第8話 意地悪

あの人の実家から帰ってくると、あなたは小さい弟に、白い紙に包まれたお金を見せて、「いいでしょー」と言ってましたね。

なんと意地悪な事を。

たとえお金を使う事のない小さな子供でも、

いいものをもらったということはわかります。

だからあの子は泣きました。

「おねえちゃんばっかりずるいよー」と。

なんて可哀想な事を。

私は「お母さんがもっといいものをあげるからね〜」と息子を抱きしめ、意地悪なあなたを睨みました。

あなたはそんな私と息子をしらけたような目でしばらく見つめた後、し〜らないとでも言うようにくるりと背を向け私の目の届かないところに行きましたね。

家は狭いのに、まるで隣の部屋の机の下は自分の陣地だとでも考えているかのように、いつも何か気に入らない事があると、そこに座っていましたね。

背中を向けて。

まるで私達など必要ないとでもいうように。

子供のくせに、寂しいと泣きもせず、強い意志を持っているように、ひとりでどうどうと座っていました。

その姿を見ていると、なんだかとでも憎らしいのです。

我が子、我が娘のあなたが、母親の私を認めていない事や、私の事をいらないと思っているように感じて、あなたをひとつも可愛いと思えませんでした。

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