第14話 巣立ち
娘が家を出ていきました。
東京の専門学校に行くと、いつの間にか勝手に決めて、実現させたのです。
できればこの土地に就職してほしかった。
成績が良い方ではなく、勉強も嫌いなあなたが、まさか進学を希望していたなんて、高校の教室での三者懇談で「就職しません。東京の専門学校を受けます」と言い切ったあなたの顔を私は忘れられません。
こんな時に、突然言い出すなんて、親をバカにしているのか、私はあなたのその行動に怒りしかありませんでした。
だいたいお金がかかるのです。
「学費を払い、生活費を自分で稼いで生きていけるなら、好きにすればいい」
そう私が言うと、あなたは毎日毎日アルバイトに明け暮れるようになりましたね。
学校が終わり中華料理店でのウエイトレスやお弁当屋、帰りはいつも11時近くでした。土曜日や日曜日は朝から昼過ぎまで和食レストラン、休憩をはさんでまた夜まで。
高校生がこんなに稼げるんだと感心するほど働いてきましたね。
きっと意地だったのでしょう。
結局、私も折れました。
賛成も応援もしませんでしたが、あなたを止める事はできませんでした。
私はあなたにこう言いました。
「そんなに自分の我を通したいなら
人に迷惑をかけるな。上手くいかないことがあっても人のせいにするんじゃないよ」
と。 覚えているでしょうか。
でも、お金のことばかりではないのです。
本当に私は心配だったのです。
知らない都会でまだ世間を知らないあなたがどんな危険にあうかわからないのです。
ましてや年頃の女の子が、出会う人によっては人生が変わってしまうのです。
そういう怖い事を知らない娘を、目の届かないところに平気で行かせられません。
私はあなたの母親なのです。
あなたは可愛い我が子なのです。
でも、あなたにはわかってもらえませんでした。
私の愛は伝わりませんでした。
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