第47話 遊園地③


迫りくる恐怖。




 恐怖・不安・解放という三種の神器を装備したアトラクションはコイツをおいて他にない。


 そう、お化け屋敷だ。


 不安し…恐怖し…、最後にやってくる解放感は、もはや希望に満ちた未来が約束されたかのような安心感すら覚える。


 緊張と緩和の魔術師。

 それがお化け屋敷である。



「1名様ですか?」


「カワウソと一緒です」


「2名様ですね。こちらでお待ち下さい」


 当然のように笑顔で案内された。


 何!?さくらさんをスルーだと…?

 あの笑顔が逆に怖い。

 まさかもう恐怖体験は始まってるというのか。



 ここのお化け屋敷は廃病院を舞台にしていて、1組ずつ探索するというものである。

 そのため1日の定員が決まっている。


 だから今この廃病院には、俺とさくらさん、そしてスタッフしかいないはずだ。


「ギャー」


バタバタバタ…


「うわぁぁぁああ」


バタンッ!!ガタガタ、ガッシャーン!!



 さっきから聞こえてくる悲鳴はなんだ?

 そして、なぜまだ誰にも会わない?

 ここのお化け屋敷は人が演じる幽霊やゾンビがリアルで怖いと評判なのに…。



「いやぁぁあー」


 ダダダダダダッ


 向かいからゾンビが走ってくる。

 なぜかゾンビが怯えながら、こちらに逃げてくるのだ。


 何かがおかしいと思い、そのゾンビを呼び止め聞いてみた。


「待ってください!!何がおきてるんですか?」


「はぁ…はぁ。ゆ、幽霊が。女の幽霊がでたの!スタッフじゃないのよ!!あんなの知らない!」



 どうやら本物の幽霊が出たらしい。

 いや、これも演出か?とにかく注意して進もう。


「さくらさん、何か感じる?」


 動物はそういう感覚が強いと聞いたことがある。


「キュ!」

(ここ…いるわね)


 さくらさんが警戒している。

 どうやら本当にいるらしい。





ーーーー手術室。


 逃げまどうスタッフ以外は特に見かけることなく、どんどん先に進んで行った。



 結構歩いたな。

 手術室か…。



 ん?

 手術台の下に誰かいる?



「うぅ、うっ、うっ」


 女の泣く声が聞こえる。





 こいつが幽霊か?


「どうしたんですか?」

 とりあえず声をかけてみよう。


「で、出たの!幽霊が!怖いから隠れてるのよ!」


 

 なんだスタッフか。



「誰もいなかったはずなのに、いきなり後ろから耳元で『先輩ですか?』って!!それと『カワウソ見ませんでしたか』って!」



 あれ?なんかおかしいぞ?



「あんな憎しみのこもった声、聞いたことない!絶対にカワウソに恨みを持って死んだ幽霊よ!」



「キュー…」

(やっぱりここ…いるわね)




 カラン、カラーン。


 なんだ?後ろで何かが落ちた音が…



 ヒタッ、ヒタッ。ズッ…ズッ。


 足音だ。



「嫌だ嫌だ嫌だ来ないで来ないで」

 

 スタッフはもうパニックになっている。



 ドッドッドッドッ

 心拍数が跳ね上がる。



 ゴクリ…。


「さくらさん…」


「キュウ…」




 バッ!!!


 同時に後ろを振り向くとーーーーー









 しーん…



 ……何もいないじゃないか。気のせいか?





「さくらさん、さっさと出口に行くぞ」

「……」


 そう言って前を向いた瞬間、、、








「みぃぃつけたぁぁ」







 そこには嬉しそうに笑う幽霊後輩の姿が。






迫りくる恐怖。


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