第4話 本性

私達は結婚し、晴れて夫婦となりました。

あの人の家は古い木造の家で、大きな蔵と納屋があり、私達は納屋の2階に住む事になりました。

母屋には年老いたお婆さんがひとり、義理の両親、少し歳の離れたまだ学生の弟と妹が居ましたから、私は納屋の2階だとしても母屋で皆と寝起きを共にするよりは気が楽でした。やがて子供も産まれましたし、夜泣きする赤ん坊をあやしながらの毎日には少し離れているほうが都合が良かったのです。

私は初めは嫁らしく炊事や洗濯、畑の仕事も手伝いました。あなたが幼い頃は腰の曲がったお婆さんがあなたをおぶって世話をしてくれたし、私には意地の悪かった義理の母も、初孫のあなたの事は可愛がり、毎日お風呂にも入れてくれました。

そうやって私はあの家の中で働く主婦となりました。

23で子供を産み、自由を奪われ、はじめ優しかった義理の両親や弟妹も私の事は女中のように扱うようになり。これがこの家の人達の本性だったのか…と思うようになりました。


そして、いちばん私を苦しめたのは、あの人の酒癖の悪さでした。


知らなかったのです。

こんな本性が隠されていたなんて。

普段はおとなしいあの人ですが、酒が好きで、酒が入ると気が大きくなるのか、目がつり上がり人が変わってしまいます。

ばかやろうこのやろうはいつものこと。

ひどい時は酒に酔って暴れ、皿を投げたりこたつをひっくり返し、竜巻のように荒れ狂うのです。

私は幼い子供を抱え、部屋の隅で寝たふりをしてあの人が酔いつぶれて眠ってくれるのをただひたすら待ちました。

殺されるかもしれないと思うほど恐ろしいのですが、実際には殴られたり蹴られたりする事はありませんでした。

そして翌朝には覚えていないのです。

部屋の様子や私の顔色から、酔っ払って何か良くない事をしたんだろうとは感じるらしいのですが、私が「昨日の夜のあの暴れは何だったの?」と聞いても文句をいって泣いても怒っても、あの人はただ黙って下を向くばかりでした。


そしてそれは、終わることのない私の悪夢となりました。

あの人は酒を飲むことを止められませんでした。

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