第二話 ユージの妹サクラ、掲示板でユージと連絡を取る
「あ、もしもし恵美? 日本に帰ってきたんだけど、家がなくて。え? うん、詳しい話は会ってからね。どこかでご飯食べて、今日泊めてくれない? うんわかった、みん○ん本店ね。まだあるんだーあそこ。いいよいいよ、私も帰ってきたんだから餃子食べたかったし。またあとでねー」
ロサンゼルスから日本まで飛び、はるばる自宅を見に来たユージの妹、サクラ。待っていたのは自宅どころかただの空き地だった。
泊まる場所もなくしたサクラは、高校時代からの友人である恵美に連絡を取り、宿泊場所と相談相手を確保する。
ユージの妹とは思えないほどアクティブで効率的な動きであった。
「なつかしー! 儲かってるのに本店は改装しないでそのままなんだねー。恵美も変わらないね」
「ちょっと! それどころじゃないでしょ! サクラの家とお兄さんどうなってるのよ!」
あははー、ちょっと長くなりそうだから注文してご飯食べちゃおうよーなどと逃げるサクラ。先送り体質はユージと同じなのか。
いや、この店は回転率が良い餃子屋。逃げたのではなく空気を読んだのであろう。たぶん。
「もう! 気になるからこっちは母親に娘預けて急いで来たのに! 今日は一晩中つきあってもらうからね!」
恵美の剣幕にちょっと引きつつ、あ、おばさーん、焼餃子ふたつと水餃子ひとつ、ライスは大盛りでふたつね、とちゃっかり注文を済ますサクラ。
急な呼び出しと宿泊に応じてくれた恵美に感謝しつつ、コイツ興味本位で来ただろ、とその心境を看破している。
「うっわ、ひさしぶりだとおいしいわー。餃子とご飯とかサイコーだよね。チャイナタウンの点心もおいしいんだけど、やっぱりこの店の餃子が一番だなあ」
パリッと焼き上がった皮と羽、ジューシーな餡のコラボを楽しみ、この場はおたがいの近況や共通の友達の話題で盛り上がる二人。
本番は家に行ってから。パソコンの前で。
口に出さずとも、10年来の友達同士は通じ合っているのであった。
「さて……ようやく私の部屋に来たわけだけども。まずは家がどうだったか聞かせなさいよ」
「うーん、なんて言ったらいいか……家ね、家。家はね、なかったわ。家も庭も門も生垣もまるっとぜんぶ。家もなし、お兄ちゃんもいない。っていうか家がないの、恵美は知ってたでしょ?」
「そりゃそーよ。家がないって確かめたから、アメリカにいるサクラにわざわざ電話したんじゃない。ただのイタズラならスルーよスルー。で、引っ越したわけじゃないんでしょ?」
「うん……。家もお兄ちゃんもホントに異世界なのかなあ」
「電話は通じるけど意味わかんない音しか聞こえないんでしょ? 動画と同じ状況よね」
「うん……。ホントどうしよう。私、ひとりになっちゃったのかなあ……」
「もう、アンタにはジョージくんがいるじゃない! でもまあそそうよね……連絡、取ってみる?」
「え? どうやって? 電話は通じないし、お兄ちゃんは私のメールアドレス知らないし、お兄ちゃんケータイ持ってないし。たぶんメールアドレスもないよ?」
「なに言ってんのよ。掲示板があるじゃない」
□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □
【ニート】10年ぶりに外出したら自宅ごと異世界に来たっぽいpart4【異世界に行く】
1:クールなニート
ここは「ユージ」さんがアップする異世界の情報や画像、動画を楽しむスレです。
ホントに異世界? どうやって加工してんの? は検証スレで。
次スレは>>980を踏んだ方が宣言して立てること。
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115:名無しのミート
だから俺にはグロ耐性ないとあれほど…
116:YESロリータNOタッチ
解体☆幼女 アリスちゃん
でもそんなアリスちゃんも愛してる!
117:名無しのニート
お、おう
118:名無しのトニー
>>116
相変わらずキモいな
119:ユージ
おまえなんかにウチのアリスはやらん!
120:物知りなニート
しかし解体もできるとは有能な幼女だな
121:名無しのニート
コタローもすごいし
家があればユージいらないんじゃね?
122:サクラです
お兄ちゃん!
ホントにお兄ちゃんなの?
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「ちょっとサクラ、これじゃホントにアンタかわかんないわよ。ネットは疑ってナンボなんだから! もっとアンタしか知らない情報入れなさい」
「そっか……よし!」
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133:名無しのミート
まさかの妹登場!
134:YESロリータNOタッチ
アリスちゃん?
アリスちゃんなのかッ!?
135:クールなニート
>>134
サクラって書いてあるだろ
本物かはわからないが
136:ユージ
たしかに妹の名前はサクラだ
だがアイツはたぶん掲示板とか見てないぞ
137:物知りなニート
んー、二人のことを知ってる誰か?
まああれだけ情報あれば身バレするよな
138:サクラです
お兄ちゃんですか?
18才の時、隠していたエロマンガがお母さんに見つかって
お父さんから「お前は現実の女に興味がないのか?」と心配されて
「俺は巨乳が好きなんだ! 現実にこんなおっぱいとくびれがないからしょうがないじゃないか!」
と逆ギレして家族をどん引きさせたお兄ちゃんですか?
139:名無しのニート
oh・・・・・・
140:名無しのトニー
や、やめてあげてッ!
141:名無しのミート
ウソかホントかわからないけどやめてあげてッ!
142:YESロリータNOタッチ
やはり幼女が好きな俺は勝ち組だな
143:名無しのニート
これほどえげつない本人確認は初めてみた
144:クールなニート
家族しか知らない情報ではあるだろう
少なくとも俺ならその場にいた人間以外には知られたくない
いや誰にも知られたくはないが
ユージよ、どうなんだ?
145:名無しのトニー
いやこれ本当でも
ユージさん反応できないんじゃないですかねえ
146:名無しのミート
たしかに
サクラさん、ユージの反応ないし
ほかに妹しか知らない情報ないの?
147:名無しのニート
>>146
コイツぜったいゲス顔してるぜ
148:サクラです
お兄ちゃんですか?
大学一年の時に「理想の巨乳を見つけた」
って言って付き合いはじめたけど
その子にはもともと彼氏がいて
ただの都合のいい男だったお兄ちゃんですか?
149:名無しのトニー
や、やめてあげてッ!
150:名無しのミート
ユージのライフはもうゼロよッ!
151:YESロリータNOタッチ
その点、幼女っていいよな
純粋で無垢だもんな
152:物知りなニート
なんでだろう
俺まで心が痛いです…
153:名無しのニート
やっぱり現実はクソだな
154:クールなニート
ユージよ、サクラさんは荒ぶっている
ウソでもホントでも反応しないと
このままずっと続きそうだぞ?
155:ユージ
・・・・・・・・
ぜんぶホントの話です
生きててごめんなさい
私は貝になりたいです
156:名無しのトニー
お、おう
157:名無しのミート
さすがにそっとしといてやろうぜ…
158:クールなニート
そうだな
妹さんかはともかく、知り合いではあるだろう
とりあえずみんなカキコミは避けて見守るスタンスで
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「アンタ……えげつないわね……。さすがにちょっとかわいそうだわ……」
「いいのよこれぐらい! 私に連絡とろうともしないでなんかほのぼのしてるんだもの! それにあのTシャツお気に入りだったんだから! アリスちゃんかわいいからいいんだけどさっ」
「ああ、あのココハドコ、ワタシハダレTシャツね……。アンタのセンスも怒りどころもわかんないわ……。なんでこれでプロのデザイナーなんだか……」
アリスが着ていた「Where am I? Who am I?」Tシャツは友達も知っているほどサクラのお気に入りだったようである。
ユージのダメージはともかく、本人確認が終わり連絡が取れるようになったのは朗報である。
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160:サクラです
お兄ちゃん、じゃあ次のアドレスにメールください
お父さんの名前_お母さんの名前_ユージお兄ちゃんの誕生日_私の誕生日@*****.ne.jp
161:ユージ
わかったサクラ
ただ今夜じゃなくて明日送るから
162:名無しのニート
傷心のユージは枕を濡らすのであった
163:名無しのトニー
あれ?
このアドレスなら最初からそれだけで
本人かどうかわかったんじゃね?
164:クールなニート
>>163
シッ!
ユージが気づくだろ!
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