放課後:教師たちの休息(断片章2・終)

 災害派遣の支援から学校へと帰還したロゼルは、フェルシアの研究室で談笑していた。

「それにしても、今回も随分と無茶したものね」

 フェルシアは、自前で用意した紅茶に口を付けて、溜め息を吐いた。

「いやまさか、こんなにも早く狂乱妖精と遭遇するなんて思わなかったから。でも仮契約の負担は大きいねぇ……。帰りに全身の筋肉痛を誤魔化すのは苦労したよ」

 同じように紅茶を口にしたロゼルは、一切の誤魔化しをすることなく苦笑を浮かべた。

「まったく……。通常、仮契約には相応の対価が要求されるから、魔力だけで対価を支払ったら、普通は動くのも困難になるほど消耗するのよ? 貴方だったから筋肉痛だけで済んでるけど。全く呆れた魔力量だわ」

 心底呆れた様子で口にするフェルシアに、ロゼルは優しく微笑みを向けた。

「有難う、心配してくれて。まあ、あんな状況でもなきゃ、そうそう無茶しないさ」

「そうしてちょうだい。ところで。その経験、今度の授業で使って良いかしら?」

「え? 別に構わないけど、何でまた?」

「ほら、ちょうど精霊学と妖精学の大詰めでしょう? 契約魔術についての話もしておかないといけないから」

「ああ、そう言う。是非使っておくれ。貴重な実例だし。人間だけが四属性の契約魔術を行使できる話にも繋がるだろうし」

「そうね。人間以外のヒト種族は、一つの属性に強く祝福されているから、仮契約も本契約も、その属性でしかできないって話は、当人以外には余り知られていないから」

 そう言うと、フェルシアは手近の本棚から一冊の研究書を手に取ると、ぺらぺらと捲り始めた。

「風の精霊に祝福を受けたエルフ。土の精霊に祝福を受けたドヴェルグ。水の精霊に祝福を受けたマーマイン。火の精霊に祝福を受けたサラマンデラ。そして、それぞれの秘奥義とも言うべき最上級属性術式を使えるのも、これらの種族だけ」

「そして天の精霊を司る神族ことアールヴと、魔の精霊を司る魔族ことシェイドルか。不思議よね。何で人間は、属性が偏らなかったのかな?」

「さあね。造物主って言える存在にでも聞かないと、分からないんじゃないかしら」

「造物主か。居たら聞いてみたいね。まあ、それはともかく。授業で使う件については了解。こっちの授業でも、精霊とか妖精の話をしても良いかな?」

 ロゼルもまた、手近にあった本を手に取って、ぺらぺらとめくる。

「もちろん。属性の話は避けては通れないし、別の授業でそこら辺を勉強できたなら、こっちも楽になるから」

「了解了解。さあ。なら明日はどう言う授業をしようかしらねー」

 そのような話を交わしながら、二人はそれぞれの時間を楽しむのだった。

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究極魔女の魔法教室 ~私の魔術のつかいかた~ ラウンド @round889

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