第8話 しつこいザロちゃん

 教会の居住スペースにある食堂のような場所で、俺とザロモン司祭、アーシェが椅子に腰をかけていた。


「ふ、服が汚れてたので、せ、洗濯をしたくて……見ていませんからねっ!」


 アーシェが聞いてもいないのに顔を真っ赤にして喋り出す。まさか、お前が脱がせたのか?


「昨夜は燃えたのぉ。やっぱり若い身体はええのぉ」


 おぇぇ。あんたかよ……


 盛大に溜息を吐いて、ザロモン司祭を見やる。なんともいやらしい表情だ。


「で、ザロモン司祭。俺は倒れたのか?よく覚えてないんだが……」


 途端にザロモン司祭の表情が険しくなる。司祭というくらいだから偉い人だろうし、ちょっと馴れ馴れしかったか?


「ザロちゃんじゃ!」


「えっ!そこ!?」


 めんどくせぇ……


「じゃぁ……ザ、ザロちゃん。教えてくれ」


 屈辱に耐えながら呼ぶと、嬉しそうにニコニコしている。脳内ではじじいで確定だ。アーシェも溜息を吐く。


「ミッちゃんはのぉ……デンワがどうのと話した後アーシェに抱きついたんじゃ。で、丸一日裸で寝とった」


「はい?」


 抱きついた?まじか……あの時は頭が重くて、目の前に金髪少女がいて、それで……確認するようにアーシェのほうを見る。歳は15か16かな?よく見ると物凄く可愛いが、法律的にアウトか?異世界だからセーフか?いやいや、人間としてアウトだろう。と、更に混乱してしまう。


「セーフじゃ!」


 と、俺の考えを見透かしたようにじじいが言う。いや、アウトだろう。


「し、司祭様!な、何を言ってるんですかっ!全然違うじゃないですかっ!話をややこしくしないでくださいっ!」


 また、じじいの表情が険しくなる。


「ザロちゃんじゃ!」


 アーシェはまたもや盛大に溜息を吐き状況を喋り出す。この絡みいつもやってるのか。少し同情する。


「はぁ……。昨日、あなたは会話の途中で急に頭を押さえて倒れたんです。わ、私の上に……。その後は司祭様のおっしゃる通り丸一日寝ていました。少しうなされていましたが……」


「何か言っていたか?」


「えーっと……、悔しいとか、どこかに行きたいというような内容でしたが……、あの……泣いてました」


 起きたときと一緒か……あんまり夢は覚えてないが丸一日泣いてるとか、やっぱりネトゲの事を引きずってたのか。


「今日はずいぶんと落ち着いてらっしゃいますね。昨日とは別人みたいです」


「あぁ、よく寝たからかな?スッキリしてる。昨日は夢だと思ってたし、ちょっと混乱してた。お前も昨日とはずいぶん違うな」


「昨日はビックリして取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。それと、お前と呼ばれるのは好きではありません」


「呼ぶとしたらアーちゃんかのぉ」


 黙っていたじじいが燃料を投下する。


「ア、アーシェで結構です!」


「そ、そうか。じゃぁ、本題なんだけど、昨日も言ったと思うんだけど、俺は、たぶんこの世界にはない日本って所にいて普通に眠ったはずなんだけど、起きたら棺桶の中だったんだ。なんで、俺が棺桶に入ってたのかハッキリしないんだけど……他の世界から人が来たり、召喚するような魔法とかあったりするもんなの?」


 二人とも答えることができないが、じじいは何やら上を向いて考えているようだ。


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