第2話 自宅で✖✖✖

「これからどうする?」

「そうだな。貴様の部屋はどうだ。PC持ってるんだろ」

「あるけど、安物だよ」

「構わんさ」


 僕は自転車に跨り、黒剣は荷台に腰かける。

 そのまま自転車をこいで自宅へと戻った。二階にある自分の部屋へと黒剣を案内した。


「へぇ~。結構片付いてるじゃないか。ベッドの下を漁っても?」

「ダ、ダメだよ。お断りだ」

「分かりやすい。私はその反応が見たかったんだ。あははは」

「からかわないでくれよ」

「嫌だね」

「本当に漁る気なの?」

「その慌てっぷりがたまんないよ」


 完全に遊ばれている。

 でも、黒剣はベッドの下を漁ったりはしなかった。


「勿論、ネットにはつながっているよな」


 僕は黒剣の言葉に頷いた。


「PC使うぞ」


 黒剣はデスクトップの電源を入れた。


「パスワード」

「NARITAMASAHIKO。全部大文字」

「OK」


 ウインドウズが立ち上がった。

 黒剣は物凄い勢いでキーボードを叩き始めた。


 そしてぼそりと呟く。


「このPC……やはりそうか」

「どうしたのさ」

「害虫が湧いて出た」

「え?」


 びっくりした。セキュリティソフトは更新している筈なのに何故?


「貴様、父親は防衛省勤務なのだろう。セキュリティには気を遣え」

「ちゃんとセキュリティソフトは使ってる」


「プロがそんな程度で阻止できると思ってるのか? Wi-Fiは使うな。使っていない時はルーターの電源を落とせ、Lanケーブルも抜いておけ」

「そんな面倒な事出来ないよ」

「ならPCは使うな」

「そんな無茶な?」


 黒剣はキーボードを叩きながら僕を睨む。


「ああ、面倒だ。初期化するぞ」

「やめて。僕の宝物が!」

「実行」


 黒剣がエンターキーを押した。

 この瞬間、僕の貴重なコレクションが消去されていく。


 終わった。


 僕はベッドに腰かけ黒剣を見つめている。黒剣も画面を眺めているだけで、作業終了までまだ時間がかかりそうだ。


 PC上では何やら進捗状況が表示されている。まだ50%台で当分終わりそうにない。僕は黒剣に質問した。


「事件の事、詳しいの?」


 僕の質問に、黒剣はかぶりを振る。


「何も確証がない」


 それはそうだ。高校生の分際で、何か分かっている方がおかしい。でも、黒剣は何か自信があるような表情をしていた。


「手掛かりはあるんでしょ」

「ああ」


 やっぱりそうだ。

 黒剣は何か掴んでいる。


「どうするの?」

「囮でも使うかな?」

「囮?」

「ああ、そうだな。昌彦まさひこ。一つ頼まれてくれるか?」


 心臓がドクンと鳴った。

 黒剣はまさか、僕を囮に使うつもりなのか?


 僕は目を見開いて黒剣を見つめた。

 黒剣は笑いながら頷いていた。 

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