第3-1話 活動実績は大切
さて、ミーティングと称したダベリ会から、はや二週間立っていた。その間に取り立ててなにかしたということはなく、今まで通りの生活を送っていた。授業は怒られないよう程度に聞き流しながら睡魔と戦い、休み時間はスマートフォンをいじったり、ケイや櫻尾との雑談。特筆することは全くない。櫻尾からミーティングの催促もないので、家に帰ってはのんびりと時間を過ごしていた。
それも昨日までだった。
「今日の放課後いいですか?」
櫻尾からの呼びだし。と、なれば十中八九、執筆部のことだ。この二週間なにもしなかったがついに動き出すのか。
「今日はここでやろうと思います。毎回喫茶店に行っていたらお財布が軽くなっちゃいますからね」
「コーヒーだけじゃすまないもんな」
「スウィーツを毎回頼んでるのは厳しいです……」
「エビカツもいい値段だ……」
うちの学校ではアルバイトが禁止されているので、毎月の小遣いから遊ぶ金を捻出していく。そうも豪華に使えない。それは櫻尾も同じようだ。
「そこで使われてない教室ならばいいんじゃないかと思いまして今日まで待っていたんです。どうも私たちの教室はどの部活も使っていないようですし、それなら私たちが有効活用してあげようじゃないかと」
「普通は申請するみたいだぞ?」
「なんと! 同好会なんで申請はいらないんです! 梅木先生に確認してもらいますた」
そりゃ楽だな。
「けど同好会でも活動する以上、何かしらの結果を残すようにも言われました。同好会なのに」
そりゃ面倒だ。
「ということでいきなりではありますが今日から小説の構想を練っていこうと思っています」
「ふーん。ネタは十分に出来たんだ」
「いいえ。まだです。それも含めて考えていこうと」
つまり見切り発車なんじゃないかそれは。
「大変だねぇ」
「なにを他人事のように言っているんですか。辰巳さん。あなたも書くんですよ」
「ふぇ?」
思わず変な声を出してしまった。寝耳に水を実感する日が来るとは。
「なんで? 会員にはなったが小説を書くなんて一言も言ってないぞ」
「会員になったから書いてもらうんじゃないですか」
櫻尾の言うことは最もだ。反論の余地なきシンプルな一言。
「先生が言うにはどこかに持ち込みをしろとか賞レースに出ろとかではなく、小説を書いてることを証明できればいいみたいですよ。ノートに書いていくでもいいんだとか」
「そんなゆるゆるでいいもんなのか。それならなんとか」
「私も小説は絶対、原稿用紙にとかパソコンで書かなければならないなんて思ってません。思いついたことを書きたいモノに書いていけばいいんですよ。ちょっと前は携帯小説なんてものもありました。執筆なんて物々しく言ってますが、軽く考えればいいんですよ」
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