第二章 エピローグ

「ユージ兄、やわらかくなったから、おにくはもう切り分けて食べられそうだよ」


「そっかそっかー、アリスは物知りで偉いなあ」


 アリスの指導の下、毛皮をはぎ、内臓を抜いて保存していたイノシシを枝肉にしていく。


 解体幼女アリスのスプラッターから一週間。

 森はすでに雪におおわれ、一面の銀世界が広がっている。

 作業場にした車庫にも冷気が入っており、吐く息は白い。


「これで冬の間もお肉が食べられるな! モツもうまかったけど、やっぱりまずはステーキかなあ」


「わーい! アリスね、おにく好きなの! 楽しみだなあ」


 アリスは肉食系だったようである。非常食や森で採ったドングリ、キノコのピクルスやベリーのジャムなどの保存食で食いつなごうとしていたことを考えると、イノシシを採れたことはユージにとって僥倖だった。


「街がいいところだったらアリスのためにも移住も考えるかなあ。それか、家の周りを開墾するか。どっちにしろ春になって、街を見つけてからか。その時に考えよっと」


 ユージ得意の先送りである。


「冬の間はなにしようかなー。そうだ、アリス、一緒に勉強しようか! アリスは文字が読める? 計算はわかるかな?」


「アリスね、おにくも好きだけどべんきょーも好きだよ! むずかしい文字は読めないけど、数字は読めるしけーさんもできるんだ! アリスが村にくるぎょーしょーにん・・・・・・・・さんのおてつだいしてたんだよ!」


「そっかそっかー、じゃあアリスが数字を教えてくれるかな? そしたら俺が計算を教えてあげるからね」


「わかった! アリスがユージ兄に教えてあげるね!」


 ユージがこの世界で初めて過ごす冬。

 それは、ひとりぼっちではなく、アリスという新しい家族とコタロー、二人と一匹で過ごす冬。


 ユージはぼっちニートから、ニートに進化したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る