懐古

あのまんま、ずっとずっと遠くまで通り過ぎていくはずだった。


アイスクリームは溶けないし、雲は流れないし、葉っぱが枯れて落ちることもなかった。


月の裏側も、この世の果ても、海も空もなにもかもが混ざってしまえばよかった。

なにもかもが混ざって、一つになっていたら。そうなってたら、わたしは遠くまで行けたのに。


生ゴミもアルバムも思い出もぜんぶ火曜の燃えるゴミの日に捨ててしまった。


それでも、何も止まらない。

始まってしまう。終わりがない。


アイスクリームは溶けてしまったし、雲は季節と一緒に何度も流れたし、葉っぱだってたくさんの色に何度も何度も変わっていった。


この世の果てはどこまで続いているし、月の裏側も表だかなんだかわからないまま。


どうしても、なにをやってもわたしは遠くに行けなかった。

それでも、きっと。

いつか、アイスクリームが溶けなくなるその日まで。

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