第79話 リモート
遠隔授業。
「キュッ」
「「「はい!よろしくお願いします」」」
今日は久しぶりの料理教室。
最近流行りのリモートというやつだ。
大体のリモート教室というのは、正面カメラで撮影しながら教えるかもしれないけど、私はそんなせこいことはしないわ。
カメラ6台によるマルチアングル!
スイッチングして、細かい部分まで漏れなく伝えることができる!
さらに上からの
生徒さん達への完璧なサポートが約束されたリモート教室よ!!
「キュキュゥ。キュキュキュー」
さぁ、今日は久しぶりだからサバと人参を使った簡単なものにしようかしら。
「「「はい!よろしくお願いします」」」
ふふ……みんないい表情ね。
初めのうちは私が料理を教えることに戸惑いを隠せないみたいだったけど、今ではカワウソが料理を教えるなんて当たり前に思っているわね。
あら?ご新規さんかしら。
見たことない顔がいるわね。
「きゅう♪」(ぺこり)
よし。挨拶もこれくらいにして早速始めましょう。みんな気合い入れていくわよ!!
「キュッ!!」
「「「はい!よろしくお願いします」」」
——ご新規さん視点——
「キュッ」
「「「はい!よろしくお願いします」」」
今日は初めての料理教室。
最近流行りのリモートというやつだ。
大体の料理教室というのは、人間が教えるかもしれないけど、私の目には人間の先生らしき存在は確認できない。
「キュキュゥ。キュキュキュー」
どうしよう。何を言ってるかわからない。
可愛いだけで伝えたいことは全くわからない。
「「「はい!よろしくお願いします」」」
えっ、みんな何その表情!?
私はカワウソが料理を教えることに戸惑いを隠せないんだけど!
なんでカワウソが料理を教えるなんて当たり前みたいな表情してるの!?
「きゅう♪」(ぺこり)
え、なに……?
とりあえず……挨拶で良いのかな……
「キュッ!!」
「「「はい!よろしくお願いします」」」
何言ってるかわからねぇぇええ!!!!
「はい!よろしくお願いします」って、みんなもそれしか言わないじゃん!
絶対カワウソの言ってることなんか理解してないでしょ!?
てか、理解してても何か嫌だよ!
——私は必死に探した。私と同じようにこの状況をおかしいと感じて慌てている仲間を。
——私は必死に参加者一覧の画面を見渡した。そして見つけた。私と同じようにこの場に似つかわしくない2つの画面を。
…………。
参加者一覧に混じっている"カラス"と"うさぎ"の姿を見つけてしまった。
——その瞬間、私は理解した。考えたらダメだ。感じるんだ……と。
「キュッキュゥキュイ」
あ、カワウソがサバを手にして何か喋ってる。
私の反応は決まっている。
「「「はい!よろしくお願いします」」」
遠隔授業。
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