第49話 ご都合主義

物は言いよう。




 それは運命の出会いでした。


 私は空腹に倒れ、道路の真ん中、もうここで死を待つしかないと諦めていたとき、あるじ様が施してくださったパンの味、今でも忘れません。

 見事なサバサンドでした。


 この御恩は返さねばなりません。

 決めました。

 陰ながら主様をお守りしましょう。






ーーーーーーーーーーー


 じーっ


 うふ。今日も窓越しに見える横顔が凛々しいです。


 ん?寝癖が酷いですね。寝坊でもしたのでしょうか?



 あぁっ!!

 あのカワウソめ、主様の髪にやすやすと触れやがって!!

 イチャイチャと朝からけしからん!




 あっ!!ヤバイです!!!


「カァー。カァー。」





 ふぅ〜。危なかった。

 彼女…私の視線に気づくなんて、なかなか侮れないですわね。



 ここ数日、主様の様子を覗き……見守っていましたが、彼女はいったい何者なんでしょう。

 まさか主様の奥方様でしょうか?


 私にしろ、あのカワウソにしろ、主様はなんて獣たらしな人物なのかしら。




 とにかく見守りの続き続きっと。



 なるほど。これからお仕事に行くみたいですね。

 ならば私も次の覗き…見守りスポットに向かわなければ!



ーーーーーーーーー





 うーん、主様のお昼は今日も魚肉ソーセージが主体ですか。

 少し栄養バランスが心配ですわね。


 今度こっそりとレシピ本でも玄関の前に置いておきましょうか。




 きゃっ!!


「カァー///カァー///」



 あ、主様と目があってしまった…。







 ぐふふ。

 これだから覗き…見守りはたまらんです。



 主様にはバレないように、たまに起きる不意の逢瀬おうせを楽しむ感覚。

 なんともいえない快感ですわ!!





「先輩、どうしたんですか?外に何かありました?」


「いや、外に変態がいた気が…」


「なにを変なこと言ってるんですか。外にはカラスしかいませんよ!」




 そうですとも、そうですとも。

 私がしっかりとねっとりと見守っているんですから、変態なんかいるわけないですわ!



 しかしあの小娘、今日も主様と親しげに話されて…。

 しかも、ずっと主様のことを見つめていますわ。



 はっ!?

 まさか、私と同じで主様を覗…見守り隊では!?


 むむむ。キャラ被りは嫌ですのに。




 あっ!昼休みが終わってしまいます!



 主様の仕事ぶりを覗ける場所はどこでしょうか…。



 バサッ、バサッ!


「カァー。カァー。カァー。」




物は言いよう。

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