第45話 遊園地①
残念な人々。
遊園地。
そこは子供から大人まで誰でも楽しめる夢のような場所。
そんな所で働く女性が1人。
絶賛彼氏募集中の独り身。趣味は野球カード集め。
日々、遊園地に訪れるリア充やカップルを内心で罵ることを生きがいにしている、残念な人物である。
今日も彼女の前に、たくさんのリア充たちがチケットをもってやってくる。
それを笑顔で呪いながら夢の世界へと送り出す。
単調な仕事を淡々とこなしていると、1人の男性が目の前にやってきた。
(あれ?1人で遊園地?お仲間かしら)
遊園地に1人で来るという男性を見て、心の中で働く同族意識に内心喜んでいた。
「チケットを見せて下さい」
「はい」
男性が出してきたチケットは2枚。
(ちっ。思わせぶりやがって。コイツも爆発案件かよ)
「お連れ様はどこでしょうか?2人揃わないと入場できませんけど」
(1番後ろから並び直せ)
勝手に期待して裏切られたせいか、少し刺々しい言い方になっている。
「ここにいます」
「キュッ」
男性のカバンから顔出すカワウソ。
「はい?」
(ペットと一緒に遊園地に来てカップルを装うとか、私より末期じゃん。ヤバイよ。私ってまだ幸せな方だったんだ)
勝手に期待して裏切られ、さらにそれを裏切られ、ささやかな幸せを噛みしめる女性。
やはり残念な人物である。
「あのー、ペットを連れての入場は禁止されているので……」
色々と拗らせている男性を断るのは可哀想だが、規則なので仕方ないと思い伝える。
「やっぱりそうですか。さくらさん残念だけど…」
男性が残念そうにカワウソに声を掛けていて、色々と痛々しくて見ていられない。
すると「キュー」っと言って、カワウソが1枚のカードを取り出した。
そ、それは!!!
世界に3枚しかない幻の野球カード。
通称「神のカード」と言われ、球界のレジェンドの若き日の姿のカードだ。
(まさか、それと引き換えにここを通せと?しかし規則を破ったのがバレたらクビに…)
スッ
カワウソがカードを掴んでる指をズラした。
すると後ろからもう1枚カードが出てきた。
!!!!!!!?
そ、そんな!!!
2枚目の神のカードだと!?
(このカワウソ、いや貴方様はいったい何者なのですか)
「……。2名様ですね!どうぞ楽しんで下さい!」
「いいのか?」
男性が申し訳なさそうに聞いてくる。
「ミスすることもある。人間だもの。カワウソが人間に見えちゃう時だってあるわ。もっとも、この子は神様みたいだけどね」
そう言った女性は、とても買収された人とは思えないほど清々しい顔をしていた。
その頃、別の入場口ではーーーー
「すみません!!ここにハイスペックなカワウソと男の人の2人(?)組が来ませんでしたか!!!!?」
とても可愛い女の人が意味不明なことを言っていて、とても残念な目で見られていた。
残念な人々。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます