さよなら


 本番の翌朝、私は学校の傍にある神社を訪れていた。


 お守りの回収スペースの前、青いポーチから取り出したのは、あの六角形の鉛筆。鉛筆を間に挟むようにして、そっと両手を合わせる。


  ――鉛筆の神様、今までありがとうございまた。これからもう私は、自分自身の力で進んでいきます。


 目を開いて、鉛筆をふわっと投げ入れる。暗い空間だから小豆色のボディーは見えにくいけど、私はちゃんと最後までそれを見届けられた。


 金ぴかのHBの文字が、さよなら、と光り続けていたからだ。


 さよなら。昔の私。


 そして、よろしくね。これからの私。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る