第7話 夢と現実
夢が切り替わる。いつだって夢は唐突でデタラメだ。
さっきの夢は異世界転生の夢だったのだろう。異世界転生なんてホントにあったらラノベ好きやゲーマーには最高のシュチュエーションなんだろうけど、実際にみてみるとわけがわからないし、全然面白くもないものだな……
『…………………ね』
なんだ?
『………………んね』
あぁ、今度はなんだろぅ。登場人物なしの声だけか。
『ごめんね』
何が「ごめんね」なんだ?だけど、聞いたことがある女性の声だ。どこで聞いたのか……
『かえしてくれ……』
今度は聞いたことがない若い男の声だ。何を返せだって?
『僕の……かえしてくれ』
何を取られたんだ?
『ごめんね』
また女性の声だ。
『僕には……まだ……が……』
なんだよ……気持ちわるい。意味がわからない。
『……全部終わったら、必ず』
最後の女性の声はハッキリと聞こえた気がした。恨みったらしい男の言葉は続いているが、徐々に聞き取れなくなる。そろそろ夢が終わる。目を開けれそうだ。
いつもはスマホのアラームで起床するが、珍しく自然に目醒めることができた。なぜか涙が流れていた……
流れ続ける涙も気にせずに、ぼーっと天井を見て、まだ完全には覚醒しない意識の中でふと思う。
知らない天井だ。
周りも見てみるが、自分のアパートの部屋ではない。電化製品の類いはなく、簡素な家具が置かれている。
ゆっくりとベッドから立ち上がり部屋に一つだけある窓から外を見る。前にも見た景色だ。ビルなどはなく木造の家が建ち並んでいる。朝の仕事をしている住人に人間以外の種族も混じっている。近くでは金髪の少女が何やら農作業をしていた。
なぜだか、ここは日本じゃないし夢でもないということがすぐに理解できた。あんなに重かった頭もスッキリし、あり得ないくらいに気持ちが穏やかだった。
「あぁ、夢じゃなかったんだな。ムルステ村だっけか。異世界転生ものだと、魔王みたいなものを倒すのがデフォルトか……。まずは情報収集だな」
窓を開け、近くにいた金髪少女に声をかける。
「おーい。話をききたいんだが、ちょっといいか?」
金髪少女は俺の声に気づき、こちらを振り向くが慌ててそっぽをむいてしまう。
「無視するなよ。ちょっと話を聞きたいだけだって」
金髪少女はこちらを向かないまま叫ぶ。
「は、話は聞きますがっ、そ、その前に服を着てくださいっ!!」
俺は素っ裸だった。
「おおぉ!」
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