第11話 成長

子供の成長は早いものです。

保育園、小学校、中学、高校と、、

あなた達の世界は広くなり、どんどん、私の目の届かない子供達それぞれの道に進んでいきました。

えんぴつにペンやしたじき、洋服、、、食べもの。私があなた達に選んで与えるものは、どんどん少なくなり。

それが親離れという成長なのでしょうけれど、心配な私は、その羽ばたきにさえ悪い想像ばかりしていました。

わからないというのは、不安なものなのです。


あなたはまるで外の広い世界が自分本来の世界で、家に帰って家族と過ごす時間は仮である。かのように。

私達と、いえ、私とでしょうか、いつも少しため息のような距離をもって過ごしていましたね。

それでも、あなたに友達ができ、自分の事のようにあるいはそれ以上に、大切な何かに出会えているのだろうなということは、私にも充分伝わってきました。

それぐらい、あなたは眩しく若者らしく成長して行ったのです。


そして、それに比べたら、ゆったりと、なだらかな歩みをするような息子は、相変わらずどこか幼く、優しく、私の側にいてくれたのです。


いえ、今思えば私が、息子という存在を、そうしておきたかったのかもしれません。

あの子も、実は家の中では(かわいいボク)を意識していたのかもしれません。


私が怒らないように、私に怒られないように。家族がこのまま家族であるように。

じっと、柔らかいクッションのように、圧を受け止めながらも、反発しないように、分散させる役割をしていたのかもしれません。


だって結局、あの子も私の手の届かないところへ行ってしまったのですから。


母親とはなんと虚しいものなんでしょうか。

あれほどの愛をそそぎ育てたというのに、

成長した子供は、まるで自分ひとりで成長したかのように、親を切り離して飛んでいってしまうのです。

私には見えないキラキラ光る広い世界へ。


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