第3話 異世界で稼ぐというのは

僕らはグルデール島からコノハ横丁のギルドに飛んだ。ギルドでは皆が歓迎してくれた。するとお菊さんが

「皆さんに臨時報酬が入っていますので明日以降にパーティーリーダに全員分が入ります」

僕らはその言葉を聞き、3人で思いっきりジャンプをした。

「今日は宴だ!飲みに行くぞ!」

「よっしゃー!」

「やったー!」

僕ら3人は竜真さんの行きつけのお店に向かうのであった。

「よし着いた。ここだ」そこは温泉泉だった。

「竜真さん、ここの常連だったんですね。僕、ここでお風呂掃除してるんですよ」

「そうなのか!ここは温泉も良いし。飯も旨い」

「お腹減っちゃったよ~」

「まずは風呂だ」

僕らは扉を開け、中に入った。するといずみさんが出迎えてくれた。

「あら皆さん、お疲れ様です」

「うーす」

「今日は大変だったみたいですね。丁度新撰組の皆さんも来てますよ。たぶんお風呂だと思います」

「なんだ、あいつらも来てるのか」

「いいじゃないですか。一緒に戦った仲なんですから」

「私もお風呂入ってスッキリしたーい」

僕らは風呂に入るのであった。

「はぁ~~。やっぱ戦の後の風呂は格別すっねー」

ガラガラガラ。露天風呂に一人で入っている真二の所にアツキがやって来た。

「あっ、真二さん。お疲れ様です」

「なんだアツキじゃないっすか。お疲れっす」

真二はアツキの体を見て、凄い事実を知ってしまった。

「アツキ、なんすかそのサイズ。」

「え?」

「並みのサイズじゃないっすよ!なんつう物隠し持ってたんすか」

アツキは常人よりサイズが大きいらしい。

「そんなに見ないで下さいよ」

「あははは。すいませんっす」

アツキも風呂に入って、空を見上げた。

「なんか良いですね。こうゆうの。やっぱ人間、体と共に心も綺麗にしないとですね」

「そうっすよね。こうして風呂に入りながら星空見てると、すげー体が楽になるっすよ」

そんな会話をしている所を竜真もやって来た。

「お疲れーす」

「あっ竜真さん」

「あっ旦那」

「お疲れー……」

アツキと真二は竜真を見て、叫んだ。

「ぎゃーーーー!」と。

「りゅ、竜真さん!何ですかその肩に巻いてあるの」

「あ?アツキお前ら何言ってんだ?」

「だ、だ、だ、旦那?その肩に巻いてるやつってもしかして」

竜真は不思議そうな顔をして

「お前らのさっきからなんだ?人が温泉で休もうって時に。化け物見たような顔しながって」

「いや、竜真さん。僕ら今、化け物見てるんですけど。ナニを肩に巻いてる化け物見てるんですけど」

そう、竜真はナニを肩に巻いていたのだ。その太さは顔と同じ、文字通り化け物だ。

「俺は元からこんなだろ?」

「な訳あるか!」

その頃女風呂では仲良く皆で露天風呂に入っていた。

「あ~気持ちいいわね~」

「極楽極楽」

「ちょっと、親父くさいわよ月菜」

「別に良いじゃないの。気持ち良いんだもーん。それより」

月菜は一星の胸を後ろから掴んだ。

「ほらほら一星。前より育ったんじゃい?あ~この育ち盛りの胸」

「月菜やめてください。さすがに直揉みはヤバイです」頬を赤くする一星。

「ほらほらほらほら」

一星と月菜がじゃれ合っている中、日咲が

「そんな事より風舞希。貴方そこでなにやってるの?」

風舞希は梯子を用意し男風呂の覗きをしようとしていたのだ。

「何って?覗きだけど」

「覗き?!やめなさいよそんな事」

「覗きするんですか?私もやります」

「一星まで何言ってるのよ?」

「そうそう、覗きなんかやめなさいって。男の裸なんて汚いし、あたしはそれより女の裸の方がいいわ。って話を聞きなさい」

風舞希と一星はすでにはしごを上っていた。

「おーー、皆良い体してるね~」

「中々のものですね」

興味津々に覗く二人に対して日咲が

「二人とも終わり!下りなさい」

その言葉で二人は残念そうに「はーい」と言って下りた。

「まったく、子供なんだから」

「そうゆう日咲だって子供じゃないんですかー?」日咲をチャカス月菜。

「男性経験なんか、ゼロでしょゼロ」

「何をー!それは貴方も同じでしょ月菜!」

「それはね、あたしが美しすぎて釣り合う男が居ないだけなんだから」

「それを言ったら私だって、私に見合う男が居ないだけだし」

取っ組み合いを始める二人だった。

その隙にまたはしごを上る風舞希と一星。

「今の内に今の内に」

「でもこうして見てても、皆温泉に浸かってるから肩から上しか見えないんですよねー」

「あれ?竜ちゃん居なくない?」

「あ、ホントに居ないですね。どこ行ったんでしょうか?」

二人は男湯の中をキョロキョロと探した。すると

「あっ、あそこに居た!」

「湯気に隠れてたんですね」

「?!」

この時二人は見てしまった。竜真の合成写真の様な、首に巻き付けたナニを。その瞬間二人は背中から地面に落ちた。

「ちょっと、貴方達何やってるの?大丈夫?」

その問いに風巻希が口から泡を吹きながら

「竜ちゃんが、あんな欲張りだなんて知らな、かっ…た…」

男湯に何があったの?なにが?

「日咲!これはあたし達も確認するしかないようね」

「え?!の、の、の、の、覗きをするって事?」

「どんだけ動揺してるの?二人がこうなった理由をあたし達が確認しなくてどうするの。ほら」

月菜に無理やり手を引っ張られはしごに乗せられる日咲。

「や、やめてーー」

日咲はこうゆうのが慣れてないらしく、顔が真っ赤だ。

「月菜、ホントに覗くの?」

「そうよ。今さら何言ってるのよ?ホラ、せーので覗くわよ」

「ちょ、心の準備が」

「せーーーのっ」

「まだ心の準備がーー!」

二人もまた見てしまった。竜真はのマフラーを。

「ちょ、ちょっと何あれ」

「あ~あ~あ~あ~」

二人も背中から綺麗に地面に落ちたのだった。男湯では。

「なんかさっきから、ドンって女湯騒がしくねーか?」

「それもそうっすね」

「まぁいいや、はぁ~気持ちいいな~風呂」

「そうですよね~、生き返る」

3人は風呂に入り、心身休めていた。

「まさか旦那が、俺らに手を貸してくれるなんて、昔を考えたらあり得ないっすよ」

「そうなんですか?竜真さんって昔はどんな感じだったんですか?」

「旦那は昔は目付きも悪くて怖かったっすよ。そういえば、旦那は日咲といつから知り合いなんすか?新撰組が出来る前から知り合いってぽいんすけど」

「あ?日咲とか、そんなもん覚えてねーよ」

そんな会話を珍しくしていた3人。

風呂と言うのは人間の心の汚れを落とし、普段見れない部分を見ることが出来るのだ。

「さて、体も暖まったしあれやるか」

「あれ?」

「なんすか?あれって」

「NO、ZO、KI、に決まってんだろ」

竜真はドリルを持ってきたようだ。

「今から、このドリルで柵に穴を開ける。お前らはドリルの音をバレないようにしろ」

「音を消すのか~、どうしよう」

「アツキ、いいもん持ってきたっす」

「こ、これは」

「SO、CDプレイヤーすっYo」

真二はCDプレイヤーを持ってきていたのだ。まるで最初から覗きをする目的で温泉に来ていた感じだ。

「CDプレイヤー?!」

「これで音楽を流し、ドリルの音を書き消すっす」

「なるほど、確かに音量MAXにすればドリルの音を音なんて、簡単に消えますね」

「よし。じゃー音楽を流し出したら穴を掘るぞ」

「じゃーいきますよ。アツキ旦那スイッチオン」

真二はプレイヤーの再生スイッチを押した。

「トゥルトゥルトゥールル。♪~♪~♪」その音は当然女湯まで聞こえていた。

「何何?男湯から音楽が聞こえるんだけど~」

女達は音楽に耳を貸した。その隙に竜真がドリルで柵に穴を開け出した。

「♪~♪~♪~」

「世界が終わるまでは~」

「お前達が歌うんかい!」

女達は男湯に聞こえる声でツッコミだ。歌はアツキと真二のデュエットだ。

「離れる事もな~い。そう願っていた~幾千の夜と~」

「戻らない夜だけが~」なんと竜真も歌い出したのだ。

「なぜ輝いては~。やつれ切った~心までも壊~す~はかなき想い~このTragedy Night~皆ありがとう!!」

クルクルクルクル、ボカン!竜真の頭に石鹸が当たった。どうやら女湯から飛んできたらしい。

「痛てー!てめーら。せっかく俺が歌ってやったのに」

「音痴!名曲汚すな」

石鹸や桶がたくさん男湯に放り込まれる。

「痛てー。痛てっすよー。旦那!なんでドリルで穴開けてないんですか?」

竜真は途中で歌い出したので穴を開けていないのだ。

「そんなもんしょうがねーだろ。あの歌聞いたら誰だって歌いたくなるだろ」

「そんな事知らないですよ。竜真さんこの状況どうにかしてくださいよ」

「てめー。何勝手に俺に罪押し付けてんだコラ!俺にとってこの歌はな思い入れがあんだよ!」

竜真達3人は女湯からの襲撃で全員倒れていった。

「バスケがしたい…です」

そう最後に言い残し竜真は倒れていった。

バクバクバクバク。風呂の後はご飯だ。僕たちはいずみさんの料理を大広間で食べさせてもらっていた。

「あんた達。よくもあたし達を覗こうとしてたわね」月菜が男達を睨み付ける。

「覗いてたのはテメーらだろうが」

「まぁまぁ喧嘩はダメですよ」いずみが仲裁に入る。

「引っ込んでろロリッ子が」

「そうよ、ペタンコは黙ってて」

竜真と月菜はいずみを怒らせてしまった。

「貴方達、お風呂壊した罰金はちゃんと払ってもらいますからね~」

「ギクッ。いや~いずみ。俺今、金無いんだけど~」

「なら臓器でも売ってこいやボケが」

「いずみさん、今回は私が出すわ」

「良いんですか?日咲さん」

「えぇー、これで貸し借りはなしよ」

それを聞いた竜真と月菜が「よっしゃー!生持ってこーい」

竜真は生ビールを滝のように飲みまくっている。それに負けじと月菜も飲んでいる。

「大人はホントにお酒が好きだね~。私も早く飲んでみたいな~」

「後、数年後には飲めるじゃん」

そんな会話をしているアツキと風舞希に竜真が

「お前らガキには酒はまだ早えー。ジュースでも飲んでろ」

竜真は完全に出来上がってしまっていた。この中で未成年はアツキ、風舞希、一星、その3人だけだ。

「ゴクゴクゴク。久々のお酒はおいしーですね」

なんといずみも飲んでいるのだ。

「いずみさん!なに酒飲んでるんですか?」

「アツキお前知らねーのか?いずみはな」

「竜真さん、その話は…」

いずみさん笑ってるけど、なんか笑えない。不気味な笑みだ。

「なんだよ、良いじゃねーかよ。いずみはそもそもこの世界の住人じゃねーんだよ」

「え?そうなんですか!」

そんな話僕は聞いたことがなかった。

「はい。竜真さんの言うとおり私は違う世界の住人です。私は当時ガーデンと言う世界に生きてました。いつもの朝。いつも通りの日常。その日もいつもと同じでした。ただ1つの出来事を除いて」

「1つの出来事?」僕はいずみさんに聞いた。

「その出来事とは、この世界の人が私達の世界でリングを奪われた事です。そのリングは売られ人から人へ渡り、最終的に私に回って来ました。私はアクセサリーとして着けていましたが、そんな私の前にある時手帳が落ちてたんです。その手帳を拾い中を見ると、コノハ横丁と書いてありました。それで私はそれを声に出して読んでしまったのです。それでこの有り様です」

「そ、そうだったんですか!」

いずみさんがそんな不運に見舞われるなんて。たまたま転移リングを手に入れて。たまたまリングの持ち主の手帳を手に入れたなんて、どんな運命の巡り合わせだよ。

「まさかこの世界の人じゃなかったなんて、でもリングの使い方を知ってるなら、元の世界に帰れるんじゃないですか?」

リングを持っている以上、帰ろうと思えば帰れるはずなのになんでこんな所で温泉を経営してるんだろう?

「実を言うと、帰りたくないんです。私は向こうの世界だと家族は居ないし。唯一居た兄も行方不明で、こっちの世界の方が皆さんが居てくれるから好きなんです」

それを聞いた皆は、ニヤリと笑う。

「なぁー、アツキ」

「なんですか?」

「もっとすげー事教えてやるよ」

もっと凄い事?どんな事なんだろう。

「実はな、いずみの世界の住人は寿命が俺らの世界の人間より長くてな、ざっと俺らの世界の10倍なんだぜ?」

「10倍!?つまり14歳のいずみさんは140歳!」

その言葉にいずみが「ち、違います!!確かに私は140年生きてますが、歳は14です!!ほら体だって14歳だし」

確かにそうなのだけども、140年も生きてるのか、もう座敷わらしレベルだ。

「まぁ~私の本職は医者なんですけどね」

「医者?!そんな話聞いてないですけど」

「あれ?言ってませんでしたっけ?私は冒険者達の治療を専門にしてて、それで皆さんと知り合ったんですよ。医療で体を治し。温泉で心を癒す。そんな仕事をしてるのが私です」

「そ、そんな話知りませんよ!」

この人は一体何者なんだ。いずみさんの事は結構知ってたと思ってたのに知らないことだらけだ。

「あの~いずみさんって一体何者なんですか?」その質問に竜真が

「いずみ?ただのロリッ子だけど」

バン!その発言と同時に竜真が撃たれる。

「私はただの温泉の女将ですよ!」と笑顔で僕に言った。

僕らはその後食事を楽しみ、家に帰る事にし温泉泉から出た。

「さて、帰るか」

「帰るかってどこに帰るんですか?」

「竜ちゃんは橋の下じゃない?」

「んな訳あるか、これでも大人だぞ。家の一つや二つ持ってるっつうの。お前らも同居していいから着いて来いって」

これでも社会人、家ぐらい持っている。そんな当たり前の事を当たり前に言った竜真さんに僕と風舞希は着いていった。

でも何故か、温泉泉の脇にある階段を上る。そして、何故か温泉泉の二階に当たる部屋の扉の前に来た。

「あの、竜真さん?ここ僕の家なんですけど」

「は?何言ってんだ?ここは俺の家だろ」そう、自信満々に言う竜真。

「さすが竜ちゃん!こんな大きな家に住んでるなんて、大人の中の大人だよ」

「な訳ねーだろ!いつからお前の家になったんだ、ここは僕が住んでる家だから」

「は?何言ってやがるんだ、証拠でもあるのか?」

証拠?なんでこの状況で僕が追い詰められた感じになってるんだ?ここは僕の家だぞ。なのになんで証拠なんか出さないと行けねーんだよ。

「ほら、表札に海藤って書いて…ない!!」表札には坂本と書いてあった。

「なんで?なんで?どうなってんだ?朝までは僕の名前だったのに。竜真さん!あんた何したんですか?」

「何って元から俺の家だからな~」

「アッキーって人の家を自分の家とか言っちゃうんだ」

「違う違うって風舞希。あっ、そうだ鍵見せれば納得が」

僕はポケットの中に手を入れ、鍵を取ろうとした。

あれ?無いな。こっちだっけ?あれ?なんでなんだろう?

僕は鍵を入れてそうなポケットに手を入れ探したが、見つからなかった。そんな僕に竜真さんが顔を上に上げなが、

「アツキよー、お前が探してるのってこれか?」竜真はそう言って鍵を出した。

「なんでお前が持ってんだー!いつ取ったんですか?」

「この鍵は元から俺のポッケにありました」

「アッキー最低。そこまでして自分の家にしたい?」なんで俺が悪者なんだ。

「さて、上がってくれ」

「いや、それ僕の台詞」

竜真さんはソファーに寝っ転がる。

「自分の家のように楽にしてくれ」

「いや、さっきから僕の台詞なんですけど」

なんやかんやで疲れていた僕らはそのまま、僕の家で、寝てしまった。

目が覚めた時にはすでに昼を過ぎていた。体が痛い。結局僕は床でそのまま寝てしまっていたのだ。

まったく気持ち良さそうに寝てるな~。いつまで寝てるんだろう?竜真さんと風舞希は一切起きそうにもない。

まぁ~昨日の今日だし、起こす必要ないか。それにしても風舞希は見た目だけは結構可愛いな~。

僕は染々思う。風舞希は見た目こそ可愛いがその性格は狂暴で、しかも好奇心旺盛。好奇心旺盛と聞けば聞えは良いかも知れないけど、彼女のそれは一味違う。後先考えずとりあえず突っ込む。それが彼女の性格だ。

でもそれでも、殺し屋という危険な世界で生きてこれたのは、剣の腕が充分過ぎるほど身に付いているからだ。あの竜真さんが手を焼いた相手だ。まったくこれから僕らはどうなるんだろーか?嫌な予感しかしない。

僕は二人を起こさず、夜ご飯の買い出しに出掛けた。

ん~やっぱり高いな~。でも今日は竜真さんから昨日の報酬貰えるし少し奮発しよーと。僕は今日の夜ご飯は焼き肉と決めた。買い物を終えた時にはすでに太陽が沈みかけていた。

「あれ?電気点いてないや、もしかしてまだ寝てるんじゃ」

案の定、二人は買い物に出掛ける前から一切起きてないみたいだ。街には夕方のチャイムが鳴り響く。

するとその音に竜真さんが動き出した。やっと起きたようだ。

「うーーん、後5分」

「いやチャイムを目覚まし代わりに使わないでくれる?ほら風舞希も起きて」

僕は風舞希の頬っぺたを指でつついた。

「ん~あと18時間~」

「もう明日じゃんそれ、早く起きて」

「カブ」

「痛ーてーーー」

アツキは風舞希に指を思いっきり噛まれた。

「なんかごめんね~。ご飯食べてる夢見てて」

「指取れるかと思ったよ」

「アツキ飯ねーか?腹減った」

「はいはい、今持ってきます」

アツキは急か急か焼肉の準備をする。

「今日のご飯は焼き肉です!」

「おぉ~~」

そのキラキラする牛肉や豚肉。より味を際立たせるタレ。そしてなにより、肉に相性ピッタリの白米。まるで二つは一緒に生まれてきたくらい相性が良い。僕らはただひたすらに食べまくった。

「たまにはこうゆうのも良いですね」

「旨めー旨すぎる。そっちのやつもくれ」

「いい仕事をした後のご飯はおいしーね」

「いや、お前はしてないけどな」

「まぁまぁ良いじゃないですか。今日はとことん食べまくりましょう」

「うっしゃー!」

久々に死ぬほど食べたな~。ホントおいしかった。でもこれは肉じゃなくても美味しいんだろうな。

僕はこの温泉泉に住まわせてもらってから、基本ご飯は一人で食べていたから皆で食べるご飯はやっぱりいつもより美味しく感じる。僕は染々そんな事を思ってしまった。

「そういえば竜真さん昨日言ってた報酬。もう振り込まれているんじゃないですか?」

「そうだったな。ほらよ」

そう言って竜真さんは僕と風舞希にカードを渡してきた。

「これって何?竜ちゃん」

「それはお前らのクレジットカードだ」

「クレジットカード?」

「冒険者として稼いだ金は全てそのカードに貯まる。それにそのカードは全ての場所で使えるから無くすなよ」

「そうなんですね、へぇーこんなカードがあるんですね」

風舞希はそのカードを見て、あることに気付く。

「ねね~竜真ちゃん、ここに書いてある数字って何?」

数字?カードを良く見ると5000と書いてある。

「その数字はカードに入っている金額を表す。稼げばその数字が増えるし。使えばもちろん減る。すげー分かりやすいだろ?」

「そうなんですけど…つまり5千円?あんだけやって5千円?安すぎませんか?」

こっちは死ぬ思いをしてまで、戦ったのに安すぎないか?それに竜真さんが書いた求人には結構な金額が稼げるって書いてあった気がするんだけど。

「いやー実は俺借金があってさ、それで借金返済のために勝手に天引きされるんだよな~。ほらこれ見て見ろ」

竜真さんは手帳の中身を見せてきた。

「え~と、今回で3人で150万、150万?!竜真さん150万って書いてありますけど!」

「待ってアッキー。その下見て」

「その下?」

下にも何か続きがある、それを風舞希が読み上げて行く。

「借金返済代金148万円。今回の報酬150万引く148万で2万。そして2万を私とアッキーに5000円ずつで1万が竜ちゃんの今回の報酬。借金総額10億5千万円だって……以上」

以上…か…「竜真さ~ん最後に言いたい事はありますか?」

「最後に何か言いたい事あるなら言っていいよ?最後ぐらい聞いてあげるけど何かある?竜ちゃん」

「ま、待てお前ら。気持ちは分かるがまず落ち着くのが先だろ?」

「お前が言える事か?10億?一体何したらそんな借金背負えるんだよ」

「ギャンブルで金が無くなって、仕方がないからお菊のカードを奪って遊びまくってたらバレてしまいまして、だからしょうがないだろ?落ち着けよ。人間感情に任せるとロクな目に合わないぞ」

竜真はアツキと風舞希を説得するが、一切竜真の言葉は二人の耳には入っていない。

「それは竜ちゃんだよね?超超超超ブーメランだよ」

「ほら竜真さん、歯食い縛って?」

アツキと風舞希は拳に息を吹き掛ける。

「ま、待てお前ら!借金を返す策が俺にはある。だから金を貸してくれ、必ず倍にして返す」

「もう、聞き飽きた」

二人は力いっぱいに竜真を殴りまくった。竜真さんが気絶した後、僕と風舞希は布団を敷き眠りについた。

丁度てっぺんを回った頃。風舞希は眠れずベランダで外の空気を吸って星を眺めていた。

昔の私だったら考えられないよね、誰かと一緒に住んで、同じ部屋で寝るなんて。昔の私が今の私を見たらどう思うんだろうね。笑うかな?非難されるかな?嫌いになるかな?でもひょっとしたら、少しは羨ましがるかな?

そんな事を考えながら涼んでいる風舞希は下の道を歩いている人を見て気付いた。

あれ?あの人って。

そこに居たのは新撰組局長、近藤日咲だった。風舞希はベランダから飛び降りて日咲の前に立つ。

「確か、新撰組局長のこうど~◯?」

「な訳ないでしょ!どんな間違い方なの?近藤日咲よ」

「あ~そうだった。それでこんな夜遅くにどうしたの?」

「それは」

風舞希は物凄い殺気を日咲から感じ取った。殺し屋で生きてきた風舞希は殺気や人の気配を敏感に感じとる事が出来るのだ。

「あれれ?もしかして私の正体気付いちゃった?」

「気付くも何も最初から知ってたわよ。ただ何故か竜は貴方の事仲間って思ってるみたいだから手は出さないわ」

「それじゃ、なんで私に会いに来たの?」

「貴方、確か竜の事、竜ちゃんって呼んでたわよね?それは間違いない?」

なんでそんな事聞くんだろう?

「うん、竜ちゃんは竜ちゃんだよ」

「竜ちゃん、ね……竜真さんと呼びなさい小娘が!」

刀を抜き、風舞希に斬りかかる日咲。

「いやそっちー!?」日咲は竜真に惚れていた。

剣と剣がぶつかり力で押し合う。キキキキキキと二人の剣が軋みあげる。

「竜ちゃんの仲間には手を出さないんじゃなかったの?」

「それとは別よ。竜ちゃんて…何よその仲良さそうな感じ!それに一緒に住んでるなんて…死刑」

日咲のとてつもない速さの連撃を風舞希はすべて紙一重で避ける。

「どうしたの?最強の殺し屋って言うのはそのレベルなの?避けるのが精一杯じゃない」

やっば!やばやばやば、全然余裕ない。スピードだけなら竜ちゃんより速いよこの人。まぁそうでもなきゃ新撰組の局長は勤まらないか。いやそうゆう感じじゃない。これはもっと深くにある局長とは別の雰囲気を感じる。なんだろうこの感じ、この感じは最近味わった気がする。あっ、竜ちゃんと同じ感じだ。竜ちゃんと殺りやった時もそうだった。まるで心の中が見えない。底無し沼に足を落としている気分だよ。

「竜ちゃんや貴女は何者なの?」

「まだ貴方は知らなくていいわ」

「そんな事言われたら」

風舞希は日咲の一瞬の隙を見て、思いっきり地面を蹴飛ばし、日咲の顔に顔を近付けて

「知りたくなるじゃん」と笑った。

その瞬間が風舞希のギアが上がるタイミングだった。

風舞希は距離を取り、そこからその長き剣で日咲の間合い外から斬り付ける。

風舞希とは良く言ったものね。

私の頬を掠める風の様に剣が飛んでくるわ。本当にそれは剣なのか?疑問に思うわ。気持ち良いくらいに風が私の回りに駆け巡る。見えない剣が飛んでくる感じ。月菜の神術に似てるけど、それと絶対的に違う部分がある。それは月菜の神術は光の刀が飛んでくる。つまり見える事。

それに比べて風舞希の剣は見えない。体をすり抜ける様な剣筋、風剣(ふうけん)。道理で最強の殺し屋と呼ばれるわけだわ。

「でも私には」

キン!風舞希の見えもしない剣を日咲は弾き流したのだ。それは風舞希自信も驚いた。

弾かれた剣が流れている内に一気に距離を詰め、風舞希の首に剣をスレスレまで近付け止めた。

「私の勝ち…みたいね」

その日咲の言葉に風舞希は「それは…どうかな?」と言った。

日咲は自分の脇腹に風舞希の剣が同じくスレスレで止まっていた事に気付いた。

「あっ」

「引き分けみたいだね」

「いいわ、認めてあげる」

日咲は刀を鞘に納めながら言った。

「認める?」

「こうして貴方に会いに来たのは竜の事を竜ちゃんって呼ぶからって言うのもあるけど、それ以上に確認したかったのは、貴方が竜の側に居て良いのか知りたかったからなの。竜は昔からめんどう事に巻き込まれる体質で周りに居る人はいくつ命があっても足りないわ」

「つまり心配くれてくれたの?」

「そ、そんなんじゃないわよ。ただ命を無駄にはしたくないから。でも貴方なら大丈夫そうね。竜を坂本竜真を宜しくね風舞希」

その言葉に風舞希は嬉しそうに笑った。なぜなら初めて日咲が名前で呼んでくれたからだ。

「うん!任せて」

「私はもう帰るわ。貴方も早く部屋に戻りなさい。」

「うん、おやすみ日咲ちゃん」

日咲は微笑んで「おやすみ風舞希」と言った。

風舞希はそのままジャンプでベランダに戻り、布団に入って寝た。まるで何か雲が晴れたようにぐっすりと深い眠りについた。

「竜も良い仲間に会えたわね。まぁそれは私もだけど」

日咲は新撰組の屋敷に向かった。歩いている道中、自分の体を見て

「私も腕が鈍ったわね」と笑って言った。

日咲の体は自分自身が思う以上に切り傷がたくさんあった。

翌朝、温泉泉の掃除を終えたアツキは家に帰ってきた。アツキはぐっすりダラダラ寝ている竜真と風舞希を見てアツキはある事を思った。

「僕らこんな事している場合じゃ無いんじゃないの?貯金なんてないんだし。それに臓器売っても追い付かないレベルの借金も背負わされて、家があるだけマシだけど一刻も早く稼ぎに行かないと」

僕は竜真さんと風舞希を無理やり起こし、朝御飯を食べた。

「まさか起こそうとしてから1時間もだだこねるとは…」

回想~「風舞希、もう朝だよ起きて」

「ん~~ん、スースースー」

まったく起きようとしない風舞希の布団を僕は無理やり取った。

「ぐはっ!ど、どんな格好で寝てんだ!」

風舞希は、Tシャツとパンツしか着ていなかった。

「年頃の女かそれでも!」

や、やばい、僕も年頃だ。こんな美少女のこんな所見たら色々とヤバい。

「襲いたくなった?」

「だ、誰が襲……」

そこで言葉を詰まらせたアツキを見て風舞希は大声で「竜~ちゃ~ん!助けて~」

「ちょっと何勘違いされるような事言ってんだ!」

その言葉にリビングのベットで寝ていた竜真が

「うるせーぞクソガキ!助けを呼ぶ前に自分でどうにかしなさい」

「アッキーに襲われる~」

その瞬間竜真が全力疾走で風舞希の部屋に来た。部屋に到着するなり風舞希の服装を見て

「テメーアツキ!俺より先に手出すとはどうゆう事だ」

「出してませんよ、手なんて出してませんから!」

「アツキ!!!手からではなく、いきなりナニ出したんかボケ」

「お前は一休か!」

「あ~もう二人とも朝からうるさい!」

「誰のせいだと思ってんだ!」

3人は朝から大声上げて騒いでいる。

当然ここは二階なのだから、声や暴れる音、全ての音が下に響き渡っていた。

「朝から上がうるさいですね、いずみさん」

温泉泉の社員がいずみと朝御飯を食べながら言った。

「ちょっと席外しますね」

「ごゆっくり」

いずみは席を外し、隣の部屋に行った。丁度その部屋が竜真達が暴れている部屋の下なのだ。

「はぁーーー」

いずみは息を深く吸って銃口を上に向け、バンバンバンバンと4発上に打ち込んだ。

「さて朝御飯に戻りますか」と元の部屋に戻った。

「あっぶねー」

銃弾は間一髪当たらなかった。だが風舞希の布団は穴が空き、綿が飛び散っていた。そんな事が朝からあって今は朝御飯を食べている所だ。

「竜ちゃーん、今日私の布団買ってね?」

「布団?あ~そういえばスーパーで無料で置いてあったな。あれなら好きな形に出来るし、スポンサーも背負ってるから良いと思うぞ」

「それ段ボールじゃん。アッキー買ってー」

「僕も金なくて買えないよ。食費だけで限界だから」

「ぷーーー」

風舞希はほっぺたを膨らませた。それを見た竜真が

「ったくしゃーねーな~。今日は仕事に行くぞ」

「おー!」

と僕と風舞希は拳をグーにして上に挙げた。と、さっきまでやる気だったのに

「ロクな仕事ねーな」

僕らはコノハ横丁のギルドで仕事が貼られている掲示板を見ていた。

「なんか、知らないモンスター討伐とか、落とし物を探すとか、安い報酬の仕事しかないですね」

「もっとどかーんって一発で稼げる仕事とかないの?」

「良い仕事は新撰組とかに取られるからな」

僕らは掲示板を見たガックシしていた。そんな中、風舞希が

「これなんか良いんじゃない?」と言った。

「どれどれ?え~と異世界モランで畑の防衛。一人60万円?!」

「おっ!マジじゃねーか。これしようぜ。お菊この仕事にするぜ」

「はい、モランですね」

お菊さんは何やらデータを打ち込んでいる。

「お菊、その仕事って楽か?」

「竜真さん、楽な仕事なんてありませんよ。特にこの仕事は中々大変ですよ?」

「まじか!」

「異世界モランは高級な綿が名物でこの季節になると、あちこちの畑で綿が盗まれるんです。だからそれを食い止める仕事です」

「食い止めるだけなら僕らでも出来そうですね、剣の腕だけはあるんで」

「そうだよ、やろうよ竜ちゃん」

竜真さんは深く考え「よしやるか」と言った。

「異世界モランへ」

僕らは異世界モランに飛んだ。

「ここがモラン」

ド田舎と言うか、広い草原が広がってる地域だ。

「風が気持ち良い~~」風舞希が髪を触りながら言う。

「えらく広い場所だな~、とりあえずあそこの村まで行くか」

竜真さん遠くに見える村を指差した。今僕達がいる場所は周りと比べて標高が高い位置だ。なので辺りがある程度見える。

「うん!」風舞希は元気良く返事をし、走って一人で向かって行った。

「ちょ、待ってよ」

「おいおい走るなんてごめんだぞ」

「二人とも早く早く!」

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