第66話 夢の一日
乙女の"夢"
「起きて……起きて!」
「うーん……あと半日……」
愛する旦那の寝顔を眺めているのは嫌いじゃない。
だけど今日はデートの約束をしていたので、早く起きてもらわないと!
「起きてくれないと、実力行使に出るわよ!!」
揺さぶっても全然起きてくれない悪い旦那には……
ギュッッ!!
ガブッッ!!
彼を背中から抱きしめ、耳を少し強めにガブリと噛む。
「っ!!?さくらさん!!?その起こし方はやめてくれって言っただろう」
「ふふふ。全然起きないあなたが悪いのよ。今日はデートの約束でしょ?一緒に映画観に行くんでしょ?……ほら、早く準備して!」
眠たい目を擦りながら洗面所に向かう彼の背中を見送ったところで、簡単な昼食を用意する。
時間もないので、昨日の夕飯の残りのサバとレタスをパンに挟んだ、簡単サバサンドだ。
「さくらさんのサバ料理は何回食べても飽きないな!美味しい!」
「もう……そんなことは良いから早く食べてよ。ありがと」
昼食も食べ終わり、2人してデート服選び。
彼はさすが男と言うべきか、ササっと決めていつでも出かけられるみたいだ。
(遅くまで寝てたのになんかズルイ……)
「ねぇ、どっちのワンピースが可愛い?」
「さくらさんなら、何着ても可愛いよ」
嬉しいけど、そういうことじゃないのよ。
……
…………
「映画、なかなか面白かったわね。カワウソと人間のラブコメなんて珍しい内容よね」
「何となく主役のカワウソが、さくらさんに似てたね」
映画も観終わって、休憩がてらにカフェで彼とおしゃべりの最中。
最近ゆっくりデート出来なかったから、今日はとても楽しい。
「私のどこがカワウソっぽいのよ。こんな美人の奥さん捕まえて何言ってるの」
「そうだね。でも昔のさくらさんにソックリだよ」
「やめてよ。昔はカワウソだったんだから、仕方ないじゃない。今は美人の人間なんだから良いのよ!」
女の昔の姿を持ち出すなんて、いつまで経っても男って女心がわからないんだから。
……
…………
あの後、洋服を一緒に買いに行ったりとデートを満喫し、気合いを入れたサバ料理でディナーもして、今日は大満足の1日ね。
気持ち良く眠れそう。
「今日は楽しかったな。さくらさんと久しぶりに出かけられたよ」
「仕事が忙しいんだから仕方ないわよ。マイホーム買うために頑張ってるんでしょ。……それよりもう少しそっちにいっていい?ベッドが狭いのよ」
未だに彼が独身の時から使っているシングルベッドだから、2人で寝るには少し狭い。
「さくらさんが、このシングルベッドが良いって言って新しいの買わないんじゃないか」
「べつに良いでしょ!!くっついて寝たいのよ!そんなこと言うと、また朝噛み付くわよ!」
(カワウソの時の名残か、彼に噛みつくの楽しいのよね)
「やめてくれ。あれは本当にびっくりするんだよ」
「ふふふ」
ギュッ……
「「おやすみ」」
ーーーーーーーーーー
ピピピピッ。ピピピピッ。
「!!!??さくらさん!さくらさん、起きてくれ。寝坊だ!このままだと会社に遅刻する!」
「キュー…」
寝坊なんて、さくらさんが家に来てから初めてだ。
いつも、さくらさんが俺より早く起きてご飯とか準備してくれてたから、俺も寝過ごすことなんてなかったんだが。
とりあえず、さくらさんに離れてもらわないと。
ギュッッ!!
ガブッッ!!
「痛っ!?さくらさん!何だ!?痛っ!いきなり耳を噛まないでくれ!うっ!尻尾を首に巻きつけるな!……何だ?何か夢を見てるのか!?俺は食べ物じゃない!!早く離してくれ!!」
「キュゥゥゥ……ムニャムニャ」
(あなた、早く起きて!起きないと……こうよ)
「痛っ!!!」
乙女の"夢"
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