第6話 フィオネボディと狂気の鴉②
戸谷と佐竹が警備をしている拠点。その上空には二人のある男たちがその街を見渡していた。
「ここか」
「えぇ、そうです」
この男たちは以前にクオン達一行が森を抜ける様子を眺めていた二人であった。
一人は黒いコートに黒い翼をもつ男。その漆黒の翼を広げて不敵な眼差しで街を見下ろしている。
そしてもう一人の黒いフードを被った男。以前はその黒のフードを身に着けているだけであったが、今は全身にある鎧を装着していた。
彼が装備している鎧はクオンのそれと酷似しており、全体に黄色く光るラインが走っている。そして鎧の後ろには翼のようなものが展開されており、内部からは全身に走るラインと同じ黄色の燃える炎が噴出している。ジェット噴射の原理で飛行しているようだ。
「次の狙いはこの拠点。彼らも我が同志として迎えさせてもらいましょう」
「………」
黒フードの男は、相方の男に言葉には反応せずただ黙り込んでいる。そんな態度を少々不満げに感じた黒翼の男は彼の方に視線を向ける。
「どうしたのですか? 不満ですか?」
「不満……か。そうじゃないかと言えば嘘になる。俺も『人間』だからな、同じ人間として良心も少々痛むわけだ」
「私はもう人間じゃないからそんな気持ちはもう起きませんね。寿命も延び、身体能力は他の生物をしのぎ、そしてこうやって空も飛べる便利な身体です。まぁ君は人間のままでそれを可能していますが……」
「『人間』は欲望の化身だ。望んだことを果たすまでどこまでもやり通す。この鎧もそしてあの男がしている鎧もそれの賜物だ。あんたは発言からは人間を見下しているように聞こえるが、お前たちの存在自体も『ある人間』が望んだ欲望の果てだと思うが」
「ふふ、確かにそうかもしれませんね」
黒フードの男は淡々と言葉を切り返す。そして会話が一段落すると今度は黒フードの男が言葉を切り出す。
「そんなことよりもクオン達を追った『あの男』は大丈夫なのか?」
「あぁ、『ガエン』のことですか。あいつは我々の中でもかなり強力な部類です。ですが、かなりの戦闘狂でね。こちらも手を焼いていたんです。ですがいい仕事が見つかりました」
「そんなやつを行かせたのか?」
「あなたでしょ? クオンとかいう人間を油断するなと言ったのは。だから私は行かせたんです。『ガエン』は色々と規格外で頭のねじも飛んでる。勝敗がどうなるにせよ、その人間をうまく追い詰めてくれるでしょう」
「ならいいがな……」
黒フードの男はその言葉を聞きつつ、クオン達が向かった方角に視線を向けていた。
★★★★★★★★★★
「フハハハハハアァァアハハハーーーーーーーーー!!!!!! 宴はこれからだぜぇえぇええええ!!!!!」
咆哮にも近い叫び声をあげながら人間サイズの馬鹿でかい鴉は、バイクで走るクオン一向に追撃をかけていた。
「また来ます!!」
「なんだよ、あいつの馬鹿力は!!?」
「あんな追突、何べんも食らいたくないわ!!」
バイクに再び突撃を行おうとする鴉を見て三人の表情に焦りが見える。バイクの運転に集中しているクオンは得物である大剣を持つことが難しく、代わりにフィオネとミナリがそれぞれのサイドカーから立ち上がって後ろを向いている武器を構えている状態だ。
地に足をしっかりと着いた状態で戦うならまだしも、バイクの運転中に交戦というのはなかなかに厳しいものがある。
なおかつ敵は空を縦横無尽に飛び回っているので、自分たちから攻撃を仕掛けるのは難しい。そしてバイクの上で動きすぎるとバランスが崩れてしまう危険もある。
身構える二人への配慮や道の障害物の確認等の理由により、ここからさらにスピードを上げることは出来ない。バイクの速度は既に時速90kmに達しているが、むしろこれに追いつくこの鴉が異常なのである。
「いいねぇええ!!!! いいおびえ顔するじゃねぇかあぁああああ!! はああははあああ!!!!!」
鴉の表情が歪み、翼を羽ばたかせてまた加速する。そして構える二人に向かって足の爪を突き出した。
ミナリとフィオネは先程の強烈な突進を思い出し、苦い顔を浮かべる。
「ミナリ、フィオネ、バイクに思いっきり掴まれ!!!!!」
「「!!!」」
だがその瞬間クオンの声が響いた。と同時にクオンの指示通り二人はバイクを掴む。そしてクオンは思い切りハンドルを右に切った。
「な!!?」
バイク本体とサイドカー本体の後輪が滑って右へ一気に回転。いわゆるドリフト走行をしたのだ。本来特殊な構造のバイクとこのスピードなら派手に横転してもおかしくない。
しかしバイク本体に『とてつもない重圧』がかかり、バランスをなんとか保持してドリフトを成功させた。
だがクオンは敵の攻撃を回避するためにハンドルを切ったのではない。彼の狙いはバイク本体が曲がり、自身と鴉をうまく『直線上』に並ばせることであった。
見据えるクオン。そしてその鎧の全身にはすでに二本の赤線を輝いていた。青の光のラインはスピード強化。赤の光のラインはパワー強化。筋力が爆発的に上がり、地面がめり込むほどに体に重圧がかかる。
先ほどバイクのかかった『重圧』もクオンの仕業である。この状態の彼は相手の攻撃をまともに受け付けず、自身の実が有り余るパワーをぶつけることができる。スピードは下がるが、攻防の鉄壁と化すのである。
「おらあああああ!!!!!」
クオンは左手でハンドルを握ったまま、残った右手に力を込めて全力のエルボーを鴉の顔面にかました。
「ごほぉおああああああ!!!!???」
不意を突かれたその攻撃を鴉は避けられず、クオンの一撃をまともに喰らってしまう。そしてそのまま遠くへとぶっ飛ばされた。
クオンは攻撃が当たったのを確認すると、今度はゆっくりと左にハンドルを切り、バイクの向きを元に戻す。
「はぁはぁはぁ……。な、なんとか……やったか……」
「相変わらず無茶すんなぁ、クオンはん」
「クオン、急な指示はやめてください。それと力を開放しすぎです」
うまく難を逃れたクオンであったが、その表情は非常に苦しいものになっている。息も切れ切れになり、額をハンドルにつけるほどうなだれしまっている。どうやら鎧の力の代償が出ているようである。
しかしながらサイドカーに乗る二人はそんな無茶をしたクオンに容赦なく苦言を呈していた。
「『二本』開放するなんて。クオンはん、どれだけ負担かかるかわかってるんかいな?」
「はぁはぁ……。わかって……るよ。だからこうなってる。だが、なぁ……あんな体勢の肘打ちで、鴉野郎をぶっ飛ばすにはこれ……しかなかったんだよ。鎧の……重圧で、機体のバランスもとれ……たしな」
すでに鎧の光のラインは消えているが、あの一瞬の力の開放だけでクオンは疲労困憊だ。気が付くとまた口から血がこぼれ落ち、バイクを握ってる手も痙攣しているのがわかる。
「クオン、結果論として事なきを得たのは感謝します。とはいえまた来ますよ。あの『トラツグ』」
フィオネの声を聞いてクオンは疲労したその体でなんとか後ろを振り返る。すると視線の先には吹っ飛ばされたはずの鴉が見えた。しかも何事も無かったかのように口元を歪ましてこちらに向かって来ていた。
「フハハハハハぁあぁぁ!!!! なかなかきいたぜぇ!!! いいじゃねぇかああ!!!! 聞いてた実力は本物のようだなぁぁあああ!!!!!」
鴉はクオンにやられたのにも関わらず、嬉々として歓喜の雄たけびをあげていた。どう考えても異常で不気味だ。
「ちっ、あい……つ、はぁ。全然……こたえ…てねぇな……。ドМかよ」
「ただの猪突猛進の変態さんやったらましやけどなぁ。なんかあの鳥さん変やで?」
確かにこちらに向かって来ている鴉であったが、今度はなぜかこちらに直進せずに上空へと高度を上げ始めたのだ。妙な行動にミナリは声に出して警戒した。
「確かにおかしいですね。何をする気でしょう?」
「さぁ……な? ロクな……もんじゃないことは確か…だが、」
三人は不安を抱きながらも、追ってくる鴉に対してはとりあえず身構えるしかない。一方で上空にいる鴉は彼らのこわばる表情を見てさらに興奮を増していく。
「お次はこれだぁあああああ!!!! フハハハハハぁあぁぁ!!!! 遠距離攻撃はどうかなぁああ!!??? さぁああああ、耐えれるかあああぁぁあぁ!!」
鴉はそう叫ぶと同時に両翼を前へと振るった。
振るうといってもただ振るったわけではない。その大きく広げた翼を目で追うのも難しいほどの速さで全力で振るったのである。そして両翼で引き起こされた風圧は一方向に無理やり圧縮され頭に響くような振動音が木霊する。そのまま風圧のカッターのように変化して地面へと瞬時に到達する。
「うおあ!!?」
「ひゃあ!!?」
「くぅ!?」
途端、バイクの右側に地面が爆風と共にえぐれた。その衝撃でバイクは左へと少し吹き飛ばされる。クオンはハンドルをなんとか操作してバランスを立て直した。そして三人は今起こった現象について深く動揺していた。
「おいおい、はぁ……。なんだ……今のは?」
「なんやあの鳥はん、こんな芸当もできんのかいな!?」
「そんな馬鹿な。翼の風圧だけでこんなことは起きません。ただの生物がこんなことを行えるなど、物理的にありえない……」
「俺達が、言うなって感じだがな……」
三人のその動揺する姿に鴉はさらにヒートアップしていく。
「フハハハハハぁあぁぁ!!!! いいだろぉ!! 最高だろぉおお!!! まだまだいくぜぇええええぇぇぇ!!!!!!!!」
鴉は大声をあげてまた翼を大きく広げて振るう。そして響く音とともに風圧カッターが繰り出される。
「また来ます!! クオン、体調はそろそろ戻りましたか? 右です、右方向に避けてください!!」
先ほどの攻撃と今の鴉の予備動作を見て、フィオネは攻撃位置を瞬時に把握する。そしてへばってハンドルを握るクオンに指示を出す。
「人使いが荒れぇぜ……」
クオンはそうして指示通りにハンドルを右に傾ける。そして今度は風圧カッターが左の地面に激突する。
「くっ!!?」
「ひゃ!!?」
爆風と音が再び響き渡る。位置を予測していたフィオネ以外の二人がまた声をあげた。
「あの風圧カッター、速いし、近づかんと見ずらいわ」
「こりゃ……やべぇな」
鴉が巻き起こすその風圧のカッターはミナリの言った通り、かなり素早く、非常に見ずらい。それは風を圧縮しただけという単純な理由だ。よく確認すれば少し空間が歪んで見えるのだが遠くからの識別は難しい。かと言って至近距離まで風圧のカッターを近づけると避けるのは至難の業だ。
クオンとミナリの反応速度があれば回避ができるかもしれないが、三人はこのバイクに乗ってる。ここ飛び降りでもしなければ不可能だ。
「ご安心を、ミナリ様、そしてクオン。この体を得たことにより、より正確に攻撃位置を分析できます」
フィオネは金色の瞳が光り輝かせながら、そう二人に告げる。そして鴉の方向を見据えた。その金色の目の光と向けられる視線に鴉はどうにも気に食わなさそうな表情を浮かべていた。
「ふん。堂々と身構えてやがるなぁあああ。気に入らねぇなぁあ!!! 何が策があるってか? だったら見せてもらおうかあぁああああああ!!!!!!」
その声と共に鴉は再び翼を大きく振るう。そして間髪入れずに風圧のカッターを連続で放った。
「クオン!! 左へ。そのあとは速度を落として右に大きく避けて。そして加速してください」
「りょ…うかい!!」
フィオネの指示通り、クオンはハンドルとアクセルブレーキをタイミングよく操作する。すると風圧カッターが次々と地面へと着弾。爆発音と衝撃、土煙が舞う。
「あぁん!!!?? なぜ避けれる!?? だがぁああぁ、まだいくぜぇえええええ!!!!!」
連続攻撃をかわされたことにさらに対抗意識を鴉は燃やす。そして馬鹿でかい声と共にまた風圧カッターを放ちまくる。
「ミナリ様!! 『狐の灯』を『トラツグ』の方向に向かって放ってください。風圧カッターとぶつかった瞬間、クオンは左にハンドルを大きく切ってください」
「うちの出番やね。ほないっちょかましたるわ!!!」
今度はミナリに指示が入る。服からひょうたんに入ったお酒を取り出して口に含む。そしてそのまま必殺の炎を放つ。
「狐の灯ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!」
「あっち!!」
ミナリの口から燃え盛る炎の柱がとてつもない温度と威力で噴出される。その炎の熱さに思わずクオンが声を上げた。
ミナリが放った炎は上空でいくつもの風圧カッターへとぶつかる。その瞬間にとてつもない轟音が辺りに響き渡る。そして炎と風圧カッターは炸裂し合って消滅した。
「くぅ!!!?」
頭が割れそうになるその爆音を合図にクオンはハンドルを左へと一気に切った。途端、『狐の灯』に当たらなかった残りの風圧カッターがバイクの隣で爆裂する。
「クソ! なんとか体の本調子が戻ってきたが、心臓に悪いぜ。さっき耳がイカれそうだ」
「うちのご自慢の必殺技も相殺されてもうたわ」
鎧の力の代償が時間経過とともになんとか緩和されてきたクオンであったが、度々ぶつかるその風圧カッターの衝撃音がかなり堪えるらしい。変わらず苦しい表情を浮かべている。ミナリもミナリでお気に入りの必殺技を打ち消されて少々ショックを受けているようだ。
とはいえ鴉も狐女が炎を放つなど想定していなかったので若干苦い顔をしている。
「ミナリ様、クオン。まだです。敵の攻撃を防いだだけです。奴を倒すにはこちらからも攻撃しなくては……」
「何する気だ、いったい?」
クオンの疑問の言葉をとりあえず流し、フィオネは長い服の袖をまくって自らの右手を出す。そして握り拳を作りながら腕を伸ばして鴉に向けた。その時、この一連の予備動作にあることを察したミナリは目を輝かせて期待に胸を膨らませた。
「もしかしてフィオネちゃんあれ出来んの!? 今からあれするんやな!! うち、興奮してきたわ」
「えぇ、とっておきのをかましてやりますよ!!」
ミナリのその眼差しを見て、フィオネも嬉しそうに微笑む。一方で何のことかわからないクオンは2人のはしゃぎようにあまりピンと来ていない。
「おい、一体なんの……」
「クオンも読んでいたでしょ。バイクの入っていたワタシの機能書。その中の必殺技を行うんです」
「機能書…………? あっ!」
フィオネの一言で、フィオネの機能が書かれた紙のことをクオンを思い出す。そして事前にその内容から何をするのかが察しがついた。クオンとミナリ、二人ともが今からやることを理解するとフィオネは顔をよりニヤつかせる。
「『Fione001jk』の性能、とくと味わいなさい!!!!!!」
フィオネの掛け声とともに爆音が響く。そして突き出した右腕が体から外れて、ものすごい勢いで噴射した。いわゆるロケットパンチである。
「おおおおおお、すごいすごいわ!!! ロケットパンチやんか!!!」
「なっ、なんだ!!?」
かつてないほどの速さ。腕の切り口からは青い炎がジェット噴射しており、鴉に向かっていく。その光景にミナリはテンションアップ。一方で鴉は驚きを見せていたがすぐさま翼を羽ばたかせて、回避を試みる。
「甘いですよ……」
フィオネは瞳が再び金色に光り輝く。すると直線的に進んでいたはずのフィオネの腕は方向を変えて鴉を追尾し始めた。
「なっ!?」
鴉もフィオネの腕を避けるために羽ばたく速度を上げて、無我夢中、でたらめの動きを始める。しかしフィオネの腕はどんなに鴉が動こうが正確に追尾する。速度を上げても左に避けても上昇しても、完全に鴉を逃がさない。
どうやらフィオネの意思がそのまま動きに反映される構造になっているようだ。
「くそがぁあ邪魔なハエがああぁあ!!!」
我慢の限界をきたした鴉は今度は避けようとはせず、『フィオネの腕』に向かって風圧カッターをかました。そしてカッターは腕を直撃して一気にバラバラにされる。
「あ、フィオネちゃんの腕が……」
「壊されましたね」
腕が破壊されて唖然とするミナリをよそに、そのフィオネは何故か不敵な笑みを浮かべる。その理由はすぐさま分かった。
「ぐおおあああああ!!!!???」
なんと破壊された手が爆発したのである。
爆風に巻き込まれて鴉は悲痛の叫びをあげながらボロボロになり、吹き飛ばされる。
「フィオネちゃんの腕、爆発してもうたで!?」
「それはそうですよ、ミナリ様。あの腕は外気を取り込んで中の燃料を燃やながらジェット噴射してるんです。下手に衝撃を与えたらああなりますよ」
腕の爆破をもろに喰らった鴉であったが、吹き飛ばされながらも体を立て直し、再び飛行を開始する。だがダメージは相当で頭半分が一部吹き飛んでしまっている。にも関わらず、まだ動けるようだ。鴉は再びこちらに接近する。
「あいつ、まだ生きてやがんのか!?」
「しぶとすぎひんか!!」
その生命力に二人は騒然となる。だが現実にあの鴉は生きているのだ。そして鴉は今度はなんとバイクの進行方向、およそ100m先に立ちふさがった。
「ああぁあ、いてえぜぇ!!!! すげぇいてぇええ!! こんなに血も出るしよぉおお!!! こんだけいてねぇのは初めてだぁあああ!!! だからよぉおおお、こんだけコケにされた礼だぁあああ!!!」
鴉は口から吐血しながらも、叫び、咆哮して、両翼を全開に広げる。
「またあれか!? この距離じゃかわせねぇぞ!!!」
鴉の予備動作にクオンが戦慄する。先ほどまで鴉が行っていた風圧カッターが正面から確実に来てしまう。逃げる方向ならまだしも接近しながら避けるのは無理だ。
「クオン、頭を下げてください。あの『トラツグ』には『Fione001jk』の更なる性能を披露してやります」
「おい、なに!? うげ!?」
クオンが最後まで言い切る前に、フィオネは彼の座席の後ろに立ちながら残った左手で頭を押さえつける。そしてまた相対する鴉の方向を見つめた。
「お見せしましょう!!!」
一気に目を見開く。すると今まで以上に瞳が光り輝いた。
「まさか!?」
またフィオネの行動に何か察するミナリ。そしてまたまた期待を高めて尻尾をフリフリとし始めた。
「はああああああ!!!!!!」
フィオネが叫び声をあげる。その瞬間、フィオネの両目から『強烈な熱線』が発射された。
「ぐおああおお!!!??」
熱線はそのまま鴉の大きく広げた両翼を貫いて大穴をぶち開ける。その衝撃と共に少し後ろへとのけぞらした。
「おおぉおおおお!!!! ビーム出たわ!! うち大興奮や!!!!!」
テンションマックスのミナリをよそに、搭乗するバイクが苦しんでひるんだ鴉に到達する。
「おっと、興奮してる場合やないわ。ほい、クオンはん」
ミナリのサイドカーに置いてあった大剣を本来の持ち主にへと手渡す。そしてクオンは右手でそれをしっかりと掴んだ。鎧は一本の赤い線が浮かび上がる。
「邪魔だ……!!」
「がふぅおお!!!!!!!?」
クオンは邪魔くさそうにそう吐き捨てると、大剣を左から右へと振って鴉を思い切りぶった切った。頑丈であるその身体の切断まではいかなかったが、鴉はそのまま遠くの地面へと吹っ飛ばされたのであった。
「はぁ、疲れたぜ」
「いやぁ、フィオネちゃん流石やね。目からビーム出るなんてすごいやんか。うち、めっちゃ感動したわ。やっぱりロボットはロケットパンチに目からビームやんね。定石を押さえてるわDrメロンはん」
襲ってきた『トラツグ』をなんとか撃破し、安堵する三人。ミナリはさっきのフィオネが披露したビームにえらく感心していた。尻尾もさらにさらにふりふりと激しく動かしていた。
しかし倒せたといってもフィオネの片腕が無くなってしまっている。それを心配したクオンは彼女に声をかける。
「でもいいのか? 右腕無くなっちまって。しばらくそのDrメロンさまさまには連絡できねぇぞ。バイクの中を見たが予備のパーツなんて無かったし」
「ご心配なくクオン。予備の腕パーツならクオンの座ってるシートの下に収納されてますよ。バイクの荷物は基本ここに入れるんですよ。ちゃんと見てください」
「クオンはん、普段バイクのらないのがバレバレやで」
「心配してんのになんだこの扱い。俺も多少は貢献したんだ、ねぎらいの一つでも欲しいもんだ」
クオンは自身の扱いの悪さに嘆きながら、目的地に向かってアクセルをさらに吹かせるのであった。
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