第1-2話 10分休みでは物足りない
「こいつが、今話題の転校生だ」
「櫻尾つむぎといいます。親の仕事の都合でこっちに来ました。この学校ではいろいろとやりたいことがあったので選びました。知らないことがいっぱいありますが教えてください」
「それじゃ席に付け。櫻尾の席はあそこだ」
うめちゃんもとい、梅木陽子先生が指したのは俺の隣の空席だった。彼女の席ならそりゃ空席のままだわな。
「一限目のホームルームの始まりを遅らせてやるから、聞きたいこととか今のうちに聞いておけ。連絡事項は特になし。それじゃ終わりで」
うめちゃんが戸を締めた途端、クラスのみんなが転校生に群がっていく。となりの席の俺まではじき出されるほどに人が来た。こりゃ離れた席にいるケイのところに非難するか。
「ねぇねぇ。前はどこの学校にいたの!?」
お前が率先して聞くんかーい。アイドル追っかけてリアル女子に興味ないとかほざいてただろ!
「えーっとですね」
「彼氏とかいるの? ホント可愛いもんね」
周りの女子も根掘り葉掘り聞こうとする。これだけの人数に一斉に話しかけられればどの質問に答えるべきかわからなくなるもんだ。経験ないけど。
こんなむさくるしくなる場所はさっさと退散しよう。ケイがここにいるならあいつの席を拝借出来るしな。
「あ、あの」
「なになに?」
「ちょっと待ってください」
そうそう持ってあげたらいい。うめちゃん先生も流石に五分十分じゃ帰ってこないだろう。それに今日は半日で終わる。放課後に持っと詳しく時間はあるだろうに。
「だから待ってくださいってば」
肩を叩かれ振り返る。そこには頬を膨らませた櫻尾がいた。
美少女となればこんな仕草も絵になるな。
「何度も呼んだのに無視するなんてひどいですよ」
いやまさか俺を呼んでたとは思わなくって。
「ここには知り合いはあなたしかいないんですから助けてください」
「それはいいけど……」
彼女の後ろでは様々な顔をしているクラスメイトがいた。驚いたり、怪しいものを見る目で俺を見ている。それにうっすら聞こえるぞ。どういう知り合いなの? とか、羨ましい! 俺も頼られたいとか。今なら嫉妬で抹殺できそうという発言は聞かなかったことにしよう。
「知り合いって行っても昨日あったばかりだし」
「それでも私にとっては知り合い、もしかするとそれ以上かも知れないんです!」
黄色い声が教室に響く。
やめて! 去年まで培ってきた俺の学校生活を崩さないで。
「あの~お二人さん? ちょっといいかな」
ケイが挙手している。
「なんだよ?」
「なんです?」
「二人は知り合いなの? 会話を聞く感じだけだとよくわからないんだけど」
「昨日あっ
「わたしに初めてを教えてくれた人なんです」
それはいけない。なんにも知らない人は、
「「「えぇぇぇぇぇ!!!!」」」
こうなるに決まってる。
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