第5話 火傷

私の足にあるケロイドを、幼いあなたは怖がりました。

もうすっかり良くなって日常生活に不自由なくなったはずなのに、私の右足は時々じくじくと痛みました。

例えば雨の降る頃、例えば冷たい風にあたったとき。なぜかその火傷の痕がじくじくと気になるのです。私が靴下を脱いで足をさすっていると、あなたは怖がって泣きました。


思い出してしまうのです。

天ぷらを揚げている時でした。

ぐらぐらに熱い天ぷら油がたっぷり入ったあの鍋が私の足にひっくり返ったのです。

泣き叫ぶような痛みでした。

家族がそばにいましたが誰も医者に連れて行ってはくれませんでした。

義理の母が「味噌でも塗っておけば治る」と言った事は今でも許せず私の胸を苦しくさせます。


この事をきっかけに、私はこの家を出る決心をしたのです。


あなたの下には男の子が産まれていました。

あなたとは違い、私によく甘え、少し身体の弱い事もあって私のそばを離れないこの子が私には可愛くて何よりも大事な存在でした。

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