第63話 バレンタイン①

すぅぃーとばれんたいん。



2月13日 深夜。


 乙女たちは悩んでいた。




「どんなチョコにしよう…。やっぱりハート?LOVEとか書いちゃおうかな。流石に、直接的すぎるか…。うーん。そもそも先輩は私の気持ち、絶対気づいてるよね。気づいてて何も言ってこないってことは、、、!!?私、遠回しに振られてる!?ぐぬぬ。諦めないんだから!!よし!バレンタインだし、攻めるしかない!ハートにしようっと♪」


 キッチンに積み上げられた、大量の板チョコ。

 その脇に添えられた、様々な調味料。


「〜♪〜〜♪」


 恋する乙女の夜は更けていく。




「ただのチョコじゃつまらないわね。いや、あえて直球勝負も捨てがたいわ。うーん。たまには彼に直球で攻めてみようかしら。そのほうが愛も伝わるでしょう!!ハートを狙い撃ちね♪」


 キッチンに積み上げられた、大量の板チョコ。

その脇に添えられた、奇妙な本。

 かすれていて上手く読めないが"解体新ーーー"と書いてある。


「〜♪〜〜♪」


 ガサガサ。ガチャ。


 いけない!彼が起きちゃったみたい!


「さくらさん?夜中に何して…っ!!」


 ヒュンヒュンヒュンヒュン!

 バッ!バッ!バッ!


「あれ?さくらさんがいっぱい?どんな速度で動いてんの…。まぁ、あんまり夜更かしするなよ」



 チョコを隠すように超高速で動いたおかげでバレなかったみたい。


「ふー。危なかったわ。まだ見られるわけにはいかないのよ。もうしばらく寝ててね、あなた」



 カワウソ乙女の夜は更けていく。





「うーん。なんか羽のポジションが気に食わないですわね。あっ、主様にチョコ用意してないですわ!まぁ作れないしコンビニで買って窓においとけば良いですわよね。寝ますわ♪」



 覗き見乙女の夜は更けていく。





ーーーーーーーーー


2月14日。



「お邪魔しまーす」


 後輩と一緒に帰宅。



というのも、朝、会社であったら開口一番、

「今日先輩の家に行きます!これは決定です!」

と、寝てないのか、やけに血走った目で言われ、思わず頷いてしまった。





「…キュイ…」

(なんとなく予想してたわよ)




ーーーーーーーーー



 とりあえず、軽くご飯を食べて、3人でまったりとしていた。

 後輩とさくらさんが妙にそわそわしているが、俺はきっとこのあとチョコを渡されるのだろう。

 流石に今日が何の日か考えたら、馬鹿でも気づくだろう。




……

…………



「あのっ、、先輩!今日が何の日かわかりますよね!?」


……きた。

俺も男だ。チョコを貰うのは嬉しい。

だけど、、だけど何故か胸騒ぎがするんだ。



すぅぃーとばれんたいん。

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