第16話 実家
私は、恵まれた家に、産まれました。
兄、そして姉、下に二人の妹。
父は農業、養鶏、家具屋、飲食店、といろんな事業をしていました。
人を雇っていたし、家には住み込みで手伝いをする者もいました。
父のあとを継いだ兄は商才の無い人で、あっと言う間に商売はたたんでしまい、いまでは米と少しの野菜を作り、兄の息子の代では会社勤めになり、あの頃の面影は、古い、今では誰も住んでいない大きな家だけになりました。
豊かに暮らしていた頃には、増築を重ねてできた長い廊下や階段は迷路のようで、、、友達が遊びに来ると「御屋敷」なんて言われたものです。
目を瞑ると浮かぶあの頃の暮らし。
厳しい両親でしたが、今振り返れば、あの頃の時代にしてはとてもいい暮らしをさせてもらっていたんだなと思います。
衣食住不自由なく、学校に通わせてもらって。
私ももっとのんびりした朗らかな娘だったような気もするのです。
ひとつ上の姉は今でも私の事を心配します。しっかり者の姉は小さい頃から鈍臭い私を助けてくれました。
美人で優等生な姉は融通の効かない真面目さがあって、私にとっては煩わしく感じる事もありました。そんなこともありお互いに距離をおいた時期もありましたが結局のところ、こんな年になってもつい姉の気遣いに甘えてしまうのは、姉の私に対する愛情が本当のものだということでしょう。
結婚してからも実家を訪ねる事が多かった私は実家を頼りにしていました。
しかし、結婚に賛成ではなかった父親はあまり良い顔をしませんでした。
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