第3話 育ち
働き者で優しく、時々はひょうきんなあの人は、少し世間の常識を知らないようなところがありました。
私が身なりや人付き合いの世話をして、あの人の格好を整えてあげると、あの人が世間に少しづつ認められていくようで誇らしくもありました。
あの人の父親はあの人がまだ産まれて間もない頃に戦争で死にました。
その後、あの人の母親が再婚し、産んだ弟と妹とは血の繋がりがありながらも、あの人は養子という形で育てられました。
歳の離れた弟妹達はあまり不自由無く、どちらかといえば豊かに育てられましたが、あの人は農家を手伝いながらあまり教育も受けず大人になり、農家をしながら市場で運送のアルバイトをするような生活をしていました。
働き者といえばそうでしょうが、世の中を知らなかったといった方が合っているでしょう。
映画を見に行き、外食をして、街でレコードや服を買うような若者らしい時間を過ごした事は無いような人でした。
あの人は私と出会って、余暇という時間を知ったのです。
自分の時間を自由に使える喜びを知ったのだと思います。
私の友人とも知り合い、今までの狭い村の中での生活から抜け出して、広い世界を知ったのです。私という女と出会った事であの人の運命が変わったのです。
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