第2-3話 店員(お静かに、お静かに!)
「本当ですか。待ってますね」
正直、このままうやむやにしておいたほうがいいかもしれない。面倒くさいし。
「お、珍しいな。こんな時間までここにいるなんて。いつもなら家にいるだろう」
そう言って入口から入ってきたのは、ケイだった。部活の仲間をつれてよく腹ごしらえをいているとは聞いていた。今日はここだったか。
「流れでな」
「誘っても乗り気じゃないこと多いからな。何に誘われたんだ?」
顎で櫻尾を指す。目線を釣られたケイは驚いていた。本当に驚いていた。
「さ、櫻尾さん!? どうしてここに!?」
後ろの奴らも騒がしくなってきた。あれが今日の? とか、ほんとに可愛いな。とか聴こえてくる。そりゃ話題の美少女転校生なんだ。和詐欺たくなる気持ちはわかる。わかるが、
「おい、ほかの客に迷惑だろ。ちょっと落ち着けって」
「なんでお前は落ち着いてられんだよ」
「それもいろいろあるんだよ」
「なら聞くしかないな。てなわけで俺はここに座る。オメーらはあっちでな」
部活仲間に冷たく言うケイ。もちろん反感を買っていた。そりゃそうだろう。こいつらも相席したいに決まってる。おとなしくケイも向こうの席に行けばいいのに。
口論がなかな終わらない。
「いい加減席につけよ。店員さんも困ってんぞ」
俺の一言で一斉に視線を浴びることになった。その目線は教室で受けたものと同類に感じるぞ。
「あ、あの」
手を挙げながら櫻尾が声を出した。さっきまでの騒ぎが一瞬で止まる。
「本当に迷惑そうなので…」
挙がった手がそのまま店員に向く。そこには苦笑いした店員さんが突っ立っていた。
「「「すみません」」」
なんで俺まで謝ってるんだ。
「それじゃあ俺はここな」
言ったもんがちと言わんばかりにケイが俺の隣に座る。
もう一度騒ぎなりそうだったが、流石に状況を理解したのか別の席に座った。恨めしそうに。
「それじゃあ聞きたいんだけど、お二人さんは本当にどういう関係?今日が初対面、てわけじゃなんでしょ」
「実は昨日、困ってたところを助けてもらったんです」
「道でも迷ってたの? いきなり知らない街に来たんだもんな。仕方がないことか。にしてもソータ。羨ましいぞ」
「なんで」
「俺も道案内してれば仲良くなれたのに」
「いいじゃん。これから頑張れば」
「それもそうだな。てなわけで櫻尾さん。お付き合いください」
「気がはえーよ」
ケイの頭からいい音がした。
「ったく、いってーな。そうも強くたたくな」
「いつもどおりだろう」
「櫻尾さんがびっくりしてるから」
見れば本当に驚いていた。つい、いつものノリで叩いたが、初めて見る人には驚くような大きな音がしたかもしれない。
「気にしなくていいよ。痛くないから。うまいことやってくれてんのこれでも」
「これでもとは何だ」
「いって!!」
ついつい机の下で足が当たってしまった。不自然かもしれないがたまたまだ。
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