第1-4話 職員室独特の雰囲気
空腹が気にならないほど集中していたとは。よくやった俺。ご褒美になにかあげよう。
「そもそも終わらせて当然のものだけどな。となればご褒美はお預けとする」
夕飯前にお腹になにか入れよう。母さんは仕事で家を空けるってい言ってたし。最悪飯を早めるだけだ。
軽いカバンに課題を入れ、軽い足取りで職員室に向かう。釈放された囚人はこんな感じだろう。
校舎の奥から聴こえてくる管楽器の音色は俺を祝福しているような気さえする。
「失礼しま~す」
本当に失礼な言い方になってしまった。でも今は許して欲しい。
梅ちゃん先生の席に向かっていると先客がいた。
「とはいっても決まりだからな。人数を集めないと部活動は認められない。それがかつて存在していた部活だとしても」
「でも……」
「それに教師も一人以上、顧問としてつけなければいけない。学校の先生なんてのは大体は、既にどこかの部活に所属しているもんだぞ。簡単な話じゃない」
「……考えてみます」
「だがそこまで悲観する必要はない。教師という立場上、否定するような言い方になってしまったが、生徒のやりたことは出来るだけ叶えてやりたい、というのが教師、とより、私の考え方だ。なに、同好会ならば部活復活より簡単だ。人数は二人以上。顧問は不要。まずはそこから始めてみたらどうなんだ」
「でも私、この学校に来てそんなこと頼める人、いないんですよね」
「そこにいるじゃないか。初めての人が」
「「えっ」」
急に指される俺。なんだか真剣な話をしていたようだったから様子見していたら知らない間に面倒ごとに巻き込まれそう。それに櫻尾もびっくりしてるじゃないか。
「先生。それじゃ俺は課題を出しに来ただけなんでもう帰りますね」
「まぁまて辰巳。コーヒーぐらいなら淹れるぞ」
「いりません。それじゃ」
ノートを渡してちゃっちゃと帰る……
ことはできなかった。
「だから待てって」
振り向いたタイミングで梅ちゃん先生に腕を引っ張られた。
「お前確か、帰宅部だったよな?」
「そんな部活に所属した覚えはありません」
「なら何部にいるんだ?」
「下校部?」
「とにかくどこの部活にもいないんだったよな。ならちょうどいい。櫻尾。こいつが部員、もとい同好会員二人目だ」
「いや、いやいやいや。いきなりで悪いですよ先生。彼だって都合があるでしょうし」
家に帰って読めてない漫画を読むことが都合だというのなら都合は悪い。
「それで入るかどうかはともかく、何の話をしているんです? 部活がどうこう聞こえましたが」
そうだなぁ、と、つぶやき、先生が教えてくれる。
「昔、この学校には沢山の部活があってな。けど顧問の負担とか、生徒数の現象とかがあったから部活が減っていったんだ。そのうちの一つが櫻尾が入りたがっている部活。執筆部だ」
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