第19話 問い

そうだ。

この間、あなたに聞かれましたね。


「やり直せるとしたら、私の事を、何歳から育て直したい?」と。

妙な質問をしてくるものです。


それでも、大人になったあなたは、子供の頃とは違いました。

穏やかで朗らかに。

まるで私を通り越して、私よりも大人になったように感じることもあるのです。


私は答えます。

「もうたくさん。やり直しなんてしたくないわよ」と。

あなたは可笑しそうに「そんなに辛かったの?」と聞いてきましたね。

辛かった…。でも、辛かったのは子育てだったのでしょうか。今、改めて思い返せば、子育ては楽しいものでした。

辛かったのは自分の若さだったような気がします。

考えてもみれば、23です。23で母親になったのです。

若さ故に見る夢もあったでしょう。その夢と現実がかけ離れていて、そんな毎日に苛立っていたのだと今ならわかります。

その苛立ちや、感情が思いどおりに行かない育児に向いていたのかもしれません。

ただし、何度もいうようですが、それにしても、あなたは可愛げの無い子でした。

そう言われてみれば、いつからだったのでしょうね。気がつくとあなたは、私よりも、義理の母や妹に懐いていたのです。

あなたの弟が産まれてからでしょうか。


そうでした。

あの子が産まれてから、、私は少し変わったのかもしれません。


あの家から抜け出したかった。

とにかく、全員嫌いでした。

最悪な毎日。

夫の稼ぎが良くても、納屋の上に住み、農家を手伝わされて、自由も無い毎日。

街にでかけ誰に気兼ねをするでもなく買い物をしたい。親子4人で外食をして、気ままに時間を過ごしたい。

バカみたいに判で押したような繰り返しの毎日。我慢の日々。

やり直したくもないのはあの頃なのかもしれません。

あなたは覚えていませんか?

あなたはこちらについていませんでしたものね。どちらかといえば、義理の祖父母やあの人の弟、妹があなたをとても可愛がってくれてましたからね。

あの頃の私の顔なんて見ていなかったのかもしれませんね。


疲れました。

少し眠ります。

自然の風が光が気持が良いので、どうかこのままこのままに。




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