第9話 反抗運命
「まぁこんな感じだアツキ」
「こんな感じって僕が居ない間に話進みすぎでしょ」
「確かにな。けど俺らにはもうやる事はねーよ」
「え?何言ってるんですか?戦わないんですか?」
「何で戦う必要があるんだ?隕石で死ぬか。少し早くなるが、電磁波で死ぬか。それはこの世界の人間が決める話だろ。俺らが首を突っ込むもんじゃねーよ」
「そんな。光やマリアさんは……」
アツキ言葉を詰まらせた。
何て聞けば良いんだろう?隕石で死にたいか電磁波で死にたいかなんて聞けない。せっかく新しい仲間が出来たのに、この世界の人間は確実に死ぬなんてどうしたら。
「まぁ俺らは一旦宿でゆっくりしてから帰る事にするわ。ただ一言言うなら、光が好きな方を選べ。そして助けが必要になったらいつでも呼べ。それだけだ」
竜真はそう言い光の家から出て行った。
「光に出会えてよかった。まさかこんな結末なんて」
「光ちゃん。光ちゃんの事は絶対に忘れないから」
アツキと風舞希も一言光に言い、家から出て行った。
「光。私達はどうする?」
マリアの質問に答えない光。「光?」
「そんなの分かんないよ。どうせ私達は皆死ぬんだし。それで死に方を選ぶなんて私には出来ないよ」パチン。「え?」
マリアは光をビンタした。
「貴方それでも私とあの人の子供?それでも剣士?情けないよ。今のままじゃ竜真さん達にもお父さんにも顔向け出来ないよ」
「でも死に方をなんて選べないよ」
「でもじゃない。選ぶしかないのよ。それに竜真さん達はもっと辛いよ?私達は死ねばそれで終わりだけど竜真さん達は生きていれば私達を思ってずっと苦しむと思う。それに死に方を選ぶって言うのとは少し違う。楽に美しくは死ねないけどその代わりに少しだけ生きる時間が増えるのと、楽に美しく死ねる代わりに早く死ぬの。そう考えて選ぼ?」
光は頭を下げて深く考える。
どうしよう。確かに出来ることならば少しでも生きたいって思うけど、でもそのためには皇帝を倒し、あの機械を止めらなければならないし。
戦いの途中で命を落とす事もあるうる。私はどうしたい?私はこの世界が好きだ。そして少しでもこの世界を見ていたい。
「お母さん。決めたよ。私は生きる」と強めに言う光。死ぬと決まっているのに生きると言った光。
「それでこそ光だわ。私の子供でありがとう」
マリアは涙を流しながら言った。
その頃宿では。
「もし光が楽に死ねる事を選んだとしたら、僕らに出来ることはこの世界から潔く帰ることで。もし光が少しでも生きたいって思っても、この世界の人間が楽に死にたいって思ったら僕らのしている事は悪」
「あぁー確かに。俺らのした事が救いになる人間が居る代わりに余計な事をと思う人間も居る」
「私達は正義の味方?それとも悪の味方?」
「それは人によるだろ。結局正義と悪の違いなんて、自分と考えが同じなら正義。違うなら悪。ただそれだけだ」
「そうですね。ならば僕達は僕達のやりたい事をするだけですね」
「そうだよね。私達は光ちゃんの仲間で、光ちゃんを幸せにする」
「あぁ。それが光に取って迷惑でもそうじゃなくとも俺達は。自分が正しいと思う事をするだけだ」「うん」
こっちも決心着いた。
「ミッションは皇帝をぶっ殺して、あの機械を止め、この世界を隕石で沈める事」
「まるで悪役みたいに話しますね」
「私達は生きたい派から見れば正義だけど、楽に死にたい派から見れば悪その物だからね」
「よし。お前ら覚悟は決まったな」「うん」「はい」
竜真達は立ち上がり、光の家に向かう準備をした。光とマリアも竜真達の宿に向かおうとしていた。
「お母さん。私、竜真さん達を呼んでくる」
風舞希が家の扉を開け、一歩出たその時。家が光だし、同時に大爆発が起きた。光は爆風に飛ばさた。
「何が起きたの…」
家が炎に包まれ、燃えて行く。「お母さん」
光は家にマリアが残っている事を思い出し、体をお越し、燃えている家に乗り込んだ。家の中に入ると、マリアが火傷を負って倒れていた。この場合生きているのも奇跡だ。
「光…」「お母さん。肩掴まって」
光はマリアに肩を貸し、家から出ようとした。しかし光も爆風を食らっているので、体が思うように動かない。
「光。私はもう」
「何言ってるの。しっかりその時まで生きるの。こんな所で死なせない」
光はマリアを一緒に家を何とか出れた。しかし。
「終わりだ。諦めろ」
既に光達を囲むように太陽の様なマークを刻まれた刀持つ皇帝の兵士達が待っていた。光はマリアを座らせ刀を抜く。
「この人数相手に戦う気か?」
「それしか無いから」「フン」
兵士達は光に襲い掛かる。
光は一人で大勢相手に怯まず戦っていた。それ所か光はどんどん人を斬り倒して行く。
「相手はたったは一人だぞ」
光相手に歯が立たない一行。しかし光も体の動きが鈍くなっていた。
「ハァハァハァハァ。苦」
どうする?このままじゃ私も動けなくなる。今ならまだ逃げれるけど、お母さんと一緒にだと逃げるのは難しいか…。
「光。私を置いて逃げて」
「そんな事しない。必ず生かす」
兵士が光に斬り掛かる。その時。キン。剣と剣がぶつかる音が響く。
「まだ諦めるのは早いぞ」
「レン!」レンが助けに来たのだ。
「急に爆発音が聞こえたから向かってみたらこれだ。なんだこいつらは」
「後で全部話すから、今は手を貸して」
レンは頷き、兵士を斬る。それでも次々に兵士が出て来てキリがない。
「なんだよこいつらは」
「ハァハァハァ。数が多すぎる」「光!」
光の隙を突いて、斬りに来る兵士。
光は終わったと思った。しかし光の目に写ったのは、レンだった。レンが光を斬りに来た兵士の剣を防いだのだ。しかし他の兵士に蹴りをされ飛ばされ、気を失ってしまった。
「さて。いよいよ終わりだな」
「まだ終わらねー」
その聞き覚えのある声に光の目にまさしく光が宿った。
「まったく人がせっかく助けにしたのに、早くも諦めモードか?」
「こんな所で勝手に死なないで」
「ヒーローは遅れて来るってまさしくこの事だね」竜真達が土壇場で助けに来たのだ。
「俺らは俺らの意思で、お前らに少しでも生きて欲しいって思うから来たんだぜ?お前が今更死にたいって思っても、絶対に死なせねーよ」
「竜真さん。それに皆」
「まぁそんな訳だからよ光」
竜真達3人は刀を抜いて
「助太刀致すぜ」と言い、斬り掛かった。
「こいつらを全員殺せ」
「おいおい。命令ばかりしてないでお前も戦えよ」「何!」
竜真は指揮官を先に討ち取った。竜真達の登場により、兵士達の数がどんどん減って行く。
「バ、化け物だ」
「あんなのには勝てねー」
恐れた兵士が次々に逃げて行き、どうにかこの場を凌いだ。
「大丈夫か?」
「うん。その。えっと~。ありがと」と照れながら光はお礼を言った。
「ツンデレだ」「ツンデレだ」「ツンデレだ」「うるさい」
そんな会話をしている皆を見て、壁に持たれ掛かりながら笑うマリア。
「うふふふ。ゴホ。ゴホ。ゴホン」
「大丈夫?お母さん」
「私は平気。光も立派になったって思って」「お母さん」
そんな親子愛を見せられ、竜真達もほのぼのしていた。
「そう言えばレン君は?」
「レンならあそこに」
あれ?居ない。
「レンも居たの?」
「うん。私と一緒に戦ってくれて、あそこで倒れてたんだけど」
「助けを呼びにでも行ったんじゃねーか?」
「でもレンの両親はブランドタワーで働いていて…」
この時、その場に居た全員が凍りついた。
「まさかレンは」
一人の男が急に現れ、光目掛けて背後から刀で殺しに走った。
「光!」竜真はいち早く気付き、光の方へ走る。
しかしその男はもう光のすぐ後ろまで来ていた。竜真に叫ばれた光が後ろを向く。自分を殺しに来ていたのはあのレンだった。レンは力一杯に剣を突き刺した。
刺される寸前、光の視界に人の影が入り込む。目を開けた光は、刀の刺さったマリアを見る。
「光」そう言い、マリアは倒れた。
「お母さん!」
光はマリアを仰向けにして頭を支える。
「テメー!」
「あ~あ。殺り逃しちゃったな。でも良いか。母を殺せたから」
「レン。何でテメーが光を殺そうとした?幼馴染みだろ」
「両親から頼まれたからだよ。俺両親、ずっと家に帰って来ない人間で、子供の俺の事なんて見てくれなかった。そんな両親が光を殺しなら認めてやるって言ってくれた。ならやるしかねーだろ?」
「このクズが」
「どうせ人間は死ぬ。ただそれが早まっただけさ」
レンはそう言いながらブランドタワーの方角へ行ってしまった。
「あの野郎」「お母さん!!」
レンを追い掛けようとした一行だが、光の母を呼ぶ声でマリアの元に行く。
「竜真さん。お母さんが」
「血が酷い。風舞希何か布か何かないか!」
「これ使って」光はタオルを渡す。
竜真はタオルを刺された所に当て、血を押さえようとするが、出血が止まらない。
「お母さんお母さん!!しっかりして」光は涙目になりながら叫ぶ。
「竜真さん。光を連れて皇帝の所へ」
「何言ってんだ。お前は光と未来を生きると決めたんだろ。こんな所で諦めてんじゃね」
「私はもう駄目。私はもう。自分の体が駄目なのは分かるって言うけど、本当に分かるのね」
「駄目!お母さん。私にはお母さんが居ないと駄目だよ~。死んじゃ嫌だよ~」
光は泣き叫びながらマリアに言う。
「もう時間が無い。だから早く皇帝の所へ。今の私にならあの人の気持ちが分かるわ。あの人は皇帝の秘密を見つけて、広めようとしたせいで殺された」「え?」
「あの人は自分の死んでいる所なんて見せたくないと思ったから飲んでたのかしら?」
そう言いマリアさんの体が光だし、光の玉が少しずつ空へ飛んで行く。
「お母さんまさか」
「娘に自分の無様な所なんて見せれる訳無いじゃない。竜真さん光をお願いね」
「あぁ任せろ」竜真はマリアの手を握る。
「アツキ君と風舞希ちゃん。光とこれからも友達で居てくれる?」
「当然です」「一緒友達で親友だよ」泣きながらアツキと風舞希もマリアの手を握る。
「光。貴方が本当に私の子供で良かった。私は貴方を幸せに出来たかは分からないけど、それでも貴方は私より生きて欲しい」マリアは光の頬を触りながら言う。
「私は幸せで、でもそれはお母さんが居たからだよ」
「まさか最後にこんな嬉しい気分に包まれるなんてね。貴方は光。私達の光」
マリアさんの体がより光り、光の玉が空へと飛んで行く。
「待って!行かないでお母さん」
マリアは光の涙を拭う。「光。大きくなったわね」
そう最後に言い残し、マリアさんは消えていった。光は下を向き、ただひたすらに泣く。アツキも涙をこらえていたが、瞳からは涙が溢れる。
風舞希は下を向き、口を抑え泣いている。
マリアさんの着けていたネックレスがチャリーンと音を立てて落ちる。
なんて悲しいのだろう。これが大切な人を失う気持ち。いや光はこんなレベルの悲しさじゃないだろうな。
「許せねー。皇帝の野郎をぶっ殺す」
「訳は分からねーがあのカスをを地に落としてやる」
後ろからの声に慌てて振り返ると、そこにはいつの間にかたくさんの人が居た。街の住人だ。この人達もまた、マリアさんや光にお世話になっている人達だ。
「マリアさんの仇は取ってやる。だから光も立て」
「そうだ光。俺らが認めた剣士の力を見せてやれ」
住民達が光を励ます。光は下を向いたまま泣いている。しかしその背中からは消える事の無い光が見えてきた。
「光」「光」「光」「光」「光」それに続いて僕達も。
「光」「光」「光ちゃん」
光は「うん」と頷き、母のネックレスを握って立ち上がる。そして手に握りしめたネックレスを自分の首に着けた。
「スーーー。ん!」光は思いっきり息を吸い、気合いを入れた。
竜真さんが手の平を下にして手を前に出す。それに続いて僕と風舞希も竜真さんの手に自分の手を重ねる。そして光は一歩ずつ、母との思い出を思いながら近付いて、僕らの重ねた手に自分の手を重ねた。
「良い面になったな光」
「うん。私はもう迷わない」
「フン。今回のミッションは皇帝を討ち取り、安楽死計画を止める事。そしてこの世界の時間を守る事」
「はい」「うん」「うん」
正しく一致団結。この言葉がこの場に置いて一番似合うと僕は思う。皆がそれぞれやりたいようにやる。それがたまたま一緒でこうして手を取り合って戦う。僕は奇跡の一部に過ぎないのかも知れない。僕達は急いでブランドタワーへ向かった。
「失礼します」「どうした?」「皇帝。大変な事が起きました。鍛冶屋の母を討ち取りには成功したのですが、街の住人が武器を持ってこちらに向かっていると情報が入りました」
「そうか。そんなに死にたいか。ならば全員殺せ。私達の死を邪魔する者は誰一人として許さん」「はっ!」
辛い思いまでして、たった少しの時間が欲しいか。面白い。私からお前達の時間を奪って見せろ。
竜真達はブランドタワー正面入り口の前に居た。しかしすでに兵士達は凄い人数でブランドタワーを守っていた。
「そう簡単には行かせてくれませんね」
「こんなに斬ったらすぐレッドになっちゃうよ」
「でもそれが俺達の色じゃねーか。光?大丈夫か?」
「うん。お母さんが生きようと、私に生きて欲しかった時間を私は生きる。皆剣を抜いて!私達はこれから誰かの為でなく自分の為にその剣を振るう。突撃」
光の合図と同時に僕達は足を前へ前へ踏み出した。まさしく戦の開始だ。しかしこれを戦と言って良いのだろうか?圧倒的な戦力差だ。しかし数は負けてようと、決意の力は負けやしない。僕らは侍。己のルールの為に剣を振るう人間だ。
「何人で斬り掛かって来ようと今の私は斬れない」
今の私は一人じゃない。大切な仲間達が居る。そして私にはお母さんが居る。
「絶好調だね光ちゃん。私も負けてられない。その身を持って刻まれるが良い。私の剣技風刀。デスハリケーン」
風舞希はクルクル回り、砂煙を上げながら兵士達を空中へ飛ばして行く。
「ちょ、お前やめろよ!この世界観必殺技とか無いから。考えるの面倒くさいから無いから」
「あんたもカミングアウトし過ぎだろ」「うふふふふ」
そんな会話を聞いていた光は戦っているのに笑った。
「ホント貴方達は、そこが戦場だろうとやる事は変わらないのね」
「そりゃそうだろうよ。そしてそれはお前も一緒だろ?光」
「うん。私も皆に出会って、汚い色に染まったみたい」
所詮寄せ集めの兵士など、竜真達の相手にはならなかった。しかし街の住人達はどうなのかと言うと、それなりに強かった。なぜならブランドタワーで普段から鍛えている人間が多かったからだ。
「こいつらただの住民の分際で」
「住民もクソもあるかってんだ。強い奴が行き、弱い奴は死ぬ。ただそれだけだ」「クソ共が」
住民民達も、剣や盾を駆使して敵を翻弄する。しかし未だにブランドタワーに乗り込めていない理由はやはり圧倒的な戦力差だ。
「坂本さんって言ったか?このままじゃ消耗戦になる。そうなったら俺らに勝ち目は無い」
「あんたは、あの時の医者か!」
「そうだ。医者が人傷付けるとは時代も変わったもんだぜ。坂本さんよ。今なら奴等の隙を見て、突破する事が出来る。しかし陣形が整ってしまったらもう突破は難しい。まだ整っていない今なら、あんた達だけでも行けるぜ」
「ここは俺らには任せて先に行け」
「お前にはやるべき仕事があるだろ」「テメーら」
竜真は一言「頼んだ」と言い。「アツキ!風舞希!光!俺に着いてこい」と叫び、数が少ない所から突破し、ブランドタワーへ乗り込んだ。
「待て」「お前の相手は俺らだろ」住民達が中に兵士が入ってこない様に外で戦ってくれている。そのおかげで僕らを追ってくる兵士は居なかった。
「まったくこの世界の人間はマリアにしても俺らに期待しすぎたろ」
「でもそれだけ頼られてる証拠ですよ」
「あぁそうだな」
「光ちゃんこの先はどっち?」
「右がエレベーターだけど恐らく」
「使えないだろうな。ならもう一つは」「階段」
この高すぎるビルを下るのか?上るのか?出来れば下りたい。下りの方が辛いって言う人も居るけど僕は上りの方がきつい。
「で皇帝はどこに居るんだろう?」
「あのアンブレラの研究所は?」
「だからお前はゲームと現実を区別しろ」
「研究所じゃないですか?そこに結晶石があったんですよね?ならそこに」
「いや違うと思う。皇帝が居るとしたら最上階のコンソール施設。そこからならブランドタワーのシステムを全てが扱えるから」
「なら上るしかないようだな」
僕らはとにかく走って上った。しかし5、6階上る度にフロアを端から端からまで走りまた上らなければならないのだ。これはテレビ局などの様にテロ対策なのだ。僕らは正しくテロリストだ。
「止まれ」竜真に言われ、階段の途中で止まる。もう既に相当な高さの所まで来ていた。その理由はここまで来るのに敵が一切出て来なかったからだ。しかしこの階はどうやら敵が居る感じがする。今僕らが居るのは階段を上がり、反対側まで行かなくてはならない所だ。しかしフロアに敵が居るので階段で止まっている状況だ。
「どうしますか?こんな所で時間を潰す訳には」「しょうがないな」風舞希が立ち上がる。
「アッキー。私達でやるよ」
「僕たちで?」
「うん。どうせコンソールまではあと少しだし。それに敵の狙いは時間を稼いで、電磁波のエネルギーのチャージを完了する事。なら私達がここで戦わないと」
「なら仕方ないか」
僕も立ち上がり剣を抜く。
「竜真さん光。しっかり勝って来て下さいね」
「光ちゃん。絶対光ちゃんの時間を守るから。だから竜ちゃんと一緒に先に行って」
「お前らも少しは頼りになるようになったな」
「アツキ風舞希。ありがとう」
「じゃー行くよー。3、2、1、GO」
その合図と同時に一斉にフロアに飛び出す。僕と風舞希が前を走り、後ろからの竜真さんと光が着いてくる。
「はーーーーー!」アツキと風舞希で敵を倒し通路を作る。
竜真達は最小限の敵を倒しながら、反対側の階段にたどり着き、上って行った。
「なんとか送れた」
「そうだね。でもこの人数にたった二人で残されるって考えてなかった」
「二人じゃないよ。僕達の刀にはたくさんの人の思いが詰まっている。こんな人数に大した事無いよ」
「アッキーは格好付けすぎなんだよね~。まぁアッキーの言葉自体は理解できたけど」
「ならそれだけで充分だよ。竜真さん達は先に進み、下では皆が戦ってくれている。なら僕達はここでやるしかないよ」
「殺るしかないか。その通りだね。殺るしかない」
「僕のやるはやる事をやるだから。そんな物騒な漢字じゃないから」
「テメーらさっきから何ペラペラ話してんだ」
襲い掛かって来た3人を一瞬で斬り、アツキと風舞希は背中を合わせ
「話している最中は斬り掛からないのがルールだろ」
「ホントにルール位守ってよね」二人はニッコリ笑った。
竜真達は階段を上り、敵を倒しながらフロアを移動し、最上階の一階下まで来ていた。そのフロアの番人はあの男だった。
「レン。良くもまぁ俺達の前に顔を出せたもんだぜ」
「何回だって出してやるぜ。でもこれで最後だ。お前らは俺に殺され、俺達は電磁波で皆死ぬ」
「レン。レンは何で太陽のマークが入った組織何かに入ったの?親に言われたから?それとも自分の意思で?」光はレンに問う。
「太陽のマーク。はっはっはっ。光は勘違いをしてるよ。これは太陽じゃなくて隕石を表しているんだ」
「なるほどそういう訳か」
「それにこの組織に入ったのは自分の意思だ。どうせ死ぬのなら楽に死にたい。例えそれが少し早く死ぬ事になったとしても」
「そう。良かった。これでレンと本気で殺り合える。竜真さんここは私に任せて」
「おいおい。先に行かせるとでも」レンは剣を抜く。
「行かせる」光はレンの所まで飛び付き、レンの剣に自分の剣をぶつける。
「竜真さん。今の内に」
竜真は光がレンを止めている内に最上階へ向かった。
「確かに光ならあの男を最上階まで行かせる事は出来たかもしれない。けど光は俺に勝てるのか?」
「勝つよ。絶対に」
光は父親に習ってきた剣を全て出してレンと戦う。それは技術面だけで無く、精神面でもレンと戦うと決めた。そしてレンと光の命の取り合いが始まった。
レンの止まらない連撃を避けるか捌く光。光はレンの速度に何とか食らい付き、リズムを合わせる。
「俺のリズムに合わせて、俺を狂わそうとしても無駄だぜ?なぜなら俺は」
レンの速度が急に速くなり、光が一歩遅れる。光は慌てて、追い付こうと速度を上げるがレンの速度はスローになっていて、光はレンの速度を越えてしまう。そのガラ空きのお腹にレンは柄をぶつけ光を飛ばした。「グハッ」
レン。やっぱり貴方と私の相性は最悪。相手のリズムに合わせて、相手を狂わす私のスタイルはレンには通用しない。何故ならレンのリズムは、そもそも一定じゃない。常にスピードに緩急があり、リズムが一定にはならないから、私がレンに引っ張られる。勝つ為にはどうしたら。
その頃既に最上階に到着していた竜真はそこで皇帝を見つける。
「やはりここに到達するのは貴方ですか。坂本竜真さん」
「よう皇帝さん。会いに来てやったぜ」
「出来れば貴方の顔はもう見たくなかった。でもここまで来たからにはこの私が直々に君の時間を奪ってやる」
「残念だがお前は奪えねーよ。俺の。いや俺達の時間は誰にも」
竜真がファーストアタックを仕掛ける。
「無駄だ」皇帝は竜真の鬼の様な連続攻撃を全て先読みして避ける。
皇帝は止まらない竜真の剣を避けながら度々に攻撃をする。竜真はそれを避けず、全て当たる。しかしそれでも竜真は手を止めない。腹を殴られても、剣で斬られても攻撃を続ける。
さすが龍の器だな。
私の攻撃を受けてはいるが、全て致命的なダメージにはさせていない。特に剣で斬り掛かると、スピードが格段と上がる。そのせいで私の剣は掠りしかしない。ならばその事すら読めば良いだけだ。
皇帝はより目を使う。
次の攻撃はバックステップしながら剣を横に振る。その振り終わりの左肩を刺す。
皇帝の予想通り、竜真はバックステップをして刀を横に振る。皇帝は姿勢を低くし、それを避ける。そしてその振り終わりを狙って皇帝は下から上向け、剣を突く。
これで終わりだ坂本。
皇帝の剣が竜真の肩に近付く。皇帝は勝ちを確信する。しかし皇帝は気付く、竜真の目がこちらを見ている事に。
な!?皇帝は慌てて剣を止め、一気に後ろに飛んだ。
そんな皇帝に竜真は「おいどうした?」
何が起こった?今確実に私が坂本の肩を捉えるハズだった。なのに私は途中で攻撃を止め、距離を取ってしまった。私は無意識に思ってしまった。今攻撃したら返り討ちになる未来が見えてしまった。
「坂本お前今何をした?」
「は?何もしちゃいねーよ。ただお前が逃げただけだろ」「フン」
皇帝は竜真に攻撃を仕掛ける。
傍から見ると先ほどと状況は何一つ変わらないのだが。水面下では皇帝が追い詰められていた。
どうなっている。今攻撃しているのは私だぞ。なのに何故私は一太刀一太刀に恐怖を感じる?坂本は手を出していないのに何故。常にカウンターが来るのが見えてしまう。
「お前の目は結構当てにならねーな」
竜真がここで初めて皇帝に読めなかった刀を振るう。皇帝はそれを慌てて防ぎ、力で押し合う。
「お前の目は確かに未来が見えるのかも知れねーが、戦いはそれだけじゃ勝てやしない。未来を見て。過去も見て。そして今を見る。全てを見ないと勝てない。お前は未来がより鮮明に見え過ぎてそれしかやっていない」
「そんな訳があるか。私の目は結果だけを見る。破綻などありえない」
「だが現実はそうみたいだぜ。俺の目はお前みたく何でも見えはしねーが。動きを予測して、今を見て、そして過去の動きから予測をする。それが戦いだ」
「冒険者の分際で」
竜真と皇帝が剣と剣をぶつけながら、力で押し合っていると。
「くっくっくっくっ。面白い。皇帝。あんた追い詰められてんじゃねーか?」
その聞き覚えのある声に竜真は慌てて皇帝から離れ、声がする方を向く。
「お、お前は」
「くっくっくっくっ。久し振りだな~竜」
「今井。こんな所まで何しに来た」
「おいおい久し振りに昔の知り合いに会ったって言うのに、いきなり本題に入ろうとするな。くっくっくっくっ」
「お前こそくっくっくうるせーんだよ。黄色いカエルかおい」
「誰が○○○曹長だ。くっくっくっくっ」
「それを止めろって言ってんだよ!」
そこに居たのは今井礼侍。
今井は腰に二本の刀を差した二刀流使いだ。
「で何でお前がここに居るんだ?」
「それは安楽死装置を俺が作ってやったからだ」
「お前が黒幕だったって事か」
「くっくっくっくっ。そうでも無いぜ。俺はある時皇帝に出会ってな。それで装置を作って欲しいと頼まれたもんで作っただけだ」
「お前は昔からふざけた物を作るのが得意だよな。今回もお前がこんな物を作らなければ」
「それは知ったこっちゃない。俺は金が出ればどんな物でも作るのが俺のルールだ。そんな事より竜。今この状況、ピンチなのはおまえじゃねーか?なぜ俺が来たのか…」
今井が二本の刀を抜く。
竜真は今井からの殺気を感じ取る。
「フッ」今井に気がいっている竜真に皇帝が斬り掛かった。竜真は慌ててガードをする。
「クソ。お前も来るのかよ」
「当然だ。そしてそれは」
皇帝は今井の方を見る。釣られる様に竜真も今井を見る。今井は皇帝と押し合っている竜真に斬り掛かった。
ふざけやがって。この状況でお前まで来たら相手に出来ねーぞ。風舞希かアツキは?いやあいつらには今井の相手はまだ無理だ。もし今井の相手を出来る奴が居るとするならば。
現在もの凄い速さで階段を上ってくる人間が居た。その速度は下で戦っている光とレンが気付かないレベルの速さだ。
「今の何?」「さぁ~?そんな事より」「そうだね」
その何かは今井から竜真を守る。今井はいきなり目の前に現れた人間に驚く。
「お前は…日咲」「久し振りね今井礼侍」
日咲は今井を弾き飛ばす。
「日咲。お前良くここが分かったな」
「まったく貴方ったら連絡の一つも無いんだから。おかげで遠回りだったわ。でももう大丈夫。ここからは新撰組も助太刀するから」
回想~「この世界の皇帝が黒幕とはね」
「まったく竜真も連絡の一つでも寄越しなさいっての」
「そうですよ。でもおかけで色んな世界のお菓子を食べれたから良いですけど」
「まぁまぁ旦那も何とか持ち堪えてるみたいだし良いじゃないっすか」
「さてこれからブランドタワーに乗り込むけど。話によると民間人も戦っているみたいだわ。だから私達は民間人を守りながら、皇帝を討ち取る事。では新撰組前進」
日咲の掛け声で、ブランドタワーへ向かう新撰組一行。そしてブランドタワー入り口で民間人が戦っているのを見つけ、援護に入る。
「あんた達は一体?いや、この状況そんな物は関係ないか。援護してくれるなら誰でも構いやしないか」
「中々肝が座ってるっすね」
外は人数が多いわね。それに情報によると、この世界の全兵士がこの場所に向かってる。それまでに何とかしないとまずい事になるわね。
「隙が出来た人は中に入って!新撰組はそれの援護を」「了解」
新撰組は民間人を援護し、どんどん中へ入れていく。ほとんどの民間人を中へ避難させ、中で民間人と新撰組隊士の連合で兵士と戦う。外では新撰組隊士の一部と幹部達が戦っている。
「しょうがないですね~」
一星がやれやれとした口調で言い出した。
「ここは私に任せて、皆に行って良いですよ?このままじゃてっぺんに着く時間が掛かってしまいます。なら私が一人でここを止めて、中で月菜と真二。てっぺんに日咲。これなら隕石が落ちるまでにケリを付けれます」
「そういう事っすよ。ここは俺達二人に任せて下さいっす」
「真二。何格好つけてるんですか?ここは私に」
「それはこっちの台詞っすよ。二人ならそれだけ早く奴等を倒せるっす」
「真二」
「早く中に行って下さいっす」
「分かったわ。ここは二人に任せるわ」
一星と真二以外の新撰組隊士はブランドタワーの中へと入っていった。
「お前ら何のつもりだ?」
「いやいや。そんなの見れば分かるっしょ?お前達なんて何人居ようが俺達二人だけで十分っすよ」
「その通りですね。これから援軍もたくさん来るみたいですが私達二人が居れば、勝つ事なんて簡単です」
真二と一星はたった二人で、大人数を相手に剣を振るった。おかげでこうして日咲が皇帝の所に来れたのだ。
「くっくっくっくっ。お前までここに来るとはな。これで2対2になった訳か」
「竜。今井の相手は私がするから。そっちは任せる」
「くっくっくっくっ。お前が俺の相手をするのか?」
「相変わらず悪趣味な笑い方するわね。私じゃ不満?」
「いやそんな事は無い。ただ面白い」
「それは私も」
竜真と皇帝。日咲と今井。それぞれの戦いが今始まった。
日咲の超高速の剣を二刀流で防ぎ、同時に攻撃をする今井。いくらスピードがある日咲でも二本の刀を持つ人間を相手にするのは苦しさが見える。
相変わらず気持ち悪い攻撃ね。二刀流ならではの不規則なリズムに、二刀流でしか作り出す事が出来ない攻撃のタイミング。一本しか持たない人間からすると中々辛いわ。でも一番の問題なのはその二本の刀を持っているのがこの男って事ね。今はまだ私のスピードで補っているけど、このまま続くと不利だわ。
「どうした?捌くのが精一杯か?」
「バカに」日咲はスピードを上げ、斬り掛かる。「しないで」日咲の剣が今井の頬を掠める
「やるな~。なら俺も」
今井の2連続斬りが日咲の肩を掠める。日咲は慌てて後ろに下がり、距離を取るが今井は日咲を逃さない。今井はその二本の刀で斬り続ける。何とか日咲は捌いてはいるが、体に傷が刻まれていき、息も切れていく。
「どうした?新撰組に居る間に弱くなったんじゃねーか?くっくっくっくっ。面白い」
今井の刀が日咲の肩を突き刺した。
「くっくっくっくっ。この程度か」
「うぅっ」日咲は刺された肩を抑える。肩からは絶えず、血がポタポタと落ちる。
「やっぱり貴方とやるのに新撰組局長じゃ荷が重いわ。これからは新撰組局長ではなく。龍の器の一人、近藤日咲として刀を振るうわ」
日咲は刀を右に倒し、左足を前に出して腰を低くする。
日咲の目が変わり、雰囲気がさっきまでとはまるで別人の様に変わる。
「その構えを見たのは何年振りだろうか。出来ればその構えは見たくは無かったぜ。くっくっくっくっ。面白い。ホントだったら俺も使う気が無かったがお前がその剣を使うなら俺も使ってやる。この場所に3人の龍の器が揃った記念として」
今井も構えを変える。右手は普通に持つのだが、左手は刀を鎌のように持つ。二人は目と目を合わせ沈黙をする。しかし剣が交わっていないにも関わらず、すでに凄まじい戦いが起きている様な緊張感が辺りを包み込む。これが龍の器同士の戦い。
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