第2-6話 栄養なんか知らない
思ったよりも店にいたみたいだ。いつもなら晩飯を食べながら見ているクイズ番組がもう終わっていた。別に毎回、見逃さずにいた訳ではないからいいんだけれども。夕飯はいつもより少なめ。カップ麺一つで済ませる。昨日もカップ麺だったけれど、今回はもうおなかの中にサンドイッチが入っている。あそこのサンドイッチは量が尋常じゃないからな。これ一個で十分満たされる。
机の上には昨日使い切らなかったお金がそのまま置いてあった。母親はやっぱりまだまだ帰ってきていないのか。
テレビの音と電気ケトルの湯沸し音が部屋に響く。待っている間はいつもテレビを見るなり、スマホを見るなりして時間を潰していたのだが今日はそんな気は起きない。もう疲れた。久しぶりにこんなに騒がしい一日を過ごしたのはいつぶりだろう。昔は学校が楽しくてしょうがなかったのに、いつの間にか毎日疲れないようにすることを重要視していていた。別に学校が嫌いという訳ではないんだ。ただ、なんというか、ただ消化していた、とでもいういのか。
「それも昨日までだったかもなぁ」
そんな俺の前に櫻尾が現れた。彼女が来たことによって確実に学校生活は変わっていくだろう。部活動だけではない。
「あんな可愛い子が身近にいたら毎日が楽しいだろうな」
ケイは確かに美形だし、ノリもいい。けどたまに劣等感を感じてしまう。俺の周りに来る女の子のほとんどはケイと近づきたいからだった。将を射んとすればまず馬からと言わんばかりに。
けど、櫻尾は違う。ケイとは関係なく、俺と仲良くなってくれている。そもそもケイのことをあまり知らないからかもしれないが。
「もうやめようこの考え。変に落ち込むだけだ」
頭から嫌な考えは捨てるべきだ。それにほら、ちょうどケトルが沸騰を教えてくれた。スイッチが上がった音はまるで「うん」と俺に答えてくれた用にタイミング良く鳴る。
湯を注いでいるうちにまた眠気が襲ってきた。このまま身を任せていれば完全に麺が伸びきる。それは避けねばなるまい。景品かなにかでもらったカップ麺用のタイマーをセットしておく。これがなるまで俺も一休みとしよう。どうせ3分なんて寝落ちする前にタイマーが鳴る。ソファに倒れこむ。クッションが顔を優しく受け止めてくれる。そのまま……
気がついたらもう時計の針はてっぺんを指していた。
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