えんぴつはきらきら


 中学に入ってからは、大体シャーペンを使っていたけれど、それでも私はペンケースの中に六角形の鉛筆を一本だけそっと忍ばせていた。


 委員会を決めるとき、遠足で誰と一緒になろうかを決めるとき、時々鉛筆を転がしていた。時には、テスト中にも。カンニングの元々の意味は「ズル」だから、鉛筆は、合法的なカンニング、とでも言えるかもしれない。私は神頼みと言い張っていたけれど。


 高校に入って、さすがにそろそろ、と鉛筆を手放した。それから、私の周りには答えを出してくれないものばかりが残った。


 今、その鉛筆は家の机の引き出しにしまっている。だけど時々不意に取り出したくなることがあって、我慢する。

 金色の文字は、たぶんまだ色褪せていない。

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