが授業に集中しろ。ここからだと誰が何やっているか分かるぞ」

 その言葉を聞いてゴソゴソ机の中にものをしまう数人がいた。小説を読んでいる奴や、スマホをいじっている奴らだ。確かに、話の続きが気になって、ついついみちゃうよな。だけどスマホはだめだろうよ。

「先生も授業中にいまのお前達みたいにほかごとを良くしたもんだ。けど、いざ先生になると、あの時やめておけば良かったと後悔することになるぞ」

「なんで? 梅ちゃんはちゃんと勉強して夢を叶えたから先生になったんじゃん。それとも当時出来てなかったから注意しずらいとか」

 ケイの言葉には梅ちゃんは頷かない。俺もそんな感じだと思った。

「そういう気持ちはあるにはあるけどな。それよりも、あの時勉強しておけばよかったとか、もっと集中していればもっといい未来があったんじゃないかと思う事があるんだよ。結果として先生にはなれたが、苦労したんだ。その苦労が軽減されるとしれば、反省も多くあるもんだ。まぁ当時の私に行っても聞いてくれないかもしれんがな」

「反省ねぇ」

 さっきまでの自分に刺さる言葉だ。梅ちゃんの言うことは最も。目先だけでなく将来も考えて動けってこと。

「なかなか難しいですよね」

 真面目に授業を行けている櫻尾から話しかけられた。

「先生の言葉はわかるんです。けど、もっと私は違うことに時間を割きたいと言うか、なんというか」

 櫻尾の机の上には現国の一式が広がっていた。だがそれ以外にも見覚えのあるものが一冊。

「ついつい考えちゃって。浮かんだネタをメモ程度に書いておこうと」

 俺の視線に気づいて教えてくれた。バレいないうちにそっと机の中にしまう。それぐらいならいいだろうに。

「教師という立場から言わせてもらえばしっかり授業を聞いていい成績をとっておけ。そのほうが自分の選択肢は広がるぞ」

「なら教師じゃない立場なら?」

「その質問にはプライベートの時に教えよう。辰巳、続きからもう一回読め」

完全に奴のばっちりだ。

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