打っとこピコ太郎

@poro-q

第1話

「実はな…」

いつものように放課後にドンキに寄り道して店内をうろついていた時のことだった。

「お前のことがずっと好きだった。男同士だからダメに決まってるって自分に言い聞かせながら『友達』でずっと我慢してた。でも、もう無理だ。」

僕は胸の鼓動を感じながらも、目線は彼の背後にあるピコピコハンマーを捉えていた。

―――使うなら今しかない

そう決心すると、僕はピコピコハンマーを手に取り、彼の頭を思いっ切り叩いた。

「なんでやねん!」と言いながら。

突然の出来事に呆然としている彼に向かって僕は更に言い放った。

「男同士だからダメとか、そんなの関係あるかよ。好きなくせしてコソコソしてないで堂々としろよ。」


『友達』は反撃に出た。

「お前さ、いつもそのだっさい眼鏡かけて『女子には興味ありません 』みたいな顔しやがってさ。当然お前に寄ってくる女子なんて一人もいないよな。俺にとってはマジラッキーだったんだよね。でも俺は知ってる。お前の眼鏡外した時の顔って、すげぇイケメンだよ。」

そりゃそうだ。僕が眼鏡をかけている理由、それは視力が悪いからではない。敢えてダサい伊達眼鏡をかけることによって女子を寄せ付けないようにしていたんだから。

そしてもう一つの理由とは……

「僕は、眼鏡をかけることによって自分の気持ちを抑えていたんだ。自分の中にある恋心を、眼鏡という蓋で隠していただけなんだ。」

「それって一体…どういうことだよ?」

「自分の意思に反して女子からモテるのを防ぐために、この眼鏡で女ウケの悪いダサい男子になりすましてたってこと。」

「自分の意思に反する?女子からモテるのを防ぐ…?」

戸惑いながら僕の言葉を繰り返す彼を僕は思いっきり抱き締めた。

ずっと近くにいたのにずっと会えなかった『恋人』の温もりを、僕は全身で受け止めた。

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