第67話 春①

春は出会いの季節。




「ありがとうございますぅ♪あと〜……ここもわからないんですけどぉ」



 春になるとが活動し出すとはよく言ったもんですね。

 私の目の前にも、さっそく現れましたよ。



 先輩にまとわりつく、女子新入社員っていうが……。



「そうなんですね!——さんってスゴい頼り甲斐があって素敵ですね!!…………そんなことありますって!そういう謙虚なところもポイント高いですよ」



 毎年必ず何人かいる、自分の容姿に自信があって男を惑わせ、何かと楽をしようとする人間。

 女狐がっっっ!!


 まさか今回は先輩が標的になるなんて……。



 ぐぬぬぬ。

 先輩にまとわりついて良いのは、さくら先生による厳正な審査……"どきどきカワウソチェック"を潜り抜けた精鋭だけなんです!



 さっそく報告しないと!!



プルルル、プルルル。


『キュ!』


「さくら先生!大変です!先輩に変な虫がまとわりついてます!先輩に色目使って目障りなんです!」


『キュキュ!キュッ……キュゥ』


「違いますよ!自己紹介じゃないですよっ!私がいつ変な虫になったんですか!?」


『……キュ』


「最初からって……いや、私のことはどうでも良いです!とりあえず、いつもの"どきどきカワウソチェック"をお願いします!あの女が先輩に近寄るに相応しいか判断して下さい!私的には完全にアウトですけどね」


『キュッ??キュー?』


「何それって、さっき私が考えました!!さくら先生に認められた人じゃないと先輩に近寄れないと思ったんで!」


『キュ!!!………ブチッ』


 酷いです。

『それならあなたもアウト!!!』って言われて、電話切られました。




 あぁ!さっきより距離が近くなってる!!!



「良かったら、連絡先教えて下さいよぉ♪お願いしますぅ」



 このままだと先輩が女狐の毒牙にかかってしまう!!



「ありがとうございます!何かあったら相談しますね♪」




 くっ、私だって先輩に色々相談したいのに!


 先輩の好きな髪型とか、好きな服装とか、休日の過ごし方とか、どうやったら私に惚れてくれるのかとか——。



 こうなったら、彼女に出動してもらうしかないです。この状況は絶対どこかで見てるはず。


 ……いた!



 窓の外の木から、こちらを見守る黒い色の生物。

 

 さっそく私は彼女に連絡をした。




春は出会いの季節。

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