筆圧で灰に
今舌こん
プロローグ1 手の抜き方には自信あり
なぜ勉強をするのかと聞かれれば、ある人は将来のためだと答えるだろう。別の人に聞けば、そもそも意味なんてないと答えるかも知れない。俺が答えるとしたら、期末テストで赤点を取らないようにするためだと答える。
昨日まで怠惰に過ごしている俺、辰巳壮太郎は今になって春休みに出された課題に取り掛かっていた。明日、というか今日4月7日で春休みが終わる。既に12時を回っている。この状況で真摯に式を解いたり、英文を読み解いていたら提出が間に合わない。だから裏技として答えを写す。絶対良い子はマネしないでね!!けど全問正解してしまうと答えを写したことがバレるから、程よくわざと間違える。これが俺が手を抜きまくって得た知恵なんだ。
「これするとまた覚え直しだけどな」
誰かが聞いているわけでもないけどつぶやく。
課題丸写し作戦を始めたのが8時からだから自分としては結構頑張ったほうだろう。もう寝る。明日の俺に頑張ってもらおう。おやすみ。がんばれ。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!昨日の俺!!!」
目を覚ましたら既に5時前。言っておくけど夕方のね。17時のほうね。なんでこんなにぐっすり眠ってしまったんだ。目覚ましをかけてないからか。それでも寝すぎだろこれ。もう諦めるべきか、否、まだ行ける。エナジードリンクを飲んでカフェイン摂取して、今までにない集中をすればどうにかなる。授業開始前に新しいクラスでしょっぱなから悪い目立ち方はしたくない。去年は目立たない一年生で行けてたんだ。スタートダッシュで躓くわけにいかない。
「そうと決まれば冷蔵庫にいる友人に助けを借りようじゃないか。」
1階に降りて友人とご対面
「……あれ、ないぞ?」
出来なかった。
いつも扉の棚にしまってあるのだがどうしてないのか。
冷蔵庫の扉を締めるといつもはない紙が貼ってあった。
「なんだこれ」
メモ用紙をちぎったものがマグネットで止めてある。文字を見ると母親の字だった。
『ガソリンは私が持っていく。これから修羅場だ。飲みたかったらリビングに置いてある金で買ってこい。』
仕事で忙しくなる時は母親は良く買いだめしてあるエナジードリンクを持っていく。今回は運がなかったな。
「しゃーない。諦めるか」
飲まなきゃ課題ができないわけじゃない。買いに行くぐらいならその時間を課題に当てたほうがいい。
「ん?まだなにか書いてある」
『PS・今回は長くなりなのでカップ麺も持っていきます。ちなみに冷凍食品もないから食事は買ってね』
育ち盛りの高校生に食事抜きは処刑と何ら変わらない。ちゃっちゃと買いに行ったほうが良さそうだ。
「日付が変わるのは確定したか」
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