第2-1話 コーヒー一杯430円
「まさかここに来たがるとは」
「ここに引っ越したんですから一回は行ってみないと」
やってきたのは名古屋発の喫茶店。今では全国47都道府県に出店を果たしている。
「こっちに来る前にもあったんじゃない?」
「確かにありました。でも家より離れてて行ったことなかったんですよね。なので引越しが決まったら行ってみたいと思ってたんです。それじゃあ噂に聞く一日やってるモーニングの注文を」
ワクワクしながらメニューを見ている。だが残念なことだ。
「もうモーニングは終了してるぞ」
「えっ! そうなんですか」
時計を見れば分かるのだがもう6時近くになっている。この時間の何が朝なのか。
「個人でやってる喫茶店ならともかく、ここは11時までしかやってない」
「な~んだ。ほかの店と変わらない時間なんですね」
「チェーン店だからな。コーヒー1杯でメニュー山盛りつけてたら利益は出ないでしょ。さらに終日やってるとか倒産したいとしか思えない」
「けど個人経営なら」
「道楽でやってるんだろう。じゃなくて」
わざわざ喫茶店の話をしに来たわけではないんだ。『執筆部』とやらの活動について考えなければ。
「そうですね。まずはこの同好会の方針から」
「その前になにをするのか教えて欲しい」
きょとんとした顔を見せる櫻尾。そんなに変な質問だろうか。
「なにをするって、執筆をするんです。小説を書くんです」
まさにそのままだった。
「もちろん小説を読んだりもしますよ。けどそれ以上に書くんです。そして書いたお話を見せ合って、批評会を開いていたみたいです」
聞いただけでもんどくさそうだな。さっきまでの判断は間違いだったか?
「俺なんて小説を書いたことは一回もないんだぞ。それなのにいきなり書けってのはちょっと無理がある。そもそも書くモチベーションは無い」
部活なり同好会に入っただけで褒めて欲しい。今までこんな活動はしたことないのだ。俺はあの時、押されに押されたから入っただけ。場の空気に押されたってやつだ。
「そうですか……残念です」
「けど、今すぐやめるわけじゃないんだ。まずはお前の活動に参加するところから始めるさ」
一からいきなり出来るような器用さを持っているとは思っていない。まずはやっているところを見てからはじめよう。
「はい!!」
「ちなみにどんな小説を書くつもりなんだ?」
「全く決めてないです!!」
そう元気に言われても……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます