プロローグ2 いつもは自転車、歩きでよかった
コンビニに歩いて向かう。べつにわざと時間をかけたいとかじゃなく、気分転換のためなんだ。
「誰に言い訳してるんだか」
ポケットには財布と家の鍵だけ。スマートフォンはどうせ使わない。身軽な格好で夕日が眩しい道を歩く。
なんだか目の前に女の子がおばさんに謝っている。あのおばさんは家の近くで何度か見たことある。けどあの女の子は誰だろう? 親戚だろうか。にしてはお互い他人行儀に見える。
「力になれずごめんねぇ」
「いえ、私の方こそ急にごめんなさい」
俯く彼女と歩く出すおばさんを横目で見ながら通り過ぎていく。俺が気にしたところでなんにも変わらない。今の目的は栄養摂取なんだ。悩むべきは美味しい弁当が残っているか。
「ついてない……」
まさか弁当が一個も残っていなかった。というか搬入がされなかったらしい。運搬トラックが事故に巻き込まれて到着しなかったと店員が教えてくれた。エナジードリンクはあったけど、欲しかった弁当はなし。代わりにカップ麺を2個買って店を出る。金鐘分の少年誌は既に読みきった。立ち読みする必要はない。
さっきよりも影が伸びる道を歩いていると
「まだいるのか」
さっきの女の子がまだいた。
今度は俯いていない。というか
「こっちを見てないか?」
後ろには太陽ぐらいで他には何もない。
こっち、じゃなくて完全に俺を見ている。決意したような面持ちで俺に向かって歩いてくる。
「立ち止まるのもおかしいよな」
帰り道なんだ。堂々と前を見て歩く。彼女との距離はすぐに無くなった。俺はもう前に進めない。なぜかというと、
「すみません!!」
彼女が目の前で立ち止まったからだ。
「ここでですね、見晴らしがいい場所とか、いいロケーションとか、おすすめスポットてありますか?」
一瞬思考が止まった。
「えっと」
「あーここドラマで使われそうだなぁとか、漫画の見開き一ページにしたら心に刺さるだろうなぁとか、ゲームのイベントCGにするといいだろうなぁ、という場所です。探してるんです」
「探し物とか落し物とかじゃなくて?」
「はい。探し場所? です! 何分今日の朝にこの街に引っ越してきたばかりでして、荷解きやら転校手続きやらで自由になったのは夕方になってからなのです。やっと出来た時間は大切にしたいと思い、散歩していたんですけど。やっぱりわからない町なのでどこに何があるのかわからない。遅くなっちゃうとパパママに迷惑ですし。そこで思ったんです。この町の人に聞こうと。ということで道行く人に話を聞いてます!」
「は、はぁ」
元気な子だなぁ
「というわけで最初の質問に戻ります。いい場所知りませんか?」
「あるっちゃあるよ」
「ホントですか!?」
「ちょっと歩くけどね。それでもいい?」
「ありがとうございます。いやぁ最後のチャレンジでやっと教えてもらえます」
そりゃいくらい可愛い子でも突然話しかけられたら普通はびっくりする。俺は時間が余っているからね。現実逃避じゃない。ちょっと睡眠時間を減らせばなんとかなる。
「それじゃついてきて」
「はい!!」
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