第3話 字の書き方
「字が使えるのは人間だけってどういうことですか?」
「言葉のとおりだよ。」
「じゃあ字は使わないってことですか?」
「はぁ?使うってさっき言っただろ。お前もしかして人間なのに字の使い方を知らないのか?」
「知ってますよ!字の使い方くらい。紙や板に書いて相手に何かを伝えるのが字ですよね?」
「相変わらず訳のわからんことを言うなぁ。字は戦闘に使うんだぞ。」
はぁ?字は戦闘に使う?この人は何を言っているんだ?
「そっちこそ何を言っているんですか。字を戦いに使うなんて聞いたことがないですよ。」
「字を戦闘に使うのを聞いたことがない?バカバカしい。そんなのでよく生きてこられたな。まぁいい見た方が早いだろう」
そう言って、この人は俺の手首を持ってギルドのカウンターの奥の出口から外へ出た。
俺たちがギルドを出て10分くらい歩いたとき、この辺りにモンスターが全然見当たらないことに気づいた。
「モンスターが全然いないですね。」
「俺みたいなモンスター討伐ギルドの人が倒しているからな。よし。ここら辺りでいいだろう。」
そう言っていきなり鞘から刀を抜いて、
「よく見とけよ。<
刀で心と書くと、体が少し青く光った。
「今のは、人間が字を通じて神と通信する準備の技だ。魔法を使うときの呪文詠唱みたいなものだな。人間が戦う前は必ずこれをする。次の技はこうだ!<
すると、刀が白く光り、刀を縦に振ると一瞬だけ刀が倍近く伸びて、2秒くらいで縮んだ。
「さっきのは、字を書いて最初の攻撃から2秒だけ刀のリーチと切れ味が良くなる技だ。」
「すごいですね、それ。えぇぇと。」
「俺はロードアンク王国カラト街支部モンスター討伐ギルド所属ハンター、[サムライ]のエルターだ。あと、タメ口でいいし、呼び捨てで呼んでくれ。」
「なら、そうさせてもらう。俺は(待てよ、確かエルダーは名字を言ってなかったよな。もしかして貴族しか名字がないんじゃないのか?だとしたら名字は言わない方がいいな)ショータだ。(出身地も言わない方がいいか)出身は記憶がなくて覚えてないんだ。」
「記憶喪失だったのか。どおりで字の使い方がわからなかったわけだ。それで話を戻すけど、字の使い方はわかったか?」
「ああ、わかったよ。今の俺でも出来るのか?」
「たぶん出来ないと思うけどやってみたら?教えるから。」
そう言ってエルダーは腰に刺してある刀を俺に渡してきた。
「まずは"心"と刀で書け。」
「わかった。"心"っと。」
「… … … … なにも起こらないな。やはりその刀は俺の名前が刻まれているから俺が書く字しか反応しないみたいだな。じゃあ、そこに生えている長い草を刀がわりにしてみたらどうだ?」
「やってみる。(ブチッ)なかなか硬い草だな。じゃあやってみる。<
ブォン。体が青く光った!
「おお!!出来た!!すげー!!この調子で<
シャキーン。草が白く光って一瞬だけ刀みたいになった。
「おお!!これも出来た!!他にもないのか?」
「字はまだまだあるが、それより、もう青く光るのが無くなっているだろ。」
「あ!ほんとだ!」
「ショータはまだ熟練度が低いから時間が短いんだよ。字を使っていけば段々効果時間が長くなってくるはずだから、練習あるのみだな。じゃあそろそろ帰るか。」
「ああ、そうする。」
草を捨てて、街に帰った。
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