第60話 女子会

女子会とは戦場いくさばなり。





「あなたに神を見せてあげる。ひれ伏しなさい!!ロイヤルストレートフラッシュッ!!」



「あぁぁぁ。負けました…」



「何回やっても、さくら様に勝つのは無理ですわよ。さくら様は、この混沌とした人間社会を、カワウソの身でありながら単身生き抜いている猛者なんですから。貴女ごときじゃ話にならないですわ」




 さくら、後輩、シルヴィアの3匹は女子会の真っ最中であった。



 というのも、今までさくらさんとカラスは直接話したことがない。

 しかしカラスと後輩が結託しているのも気付いていたので、愛する男に迷惑をかけないためにも、3匹で1度平和的に話し合いをしようということになったのだ。



「さくらです。趣味・特技は『彼に関すること全般』です」


「シルヴィアです。趣味・特技は『主様を覗くこと全般』です」




「「………変態」」




 獣たちの自己紹介も平和に終わったところで、あの女が動いた。



「せっかく集まったんだし、話すだけじゃつまらないので、みんなでゲームか何かをして、勝った人が次に先輩と2人きりでデートできるってことにしませんか?」



「私は主様をバレるギリギリの距離で見ているのが至高の喜びなので、デートは遠慮しますわ」



「彼とデートするのに、なんでわざわざ勝負しないといけないのよ?一緒に住んでるんだから、おねだりすればデートくらいできるわよ。彼、優しいもの」



 後輩の提案にあまり乗り気ではない獣たち。

 しかし後輩にはこんなことは想定内であった。



「シルヴィアさんはわかりました。変態ですもんね。それより、さくら先生はなんか言い訳してますけど、本当は負けるのが怖くて逃げるんですよね?笑。百獣の王(可愛さ)であるカワウソ様が小娘の勝負も受けられないと?」



 そう。後輩は最初から一騎打ちを狙っていた。

 元旦のおせち対決の時に見下されたのを根にもっていたのだ。



「まあ勝てない勝負を避けるのは動物の本能。仕方のないことですよね!すみません。今の話は忘れてください!さっ、楽しくお話ししましょう」



「……待ちなさい。そこまで言うなら勝負してあげる。小娘から逃げる百獣の王など存在しない。格の違いを教えてあげるわ」



(かかった!!)



 カラスは見ていた。後輩のゲス顔を。


 後日、カラスは語った。


『あの時の顔はまさに策士の顔でしたわ。獲物がかかったのを喜ぶゲス顔。「計画通り」って聞こえた気がして、寒気がしましたわ。だけど、それよりも私が恐怖を覚えたのは、彼女が実は何の策も無く、勝てるという思い込みだけで勝負をしかけていたことですわ。雑魚のゲス顔ほど怖いものはないですわ』




 こうして好きな男とのデートを復讐のだしに使った闇のゲームが始まった……。





ーーーーリバーシ。


「四隅がガラ空きよ!!」


「きゃぁぁあああ」




ーーーーババ抜き。


「ふっ。死神はあなたに鎌を振り下ろしたようね」


「ひぇぇぇえええ」




ーーーーポーカー。


「あなたに神を見せてあげる。ひれ伏しなさい!!ロイヤルストレートフラッシュッ!!」


「あぁぁぁ。負けました…」




ーーーーサッカー:PK。


「バカね。ボールを私のサイズに合わせたら、あなたが蹴れるわけないじゃない」


「おっしゃる通りです」



ーーーーバスケ:フリースロー。


「ちょっとズルイわよ!!あなたから見たゴールは大した高さじゃないけど、私からしたら遠投レベルじゃない。ボールも私の小さいし」


「あ、バレました?」




ーーーー将棋。


「我が振り飛車に貫けぬものなし」


「くっ、小娘がぁぁああ。その悟ったような顔やめなさいよ。まだ一勝だからね!!!」




 その後も様々な勝負をした結果ーーーー。




「まったく相手にならないわね」


 12勝1敗でさくらさんの圧勝だった。



「我が振り飛車に…「いや、それもういいから!それしか勝ってないからってゴリ押ししないで!」」




(私が覗き見する限り、2人きりのデートってなかなか難しいって気づいてないんですわね)





女子会とは戦場いくさばなり。

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